今回の東京モーターショー、多くの電気自動車が出展されていますが、実は学生たち5人が作った電気自動車というのも出展されています。
2050年を想像したという未来のクルマ。
一体どんなものか、その制作現場に密着しています。
COLLAPSE
世界の大手メーカーがひしめく東京モーターショーの会場。
その中で報道陣に囲まれていたのは、可愛らしい小型の電気自動車。
クルマの常識を壊したいという想いから「COLLAPSE(崩壊)」と名付けられました。
愛知総合工科高校専攻科2年の恒川弘貴さん、
コンセプトは私たちが思い描く未来の車社会。具体的に2050年を想像して今できるものを詰め込んだ車が「コラプス」。
運転に使うステアリングはなんとゲームのコントローラー。
実はこれ愛知県の学生5人が設計から組み立てまで全て手作りしました。
愛知総合工科高校専攻科2年の北村清さん、
2050年には自動運転が完全に確立されていると考えていて制御のしやすいゲームのコントローラーを使っている。
ボディには軽くて丈夫な炭素繊維強化プラスチックを使用しました。重さは約150キロと軽自動車の5分の1程度。
軽くすることで現代のEVの課題である航続距離を伸ばす狙いです。
学生ならではの奇抜な発想にブースを訪れた人の反応は、
車雑誌の編集者、
大人だと思いつかない自由な発想。なかなか思いつかない。
部品メーカーの広報担当者、
企業の立場だと生産性や効率性を注意して考えるが、彼らの情熱と夢で出来上がっているのがいい。
愛知県立愛知総合工科高等学校
[blogcard url="http://www.aichi-te.aichi-c.ed.jp/"]
2016年4月に開校した愛知総合工科高校。
5人が通っているのはその専攻科です。高校を卒業した学生たちにさらに2年間、より実践的な教育をする学校で、いわゆる高等専門学校の4~5年生に相当します。
この日、彼らが取り掛かっていたのは車体の調整。ところが作業の進め方を巡って火花が…。
またどうせ取るんでしょ。何回も取ることを考えたら、その度にこれも取る。無理じゃない?取り付けだけで2~3時間かかる。
そんなにかからない。
これつけるのにどれだけかかったと思う?
思ったことを率直にぶつけ合うのも学生ならでは。
それぞれの得意分野を活かしながら未来の車づくりを進めます。
ボディのデザインを担当した恒川弘貴さん。誰も見たことのないカタチを強く意識しました。
車のデザインを紙粘土でつくったモデル。僕の中で未来の車は丸いイメージ。滑らかな曲線に一番こだわった。
真ん中から折りたためる斬新な構造も特徴の1つ。駐車スペースを減らすために取り入れました。
専攻科2年の粕谷優太さんは、
車庫の中で車が半分に折りたためたら他にもいろいろなものが置ける。
走行試験
東京モーターショーまで2周間あまりの10月9日。
色付けしたボディなどが揃い、いよいよ組み上げです。
ついに電気自動車「コラプス」が完成しました。まだボディに隙間もありますがなんとかカタチにすることが出来ました。
ボディに色がついてから形にして走らせるのは初めてなので楽しみでもあり不安でもある。
コラプスをトラックに乗せて向かった先は愛知県内のサーキット「スパ西浦モーターパーク」。
ここで最後の走行試験を行います。
目標は時速40キロでの安定走行です。
着々と周回を重ねるコラプス。しかし時速約30キロしかでません。左右にふらついてしまうことが原因です。
コントローラーの調整がうまく出来ていませんでした。
どのくらいスピードを出せるのか。ステアリングをうまく利かせるかが目的。課題が残っている。悔しい思いのほうが大きい。
見据えたゴールに辿り着けるのか?
残された時間は卒業までの半年間。夜遅くまで調整は続きます。
ビジネスアイデア
車づくりの一方で続けている活動があります。
この日、スーツに身を包んで向かったのは地元の信用金庫「西尾信用金庫」です。
集まった地元企業の経営者たちにコラプスを使ったビジネスプランを発表し、車づくりへの支援を呼びかけます。
2050年の車にはAIが搭載されていて知性を持っている。タクシーの運転手のような考え方を車自身が持っていて利用者を探しながら走る。
彼らが考えたプランは自動運転機能を搭載したタクシー。車が自分で乗客を探し、会話もできるというアイデアです。
3万台の「コラプス」をつくるには90億円かかる。10年あれば確実に元が取れると計算している。
しかし経営のプロからは鋭い指摘が、
収支は甘い気がする。
1台の車の制作費が30万円弱。この現実性は?
今回つくった「コラプス」が約30万円。
車づくりだけでなく、その活用方法も提案することでこれまで20社以上から合わせて200万円の支援を受けました。
いろいろと改題点が残っているので厳しい意見も言われると思うが、今の自動車をつくっている大人たちに見てほしい。