ZOZOTOWNを運営する衣料品通販大手のZOZOが12月16日に初めてとなるリアル店舗をオープンしました。
キーワードは"似合う"です。
ZOZOが初のリアル店舗
プロと選ぶ自分に"似合う"服
真っ黒な外観、ZOZO初のリアル店舗「niaulab by ZOZO」です。
萩原由佳記者
こちらの店舗に入るためには事前に送られてきたコードを入力する必要があります。

完全予約制で当選した人しか入れない仕組みです。
スタイリストやヘアメイクのプロが似合うファッションを提案してくれます。1人あたり2時間以上。しかも貸し切りです。
まずはZOZO独自のAIが好みに合いそうなコーディネートを3つ提案してくれます。その画像を参考により細かく似合うを探ります。
スタッフ

普段は色ものは着られます?
萩原由佳記者
まったく着ないです。
クローゼットの中は紺・白・黒・グレー。

早速、似合う服選び。店にはZOZOTOWNで取り扱う700点以上のアイテムを取り揃えスタイリストらと一緒に選んでいきます。
萩原記者に勧めてくれたのは柄のワイドパンツ。
スタッフ

色が同系色でまとまっているので、そんなに派手見えしない色。
全身コーディネートしてもらうと…柄のパンツに合わせたのは白いシャツ、中にレースのシャツを重ね着するコーディネートです。
このほか、明るいオレンジを使ったコーディネートも。
体験はすべて無料。気に入った商品は店ではなく送られてくるZOZOTOWNのURLから購入します。
ZOZO
「似合うラボ」事業責任者
大久保真登さん

ここで得たアンケートや購買実績などを見てデータとして取っていく。
ZOZOTOWNやWEARなど既存のサービスの利便性向上につなげていきたい。
ZOZOの調査によるとある特徴が見えてきたといいます。
ZOZO
「似合うラボ」事業責任者
大久保真登さん

パーソナルスタイリングサービスを受けてみたいという感心の声は高かった。
中でもZ世代の女性の人に関心が高かった。
自分に似合うものを探すことに関心が高いというZ世代。
そのZ世代をターゲットにするブランドが日本に再上陸します。かつてファストファッションで一世を風靡した「FOREVER21(フォーエバー21)」です。
その仕掛け人は…
ブランド30超!のアパレル
次の戦略は再上陸ブランド
アパレルショップの「niko and…(ニコアンド)」。ターゲット層は20~30代の男女です。
明るい色合いのコーディネートが特徴。その狙い通り…
20代 お客さん

カジュアル系を買いたいと思ったらここ。
月に2~3回は来る。
そして「HARE.JP(ハレ)」。洋服はモノトーンをベースしていて色合いは暗め。袖にファスナーが付いたジャケットなど形や柄が個性的な商品が多く揃います。
「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」、30~40代のファミリー層がターゲットです。時と場所を選ばないシンプルなデザイン。機能性を持たせた商品が人気だといいます。
30代 お客さん

シンプルで着やすい、子どもとも「おそろいコーデ」がしやすい。
これらのブランドすべてをアダストリアが運営しています。手掛けるブランド数は30以上。
ここに来年、新たに加わるのがフォーエバー21です。
2009年に日本に初上陸したフォーエバー21。最新の流行を低価格で販売するファストファッションとして人気を集めました。
しかし、2019年に経営破綻し、日本から撤退。
アダストリアのブランドとして再上陸します。
オープンに先駆けて12月におよそ150種類の新商品がお披露目されました。
今回は6種類のテーマに分けて商品を開発。最新の流行を取り入れた「BASIC」や90年代のレトロ感を加えた「POP」、アジアンカルチャーを取り入れたかわいらしい雰囲気の「FEMININE」など色合いや雰囲気が全く違うカテゴリーを展開します。
商品単価は4,000円ほどとかつてのフォーエバー21より高く設定。
ターゲットは撤退前と同じ10~20代の若い世代です。
アダストリア
木村治社長

Z世代のお客様に関しては今まで体験してきた成功体験とは違うビジネスのやり方をやっていかないと成功しないだろうと思っています。
アダストリアが仕掛けるフォーエバー21の戦略とは…木村社長に直撃します。
全世代対応のブランド戦略
佐々木明子キャスター
ガジュアル衣料品の大手アダストリアの社長、木村治さんにお話を伺っていきます。
30以上のブランドを持っているということでずいぶん多いですね。

アダストリア
木村治社長

ファッションではお客様のさまざまな好み、ライフスタイルがある。
1つのブランドで全てのお客様のニーズを捉えるのは難しいと思っている。
ファッション性の高いブランドをいくつも作っていくというマルチブランド戦略を取っている。
佐々木明子キャスター
それぞれのブランドの特徴を見ていきます。

ブランド別にターゲットの年齢層が分かれています。
10代 | repipi armario (レピピアルマリオ) |
---|---|
10~20代 | FOREVER21 (フォーエバー21) |
20~30代 | LOWRYS FARM (ローリーズファーム) |
30~40代 | studio CLIP (スタディオクリップ) |
40~50代 | Elura(エルーラ) |
40~50代をターゲットにしたブランドから30~40代向け、さらに10代、女子中学生をターゲットにしたブランドも展開しているということです。
そして10~20代の間にフォーエバー21が加わります。
佐々木明子キャスター
こういったブランドはゼロから立ち上げてアダストリアが育てていくと伺いましたが、ここになぜ知名度があるフォーエバー21を加えるのか?
自社でも10~20代の若者向けを取り込めそうですが?

