2022年問題を取り上げます。
実はこの2022年問題があるために土地の値段が急落しかねないといわれています。
一体、どういうことなのでしょう?
2022年問題
真新しい戸建てが並ぶ住宅街。その先にぽっかりと広がるのはたくさんの野菜を育む畑です。
練馬大根。たくあんになる大根。ちょうど今、生育の途中。
農家の白石好孝さん。東京・練馬のこの一帯で家族で農業を営んでいます。
年間100種類ほどの野菜を生産。近くのスーパーやレストランに直接卸すなど都市部にあるという立地を生かした農業を展開しています。
その畑の一画に「生産緑地地区」と書かれた看板があります。
いま都市部で畑を見たらおおむね生産緑地の看板が立っている。ずっと農業が続いているということ。
生産緑地
都市部にある農地の多くはこの生産緑地で全国に合わせて約1万3,000ヘクタールが点在しています。
ところが今から5年後、2022年にこの生産緑地が住宅用の土地として大量に売り出される可能性があるのです。
その時、何が起こるのか?
不動産コンサルタントの長島修さんは、
農地が大量に市場に放出されるかもしれない。地価がガーンと下がってデフレの元凶になる可能性がある。まさに時限爆弾。
2022年問題とは?
都市の多くの農地は生産緑地。住環境を守るために30年の期限付きで自治体が指定したものです。
その間、所有者はそこで農業をしなくてはいけないかわりに相続税や固定資産税の優遇を受けています。
この制度が導入されたのが1992年。
30年が経過する2022年に全国の生産緑地の8割が期限を迎えます。その面積は東京ドーム2,000個分以上です。
期限を迎えると所有者は生産緑地を残してそのまま農業をするか、農業をやめて住宅地に転用するかを選ばなければいけません。
農業をやめる洗濯をする農家が多ければ、かなりの土地が住宅地として出回ります。
そのため宅地の過剰供給により地価が急落したり、さらに景気が悪化する可能性もあります。
これが2022年問題です。
私たちの生活を脅かしかねない、この問題の現状と対策を取材しました。
農家の選択
2022年問題のカギを握る農家の選択。
東京・練馬の白石さんはここで農業を続け生産緑地を守っていくことを決めています。
生産緑地は社会的な資源。都市の資源であると考えている。地域で野菜を楽しみに待ってくれる人もいる。農業をこれからも続けていきたい。
ただ農家の高齢化が進んでいるため大量の農地が売りに出される可能性も…。
生産緑地セミナー
これをチャンスと見た不動産業界はすでに農家へのアプローチを始めています。
10月に埼玉の不動産会社が開いた生産緑地セミナー。税理士が相続や税制について説明をして所有者の農家などが熱心に耳を傾けました。
税理士は、
生産緑地を保全すべきか転用をはかるか、このタイミングに来ている。
生産緑地を持つ農家、
私の代では10年農地として延長するのがいいと思っている。ただ地域の事情が変わるので選択肢は必要。
不動産会社がセミナーを開いた狙いは生産緑地を持つ農家とつながりを作り5年後の住宅地への転用を促すこと。
主催した不動産会社は、
2022年は大きなビジネスチャンス。場所に合った必要とされているものを提案できればいいと思っている。
政府の動き
一方で国は大量の宅地化で地価が急落することを危惧。
生産緑地の維持に動き出しています。
農家が農業を行う企業などに生産緑地を貸し出しやすくするため制度を改正しようというのです。
これに先駆けて生産緑地を活用する動きがすでに広がっています。
川崎市にある1,000坪ほどの畑。所有者の山田善一さん。
他界した父がここで植木を生産していた。
4年前、父親が亡くなりこの生産緑地を相続しました。
しかし仕事があるため農業は継げない、一方で代々の農地を手放すことにも抵抗があったといいます。
自分で買った土地なら何も考えずに売っていたが、親から引き継いだものなのでできる限り残したいなと。
株式会社アグリメディア
[blogcard url="http://agrimedia.jp/"]
そんな山田さんが頼ったのが都内のベンチャー企業「アグリメディア」です。
元々、農家から委託を受け使われていない農地を活用し、全国で約70の貸し農園などを運営しています。
最近はそれを生産緑地でできなかという相談が増えているといいます。
諸藤貴志社長は、
2022年が近くなり、これからどうしようと考えている人が増えている。経済的に持続できるモデルを提供して相談者の意向に沿った提案をしていく。
先程の山田さんの生産緑地、相談の結果、アグリメディアに委託し3年前から貸し農園「シェア畑」として運営・管理してもらっています。
利用者は月5,000円ほどから使用でき、さまざまな野菜を育てられます。
ゴボウを育てる利用者は、
結構大きくなりましたね。
別の利用者の畑で実っていたのは美味しそうなカブです。
楽しいですね。作ったものを食べると美味しい。
農園には水道やトイレが設置され、種や苗、それに農具なども完備。
さらに、
野菜を抜くとき声を掛けて。
菜園アドバイザーと呼ばれる野菜作りを教える役割の人も配置。
こうしてオーナーは自ら農業をしなくても農園からの収入を得つつ生産緑地を維持することができるのです。
オーナーの山田さんは、
利用者に喜んで使ってもらえるのはこちらとしてもうれしい。こういう形で残せてよかった。
生産緑地を時限爆弾にしないためにどうすればいいのか。
タイムリミットはあと5年。避けては通れない問題です。