ガイアの夜明け ビジネス関連

[ガイアの夜明け] 走れ!「レトロ」大作戦!(2)

2017年10月17日

走れ!「レトロ」大作戦!

和歌山県の中央部に位置する有田川町。古くからミカンの産地をして知られています。

その広場にこんなものが…。

蒸気機関車がひっそりと展示されていました。

その姿をじっと見つめる男性。阿知波孝明さん(40歳)。

皆さんのSLのイメージはこんな感じですよね、公園の片隅に置いてある。

こういうのが日本全国に散らばっているので動かせたら面白い。

アチハ株式会社

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大阪市住之江区。

ここに本社を構える運送会社のアチハ。従業員は85人。

ここを率いるのは先程SLを見ていた阿知波さん。

阿知波さん、日本一だという自慢のものを見せてくれました。

トレーラーの荷台部分がどんどん伸びていきます。その長さは全長55メートル。

アチハは特殊なものを運ぶのに特化した会社なのです。

大型、長い、幅が広い、高さが高い、重い、そういう特殊なものばかり運ぶ。

風力発電の巨大な羽。長さは1枚で43メートル。輸送はたいてい深夜。ときには交通規制が必要です。

途中、必ず難所が現れます。民家の間の狭い路地をギリギリで通過。

アチハはこうした大きくて重いものを運ぶ技術に定評があります。

中でも一番多いのが鉄道車両。

年間300両もの車両を国内はもとより海外へも運んでいきます。

アチハの創業は大正12年(1923年)。

ほかが運べないものを運ぶことで90年生き残ってきました。

その4代目である阿知波さん、得意の運送技術で新規事業に打って出ようとしていました。

新規事業

本物のSL。それを1ヶ月単位で借りられる。我々が運んでいってレールまでつくる。

銀座のど真ん中の道路に線路を敷いて、その上をSLが走る。

アチハがSLを動くように整備して日本全国、どこにでも貸し出すというのです。

運搬から線路の設置、運転手までセットにして1ヶ月で約2,000万円。

SLを走らせるのには数億円かかるのが常識。それを覆すビジネスだといいます。

D-51

4月下旬、愛知県あま市在中の個人が40年間保管していたSLをアチハが購入しました。

運び出すために分解作業の開始です。車輪部分とボイラー部分が切り離され運び出されていきます。

分解したSLが運び出されたのは和歌山県有田川町にある鉄道公園「有田川鉄道公園」の一画。

ここで再び組み立てて走れるように整備しようというのです。

前代未聞のビジネスが動き出そうとしていました。

1ヶ月後、運び込まれた通称「デゴイチ」の本格的な整備が始まっていました。

40年以上眠っていた蒸気機関車を再び動くようにしなければいけません。

関根利夫さん

整備を指導するのは関根利夫さん(69歳)。旧国鉄時代からJRで退職するまで蒸気機関車一筋、すべてを知るベテランです。

関根さん、何やら引っ張り出しました。そこに巻かれていたのは毛糸。この毛糸をつたって潤滑油が車輪にしたたり落ちていくといいます。

これくらいの強さなら動輪が何回転して1滴ポトッと落ちるという調整をこれでやる。

関根さんの指導の元、アチハの社員総動員でデゴイチ復活のため作業をします。

皆、本業の合間に駆け付けて作業をしています。

とにかく赤ん坊と同じで手間がかかる。毎日状態が変わってくる。自分の子供以上に思い入れがありますよね。

エアーコンプレッサー

今回、新たに搭載されたのが2台のエアーコンプレッサー(空気圧縮機)。

そのエアーコンプレッサーからあちこちに何本ものホースが伸びていきます。

コンプレッサーからホースを通って、ボイラーに入る入るエアホース。

石炭を燃やす代わりに圧縮空気で動くように改造しているのです。

皆さんの考えではSLは1回運んでいくと動かすものじゃない。動かすのに莫大な費用がかかってしまう。

SLを動かす上で一番手間と費用が掛かるのがボイラーの整備。圧縮空気を使うことで低コスト、短期間で動かすことができるようになります。

トラブル

整備を始めて1週間後、あるトラブルが…。

大量の水漏れが発生したのです。

サビを含んで茶色くなった水が止めどなく溢れ出てきます。

どこから漏れている?

