11月8日のアメリカの中間選挙まであと3週間です。候補者の応援を本格化させているバイデン大統領が成果として強調しているのが「インフレ抑制法」です。「インフレ抑制法」は文字通り、物価の上昇を抑えることを狙ったものですが、もう一つの側面として「脱炭素」を加速させ、化石燃料への依存を引き下げるという考えが挙げられます。この法律に対しては歓迎の声が聞かれる一方で成立の過程で大きな問題があったとの批判にさらされています。実態はどうなのでしょうか、取材しました。
「インフレ抑制法」に波紋
アメリカの東部から南部に位置するウェストバージニア州。長年採掘される石炭に支えられてきたこの地域の経済を環境規制の強化などを受け縮小が続いています。
こうした中、今ある変化が…
ワシントン支局
中村寛人記者
私はいまウェストバージニア州の大学の構内に来ていますが、今年設置されたというソーラーパネルが一面に広がっています。
脱炭素に向けた動きが活発化しています。
ソーラーパネルをこれから自宅に設置するというロバートさん。あるきっかけがあったといいます。
ロバートさん
「インフレ抑制法」で30%の税制優遇措置が延長され恩恵を受けている。
お金が戻ってくるのはうれしいこと。
インフレ抑制法とは気候変動対策に3,690億ドル(53兆円)以上を投じるバイデン大統領肝いりの法律です。
自宅にソーラーパネルを設置した場合、30%の税額控除が受けられます。
支持率の低迷が続く中、この法律を政権の成果として中間選挙で巻き返しを図りたいバイデン大統領。
ロバートさんも期待感を示します。
ロバートさん
石油産業へのプライドもあるが、やはりお金の方が大事だ。
「太陽光発電を導入するとお金がたまる」といわれたら、皆そうすると思う。
しかし、その一方で反発の動きも。
ワシントンに集まっていたのはインフレ抑制法に反対するウェストバージニア州の地元住民です。
デモの参加者が掲げているのは「汚い取引をするな」と書かれたプラカード。男性のものには「マンチン氏に借りはない」と書かれています。
マンチン氏はウェストバージニア州選出の民主党上院議員。石炭や天然ガス産業の保護を主張。与党の議員ながら脱炭素の政策には反対の立場です。
与野党が議席を50ずつで分け合い一人の造反も許されない議会上院。民主党はマンチン氏が求めていた「パイプライン計画」の再開を認めることでマンチン氏からインフレ抑制法の支持を取り付けました。
しかしあとになってこの計画は環境への問題が指摘されるずさんなものであることが発覚。こうした問題についてマンチン氏本人は…
民主党
マンチン上院議員
アメリカにはエネルギーが必要だ。この計画では多くのエネルギーを生産できる。
抗議デモに参加した民主党の支持者、ドナルド・ジョーンズさん。家族で所有するという土地を案内してもらうと計画で使うパイプがすでに置かれています。
民主党支持者
ドナルド・ジョーンズさん
ここは私たちの家族の農場。10世代にわたって受け継いできた。
ここに小屋を建てようとしていたが、今はパイプライン計画の問題がある。
リラックスしながら景色を楽しむことはもうできなくなる。
計画が再開すれば小屋を建てるどころか、この場所に足を踏み入れることができなくなると不満を漏らすジョーンズさん。
祖父の代から家族で民主党を支持してきたといいいますが、中間選挙で民主党の候補に投票するかどうか最後まで見極めるつもりです。
民主党支持者
ドナルド・ジョーンズさん
どの候補者がわれわれを守ってくれるかを見て投票するつもりだ。
パイプライン計画を押し通す候補者には投票できない。