中国でいま電力不足が深刻化し、アップル向けに部品を作っている工場も生産停止になるなど経済活動に暗い影を落としています。
一体なにが起きているのでしょうか。

AIS CAPITAL株式会社
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中国・遼寧省。真っ暗な道路で大渋滞が発生している様子です。

街中の信号が消えてしまっています。

吉林省では停電でエレベーターが停止。子どもが閉じ込められました。

これらは中国各地で発生している電力不足の一幕。突然の停電も相次いでいるのです。

影響は市民生活にとどまりません。
中国の南部・広東省の東莞市。

北京支局の佐藤真人記者。
こちらは中小の製造業が入居する企業団地ですが、昼間の間は電気を使ってはいけないという通知が出されていて生産が止まっています。

工場には作業員の姿は見えず、製造装置も止まったまま。
「明日は電気がないので出勤なし」との張り紙もありました。

従業員が3人の工場経営者は…
今は1週間に3日間は休みだ。一人は昼間働き、一人は夜に働く、もう一人は休み。

電力会社は多くの電気を消費する工場などに対し、週3~4日程度、午前8時以降の生産を停止するように通知。

このためこの会社では電気の使用に制限がない未明から早朝にかけて交代で出勤しているのです。

しかし、限られた時間で生産が追いつかないため受注をあえて減らしているといいます。
今月の売り上げは2~3万元(35万~50万円)ぐらい。

それで家賃や日常の経費を払ったり、給与を出すともうけるどころかマイナスだ。

深刻化する電力不足。

この原因について香港メディアは専門家の分析としてこう伝えています。
21日時点で主要発電グループ6社の石炭備蓄量は1,131万トンで今後2週間耐えられるかどうかの量だ。

火力発電に必要な石炭。中国国内の石炭価格は今年に入り倍に。9月30日の取引では1トン当たり過去最高額となる1,408元、日本円でおよそ2万4,000円を付けました。こうした燃料コストの上昇がいま電力会社を圧迫しているのです。

さらに習近平指導部が進める温暖化対策が影響していると見られています。

2060年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げる習近平国家主席。

排出削減の指示を受けた地方政府が節電を急いでいることが電力不足に関係していると見られています。

こうした中、9月30日に発表された中国の製造業の景況感を示す指数が好不況の節目となる「50」を下回りました。これはコロナの感染が直撃した去年2月以来、1年7ヵ月ぶりで電力不足が景況感を悪化させたと見られています。

さらに電力不足はアップルなどの海外企業にも影響を与える事態になっています。

上海支局の菅野陽平記者。
上海の隣、江蘇省の崑山市にやって来ました。こちらにあるのはアップルやテスラに機械部品を提供しているメーカーですが、26日から生産を停止しているということです。

人の気配が消えた工場。
警備員に聞いてみると…
来ている工員は多くない。二十数人くらい。

「いつから制限?」
今月から。これからも電力制限は続く。期間は短くないかもしれない。

また日本企業への影響も…

JETRO(日本貿易振興機構)の調べでは広東省にある日系企業のうち今月になって週5日以上の電力制限を受けた企業が55社に上ります。

業種別では自動車関連、電気・電子関連などが中心となっています。
今回の大規模停電、その背景について専門家は…
中国の政治・経済に詳しいAIS CAPITALの肖敏捷さん。
コロナ後の景気が回復に向かって生産や輸出や産業用の電力需要が拡大したのと異常気象で夏は非常に暑かった。今も暑いといっているので冷房用などの需要が急速に拡大しているのが原因。

2060年までの温室効果ガス排出ゼロを打ち出している習近平政権。

環境問題に配慮して石炭の採掘量を減らしています。さらに主要原産国、オーストラリアからの輸入規制で石炭が不足しているのです。

今後、どのような対策を取っていくのでしょうか。
景気か空気(環境問題)かの選択。

空気をきれい(環境へ配慮)にするには景気対策を後回しにしないといけない。

ここにきて景気対策を後回しにしている気がする。

年末に向けての中国政府のかじ取りは空気より景気に傾いてくる可能性は高い。