アダストリア
木村治社長

これまでの経験上、ゼロからブランドを育て、成長させるには時間とコストがかかる。
フォーエバー21は知名度が日本で70%もある。今度は日本人に合わせ商品企画をしていく。
もう一度強いブランドを作っていく。
佐々木明子キャスター
今の若者はすごくこだわりがある。個にこだわる。
難しいと思うが個にフォーカスするためにどんな取り組みをしている?

アダストリア
木村治社長

Z世代の多様な価値観とニーズをカバーするネット専業のブランドも作っている。
20代の若い世代のスタッフがどんどんブランドを作っている状況です。
佐々木明子キャスター
スタッフがブランドを作って、それをECでやっているということですね?

アダストリア
木村治社長

そうです。
佐々木明子キャスター
さらに若者を取り込む秘策があるということで、それを取材しました。

社内で行われていたのは商品の売れ行きについてのオンライン会議。会議中に取り出したのはなんとVRゴーグル。視界に広がるのは未来のアパレル…
Z世代を取り込む戦略
メタバースで試着が!?
社内でパソコンを操作する社員。作っていたのは洋服の3DCGです。
実際の洋服と同じように型紙から布を裁断して縫い合わせていく工程をCG上で再現します。
アダストリア
生産部パターンチーム
髙橋拓海さん

実物を作らないで非常にサステナブルな物作り。
CGを用いることでリードタイムを短縮できるのがメリット。
通常、アパレルメーカーは実際に商品を販売する前にサンプルを作成。生地の質感や色合い、形などを調整し、最終決定するまでに2~3回サンプルを作る必要がありました。
そのサンプルを3DCGで代用することで無駄な廃棄や時間を短縮できるのです。
アダストリア
生産部パターンチーム
髙橋拓海さん

例えば1色だけ実物を作っておいて、他の展開カラーは3D活用して色のイメージは伝えられる。
アダストリアはこの3DCGを活用して今年からメタバース(仮想空間)に参入しました。
メタバース上にデジタル店舗をオープン。実際に店頭で販売している洋服をCG化し、メタバース内でも着られるようにしました。
お客さんはアバターを操作しながら商品を手にとって鏡でお試し。CGなのでサイズも自由自在です。
アダストリア
島田淳史さん

リアルの店舗に来ている感覚を感じてもらうことでお客様とのつながりを作れているのではないか。
Z世代 メタバースで服を買う?
佐々木明子キャスター
若者の価値観が変化する中でメタバースに参画する意味は?

アダストリア
木村治社長

若い世代は時間や人との接し方が変わってきていると思う。
若者の多様化する価値観に対してメタバースの世界でもわれわれのマルチブランド戦略が取り入れていくと思っている。
佐々木明子キャスター
まだ利益の出ない業態ですよね?

アダストリア
木村治社長

まだマネタイズできていないが、どこよりも早くわれわれが手掛けることに意味がある。
佐々木明子キャスター
シェアを取りに行くメリットは?

アダストリア
木村治社長

必ずシェアが取れてくると思っている。
佐々木明子キャスター
メタバースの世界がひろがていくかどうか?
違う顧客ですよね?

アダストリア
木村治社長

既存のお客様とは違うお客様を取り込んでいけると思っている。
佐々木明子キャスター
顧客設定の拡大がキーワードのようです。

コスト増でどう立ち向かう?
佐々木明子キャスター
アパレル業界はコロナ禍で打撃を受けた業界の一つですが、4年間の売上高を見てみるとそこまで落ち込んでいませんね?

アダストリア
木村治社長

とはいえ、このコロナ禍で経営としてはかなり厳しい2年半だったと思っている。
アダストリアとしてマルチブランドであったこと、コロナ禍でファッションがカジュアル化したこと、自社ECの売上が伸びたことが要因だった。
佐々木明子キャスター
ただアパレル業界にとっての懸念というと人件費や輸送コストの高騰がいま起きています。
アダストリアは製品の80%近くを中国で生産しているということですが、これは経営上の課題では?

アダストリア
木村治社長

中国は人件費も原料も上がっているので生産拠点を徐々にASEANにシフトしています。
現在は22%が東南アジアの生産となっていて、将来的には50%を目指しています。
佐々木明子キャスター
リスクを分散させることは大事なんですね。
原料高、お持ちいただいた素材は綿ですよね?

アダストリア
木村治社長

実はポリエステルでできています。
自社で開発した素材となっています。われわれの生産本部で素材の開発も行っています。
佐々木明子キャスター
自社で作るメリットはコストですか?

アダストリア
木村治社長

自社で素材を開発することでコストはカットできる。
また原料が高騰している中でもわれわれのバリューチェーンが強みとなっている。
佐々木明子キャスター
どのくらいカットできる?

アダストリア
木村治社長

コットンの半分くらいカットできる。
佐々木明子キャスター
それはコスト高に対応できますね。
さまざまなターゲット層を捉えるために戦略を伺ってきましたが、次はどんな一手を考えている?

アパレル企業が目指す未来
アダストリア
木村治社長

アパレル業界は大きく変革していかないとけない時代が来ると思っている。
洋服だけでなく、衣食住、いろいろな価値観、ニーズに対応したサービス、商品展開が必要になると思っている。
アダストリアは来年70周年を迎えるのでこれを節目に昔はアパレルの会社だっと言われるような企業を目指していきたいと思っている。