どこからかサビの水が。

結構出てますね。

果たして無事に動かすことができるのでしょうか?

敦賀鉄道資料館

福井県敦賀市。そこに阿知波さんの姿がありました。

ぜひ来てみたかったのが敦賀鉄道資料館です。

敦賀市は日本海側で初の鉄道が走ったところ。交通の要所でした。

D51の1号、2号がここをスタートしている。

阿知波さん、この地にすっかり魅せられたようです。

持ってきたい。ぴったり。持ってきたい。

福井県庁

その足で向かったのは福井県庁。福井では県内に残る鉄道遺産を活用して町おこしを考えていました。

そこでアチハのSLに大いに興味があるといいます。

交通まちづくり課の猪嶋宏記課長は、

福井県内で行政のイベントをすると必ずSLを走らせられないのかという意見が出てくるが相当の額がかかる。

非常にハードルを下げてくれた。運ぶことまでやってもらえるのは選択肢が広まった。

こうしてアチハのSLレンタルに自治体などから問い合わせが相次いでいるのです。

本業プラスSLというコンテンツで一括で提供できるのは我々の魅力なので、ぜひこれから広めたい。

阿知波孝明さん

全国を飛び回る阿知波さん。

この日、久しぶりに兵庫県にある自宅に戻りました。

出迎えてくれたのは長男の健太くんと長女の優ちゃんです。

「皆さんで食事をするのは?」

2~3週間に1回くらい。ほとんど出張でいないので。

「お父さんの仕事は?」

クレーン車運んでいる。

食事も早々に健太くんが運んできたのはプラレール。お父さんが家にいる時は必ず一緒にやるそうです。

一緒に遊ぶうちに阿知波さん、なんだか真剣な顔つきになってきました。

妻の亜希子さんは、

プラレールだって子供たちが欲しいというより主人が。

毎週買い足していくんです。

どんどん買い足して。

「車」編がつくものがアチハは好き。風車も電車もジェットコースターも車輪がついている。結局、僕らが追い求めているものは車輪があるもの。

有田川鉄道公園

SLの搬入から2ヶ月後、いよいよ一般公開の日を迎えました。

ホームでは出発を前にギリギリまで最終チェックが続いています。

この道30年の関根さん、そして阿知波さんも心配そうに見守ります。

発車!

汽笛とともにゆっくりと走り出しました。廃車から44年、復活のときです。

そして待ち受けるファンの前にその勇姿を現しました。

立ち上る煙は水蒸気です。石炭の煙による周辺へのトラブルの心配もありません。

整備を担当した社員は思わず涙ぐみます。

自分が仕上げたSLが動いて、感動ですね。

よかったな。

今やっとスタート地点。

この鉄道公園では夏休みの間、復活となった蒸気機関車を使ってさまざまなイベントが行われました。

この日行われたのは初めての有料乗車体験。大人500円、子供300円です。

7月と8月の土日だけで延べ2,000人が参加しました。

さらにアチハのSLの最大の特徴が100トンもの機関車を自分の手で運転できるということ。SL運転体験の料金は夏休み特別料金で6,000円です。

和歌山と奈良から来たという女性たち、早速憧れの運転席へ。

わ~スゴい!

SLを知り尽くしたベテランが指導をしてくれるので安全に運転ができます。

まずレバーの基本操作を教えてもらい、

ブレーキを緩めて。あとはそれを引くだけ。引きすぎ。

動き出しました。

運転してる!

ずっと運転していたい。楽しかった。6,000円以上の値打ちはあります。

次々に運転席に座る参加者たち。

ちょっと早かったですね。

この日は平日にもかかわらず10人の定員に対し全国から4倍の応募がありました。

有田川町商工観光課の梅本泰彦さんは、

和歌山の有田川でもこれだけ来る。もっと来やすいところだったらとんでもない人数になる。土日だったらとんでもないことになると思います。

蒸気機関車を全国にレンタルするというアチハならではのビジネス。

次はどこで汽笛が響くのでしょうか?

商売という意味もあるが、それ以上に後世に残していく。古いものをずっと残していくことの使命感というのか僕らはそれをやるべきだと思う。

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