アメリカで11月に行われる中間選挙まで2ヵ月となりました。バイデン大統領の政権運営に有権者は果たしてどんな判断を下すのでしょうか。情勢に変化が出ているようです。
アメリカ中間選挙まで2ヵ月!
巻き返す民主党 課題は?
ワシントン支局
中村寛人記者

アメリカで広がる歴史的な物価高騰の反発などからバイデン大統領率いる民主党が惨敗するとの見方が広がっていた中間選挙ですが、ここに来て風向きが変わりつつあります。
まずは最新の支持率をご覧ください。
バイデン大統領が率いる民主党と野党の共和党。およそ3ヵ月前には野党の共和党が3.5ポイントほどリードしていましたが、この1ヵ月ほどで民主党が大きく巻き返しています。
バイデン大統領は8月に入り、気候変動対策や薬価の引き下げなどを盛り込んだ日本円でおよそ60兆円規模のインフレ抑制法を成立させたほか、4,000万人以上の学生ローンの返済を免除する計画を発表しました。
選挙目当てとの批判を浴びつつも具体的な政策を次々に打ち出しているわけです。
さらに有権者の不満の元凶となっていた歴史的なガソリンの高騰についても6月をピークに値下がりが続き、これがバイデン政権にとって追い風になっています。
議会では下院は野党・共和党が優勢ですが上院については民主党が接戦に持ち込むのではないかとの見方も出ています。
佐々木明子キャスター
バイデン大統領にとってさらに支持を広げるための課題は?

ワシントン支局
中村寛人記者

選挙の最大の争点である物価高対策への支持や期待感を有権者にどこまで広げられるかがポイントとなります。
バイデン大統領が成果として訴えたいインフレ抑制法がすぐに効果が出るかは不透明で、世論調査でも経済政策については「民主党よりも共和党に期待をする」との声が大きいのが現状です。
バイデン大統領は選挙戦で矢継ぎ早に政策を実現した実績をアピールしていく考えですが、支持を広げていきたい中間層や若い世代の不満を解消できなければ苦戦は避けられません。
中間選挙まであと2ヵ月しかありませんが、こうした中、アメリカの各自治体では住民に配布する投票用紙や封筒など選挙関連の書類の準備に追われています。ところがいま選挙で使う紙が足りないという問題が置きています。
「紙不足」が深刻化
アメリカ東部ペンシルベニア州のライカミング郡。この地域の選挙管理責任者、フォレスト・リーマンさん。朝からある電話に追われていました。
ライカミング郡 選挙管理責任者
フォレスト・リーマンさん

投票用紙を印刷する紙の見積もりをお願いしたいのですが。
注文は来年1月までは無理ですか…
電話の相手は投票用紙などの調達を任せている印刷業者。
実はいまアメリカの多くの自治体が投票用紙や封筒などに使う紙の不測に悩まされているのです。
11月の中間選挙に使う書類については有権者全員の分をなんとか揃えたといいますが…
ライカミング郡 選挙管理責任者
フォレスト・リーマンさん

仕入れ先からは通常より早く注文を確定する必要があると言われた。
11月の選挙はまだ行われていないが、すでに来年の分の紙を探している。
異変が起きているのは自治体だけではありません。
西部アリゾナ州にある印刷会社「ランベックエレクションサービシズ」では…
ワシントン支局
中村寛人記者

こちらの工場は中間選挙に向けた書類の印刷が急ピッチに進められていて、多くの職員が作業にあたっています。
投票用紙や選挙資料の印刷で20%以上の国内シェアを握るこちらの会社。倉庫には投票用紙などが入った段ボールが山積みに。印刷を待つロール紙が大量に運び込まれていました。
紙の不足は起きていないようにも見えますが、会社のトップは自治体が紙不足に悩む背景として製紙業界のある変化を指摘します。
ランベックエレクションサービシズ
ジェフ・エリントンCEO

各企業はどんな需要があるか、どうすれば利益が上がるか考えている。
製紙工場は新型コロナを機に機械の多くを段ボール製造用に転換した。
新型コロナをきっかけにネット通販の需要が拡大。宅配用の段ボールの生産を増やそうと設備を切り替えたというのです。このため選挙に必要な書類の印刷を請け負う会社が減り、自治体が調達しづらくなっているといいます。
ランベックエレクションサービシズ
ジェフ・エリントンCEO

紙の値段はここ2~3年で50%ほど値上がりした。
人件費、トラック・電車などで紙を輸送する燃料代も上がっている。
投票用紙などの納品が遅れれば選挙に影響を与えかねないと指摘するエリントンさん。顧客の信頼を保つためある決断を迫られたといいます。
ランベックエレクションサービシズ
ジェフ・エリントンCEO

今年はかなりの仕事を断ってきた。
3~6週間の納期が必要だった製品が今は4~6ヵ月かかっている。
深刻化する紙不足。中間選挙への影響について選挙制度に詳しい専門家は…
選挙制度に詳しい
デモクラシーファンド
タミー・パトリックさん

自治体が住民に郵送する資料にミスがあった場合、予備の用紙がないため印刷し直せない可能性がある。
選挙にかける予算の少ない中小の自治体ほどトラブルが起きる可能性が高いといいます。
実際、予備選挙では投票用紙が足りなくなるケースが発生。こうした問題が続けば、選挙の信頼性が損なわれかねないと指摘します。
選挙制度に詳しい
デモクラシーファンド
タミー・パトリックさん

「2020年の大統領選挙は違法であり」「盗まれた選挙だ」と信じる有権者はまだ多く存在する。
どんなミスが起きても、それを自分の政治的・金銭的利益のため利用しようとする人たちが出てくるだろう。