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[モーニングサテライト]「大浜見聞録」コンクリートで脱炭素社会を築けるのか?[會澤高圧コンクリート株式会社]

モーニングサテライト

大浜見聞録、今回はコンクリート業界の脱炭素化ということです。コンクリートは砂と砂利とセメントで作られていますが、セメントを作るときに発生するCO2の量が驚きです。セメント1トンにつき0.8トン出るといわれています。コンクリート産業のCO2排出量は国内の7%を占めるといわれていますが、業界としても脱炭素に向けての技術開発をどんどん進めている真っ最中です。そうした中、今回、北海道のあるコンクリート会社を取材してきました。

コンクリート業界 脱炭素化加速

北海道を拠点とする會澤高圧コンクリート。生コンクリートやコンクリート製品を製造しています。

2021年度の売り上げは203億円。

CO2削減を目指し、新しいコンクリートの開発を急ぎます。

"自己治癒"の実力は

あるコンクリートが業界で注目を集めているといいます。

會澤高圧コンクリート
生産科学本部
青木涼副本部長

この水槽は自己治癒コンクリートで作られている。
コンクリートに入れたバクテリアがひび割れを修復。

このコンクリートの競争力はバクテリアの存在があります。休眠しているバクテリアと乳酸カルシウムを配合し、生コンクリートに投入。

ひび割れが発生し、水分が侵入するとバクテリアが活性化し、乳酸カルシウムを食べて炭酸カルシウムを排出します。

この炭酸カルシウムがひび割れ部分を埋めていくという仕組みです。

これにより60年とされているコンクリートの寿命は100年程度まで伸ばすことで、コンクリート製造時のCO2の排出を大幅に削減できるといいます。

この技術はオランダのデルフト工科大学と共同で開発したものです。2020年に世界で初めて量産化に成功し、札幌市水道局などで採用されています。

全国のコンクリート工場に自己治癒材料の供給も始めています。

會澤祥弘社長に話を聞きました。

大浜平太郎キャスター

自己治癒コンクリート、どうしてここに目をつけた?

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

業界がやばいから。
脱炭素の矢面に立つのが鉄とコンクリート。
セメントを使い続ける限り、出したCO2を吸収することや使う量を減らすなどのアプローチを取らないと。

大浜平太郎キャスター

危機感があった?

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

決定的な危機感。

"自己治癒"で洋上風力発電

いま全社を上げて取り組んでいるプロジェクトが水に強い自己治癒コンクリートを使う洋上風力発電です。

風車で発電した電気を使って水と空気からアンモニアを洋上で生成。船で陸に運び、水素に転換して利用します。

會澤高圧コンクリートはこのプロジェクトの旗振り役を努めています。

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

自己治癒コンクリートを使うことでより安全性が高まる。
海に浮かぶものなので水が侵入しては困る。
コンクリートの新しい需要を自分たちで切り開く。

洋上風力発電を実現するための開発は着々と進んでいます。

會澤高圧コンクリート
生産科学本部
東大智さん

3Dプリンターで印刷しています。

セメント材料を使った3Dプリンター。通常のコンクリートは直線や曲線など単純な形のものしか作ることができませんが、複雑な形のものでも構築できることが最大のメリット。

北海道・新冠町の美術館「太陽の森 ディマシオ美術館」にあるグランピング施設。建物を丸ごとプリントしました。壁の模様も3Dプリンターが印刷したものです。

さらに…

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

印刷だから中をスカスカにできる。
構造で今までのものと同じ強度を持たせることができる。
理論的にはコンクリートの分量60%減。

平太郎の「へぇ~」ポイント
ドローンを使ってコンクリートをプリント?

3Dプリンターは現状ロボットアームを使って印刷をしていますが、これではアームが届く範囲でしか印刷できません。

そこで會澤高圧コンクリートは3Dプリンター用のドローンを開発することでこれまでの制約条件を取り除こうというのです。

3Dプリンター用のドローンと自己治癒コンクリートを使い、鉄に比べて維持コストがかからないコンクリートの浮体の建設を計画しているのです。

大浜平太郎キャスター

いつごろの完成を目指している?

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

だいたい2027~2028年。
5~6年でできないものは20年やってもできない。

今年7月にはサウジアラビアの大手不動産開発グループの「アル・サエダン・フォー・デベロプメント」と合弁会社を設立しました。

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

サウジアラビアも石油が売れなくなることを想定して、再生可能エネルギーでアンモニアを作り、輸出しようとしている。
そういう面でも親和性がある。

アル・サエダン・フォー・デベロプメント
マシャエル・ビン・サエダンCEO

同じビジョンを持つ會澤高圧コンクリートが最適なパートナーだと考えた。
彼らには高度な技術や革新性がある。
私の期待は高く、無限大です。これは新しいスタートです。

會澤高圧コンクリート
會澤祥弘社長

脱炭素の問題を克服することがわれわれの産業が生き延びるためのテーマ。
突破しようとしています。

さまざまな業態で待ったなしに進む脱炭素への取り組み。建造物を造っては壊すという建築モデルそのものを取り直し、既成概念を打破してまで進まなければならないというところまで立たされています。

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