中国のテクノロジーの最先端をお伝えする「中国Tech」。少子高齢化による労働力不足に加えて新型コロナによるロックダウンで大きなダメージを受けた飲食業界でいま注目を集めているのが自動調理ロボットです。その技術力を取材しました。
人員半減 最先端調理ロボット
中国南部の広東省・広州市。市内の飲食モールにあるレストラン「鉄大厨」。今年3月にオープンしたばかりですが週末の夜はほぼ満席になるほどの賑わいです。
白身魚を青花椒で煮込んだ料理に赤と青、2種類の唐辛子をふんだんに使った炒め物など中国で最も辛いといわれる湖南料理の専門店です。
お客さん

とてもおいしい。
お客さん

この店はとてもいい。だから最近よく食べに来る。
実はこのレストランには秘密が…
上海支局
菅野陽平記者

厨房に入ってきましたが必ずあるガス台がどこにもないです。
鉄大厨
康飞祥オーナー

現在はこのロボットで調理している。
ロボットを使うので火も要らないしガス台も要らない。
この店ではデザートなど一部を除いたほぼ全ての料理をロボットが調理。そのため同じ規模の店だと8人必要なスタッフを4人に減らすことができたほか、厨房の面積は3割で済んだといいます。
ロボットは1台、日本円でおよそ130万円ですが…
鉄大厨
康飞祥オーナー

店の売り上げにもよるが今の計画では6ヵ月ほどで回収できる。
ただコスト削減が一番の狙いではないといいます。
鉄大厨
康飞祥オーナー

巨匠の技をコピーできる。
調理ロボットを製造したのは上海愛餐機器人。前身のプロジェクトも含めると創業14年、調理ロボット専業の会社です。
「厨神-H19」はレストランが導入したものと同じ最新鋭のロボット。大きな鍋は鍋そのものが動くほか、かき混ぜるヘラもついていてシェフの鍋さばきを再現しているといいます。さらに…
上海愛餐機器人
张曙燦さん

一番下は調味料システム。決められた量を鍋に投入する。
早速、回鍋肉を作ってもらいます。食材は事前に切って専用のトレーへ。中にセットするだけで準備完了です。
辛味や酸味、油の量などは自分好みに調整し、スタートボタンを押せばあとは待つだけです。
予熱が終わるとまずは火の通りにくい肉を投入、その後、野菜や調味料を加え、わずか3分半で回鍋肉が完成しました。
上海支局
菅野陽平記者

火加減がちょうどよくておいしい。野菜はシャキシャキしている。歯ごたえがいい。炒め過ぎるとしなっとして食感がなくなりますが、この野菜はどれも食感がいいです。
上海愛餐機器人
张曙燦さん

見本となるシェフの鍋の温度を正確に測ってプログラミングしている。
例えば肉を調理する場合は180度、ピーマンを調理する場合は100度。
温度は最高230度まで1度刻み、加熱時間も1秒単位と緻密な調整が可能な上、調理中は毎秒20回温度をモニタリングします。
圧力を加えて熱効率を高めることもできるためラム肉のステーキもわずか4分ほどで焼き上げます。
上海愛餐機器人
张曙燦さん

ごく短時間で鍋の温度を上げ、肉の表面を一瞬で焼くので中の肉汁が逃げない。
現在はおよそ1万のメニューの調理が可能。さらに本体の画面やアプリで簡単に独自のメニューを作ることができます。
内部を自動で洗浄するため違う味の料理を連続して作ることも可能に。スタッフの負担を極限まで減らしています。
上海愛餐機器人
张曙燦さん

この2年間コロナで飲食業界は大きな影響を受けている。
これを使えば人件費と管理費を減らすことができる。
弊社のスローガンは「百聞は一見にしかず百聞は一食にしかず」。
食べてみればロボットが人を代替するのは遠い未来ではないと分かる。
いま中国では業務用のみならず家庭用の調理ロボットも続々登場。市場規模は全体で来年およそ30兆円にまで広がると予測されています。
調理用家電を手がけるメーカーの担当者は…
添可 国際事業部
ルアン・ジアヤンさん

今後数年で新規参入も増え成長スピードが増す。
中国だけでなく、まもなく欧米、アジア太平洋でも製品をリリースする。