政府が策定を進めている経済対策の中身が判明しました。物価高が急速に進む中、電気料金の軽減など生活支援策が盛り込まれています。
物価高が家計直撃
電気料金2割削減へ
10月26日に自民党で開かれていた政調全体会議。議論されたのは政府が10月18日に決定する総合経済対策です。
自民党
羽生田政調会長

難局を乗り越えるにふさわしい経済対策となるよう一層の奮起をお願いする。
円安や物価高の影響が生活にも及ぶ中、急がれてきた経済対策。その概要が明らかになりました。
値上げが続く電気料金について家庭向けで1kWh当たり7円、企業向けでは3.5円を支援します。
これによって標準的な世帯でおよそ2割、月に2,100円から2,800円程度安くなる見通しです。
また都市ガスは1m3当たり30円を支援し、月に900円ほど負担を軽減します。
さらにガソリンなどの燃料価格を抑える補助金を継続。
こうした対策で政府は来年1月から来年度前半にかけて1世帯で総額4万5,000円程度の負担軽減を目指します。
松野官房長官

足元の物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応し、新しい資本主義の加速で日本経済を再生するため総合的な対策としたい。
今回の対策で盛り込まれるのはエネルギー分野だけではありません。
政府が重視しているのが商品価格の高騰です。商品の安定供給と価格の抑制を目指し、農産品の生産現場への支援も行います。
食品高騰が家計直撃
価格を抑える注目品
今回、政府が支援に乗り出そうとしているある取り組みを取材しました。
神戸市内の農産物直売所「六甲のめぐみ」。朝から地元の採れたて野菜を求めるお客さんで賑わっていますが…
番組スタッフ
野菜高くなっていないか?

お客さん

高くなっている。
お客さんは野菜の価格高騰に悩まされていました。
数キロ離れたブロッコリー畑。今月中旬から収穫が始まったばかりです。旬を迎える中、ある問題に直面していました。
ブロッコリー生産者
寺口正文さん

約3割上がったものがある。最高で。
一番よく使う肥料なのでものすごく痛い。
深刻な肥料の値上げ。その背景にあるのが肥料の主原料のひとつ、リンの価格高騰です。日本はリンのほとんどを輸入に頼っていますが、世界的な穀物高騰などを背景に輸入価格が去年の3倍以上に。
これが野菜の価格高騰にもつながっているのです。
こうした状況の中、寺口さんは従来とは違う肥料の導入を進めています。
ブロッコリー生産者
寺口正文さん

再生リン。
画期的な取り組みで農家としてもコストが安く使える。
再生リンと呼ばれる原料から作られたという肥料。従来の肥料が20キロ4,000円程度なのに対し、この再生リンで作られた肥料は3,270円と2割ほど価格が抑えられているといいます。
低価格の肥料を実現できる再生リンとは一体どういうものなのでしょうか。
その製造現場は意外な施設でした。
坂井田純記者

新しいリンの供給源として注目されているのが下水処理場です。
再生リンを製造しているのは神戸市が運営している東灘処理場。
神戸市 建設局
下水道部計画課
寺岡宏課長

約40万人分の下水、1日約17万トンを処理している。
実は再生リンは下水の特別な処理法で生み出されているといいます。一体どのような仕組みかというと…
まず、下水をきれいにするため水と汚泥を分離。処理された水は放流され、汚泥だけが残ります。
この汚泥、通常では焼却したあと埋め立て処分されるのですが、ここではこの汚泥から肥料の原料となるリンを作ります。
もともと汚泥にはリンが含まれていて、そこに水酸化マグネシウムを加え、化学反応を起こすことでリンを結晶化し、取り出しているのです。
神戸市 建設局
下水道部計画課
寺岡宏課長

1日に回収できる再生リンの量は400キロ。年間で約130トン。
救世主は生活下水!?
このような下水汚泥からのリンの回収は神戸市のほか全国5つの自治体で行われています。
ただ、設備投資のコストが課題となり、広がっていないといいます。
神戸市 建設局
下水道部計画課
寺岡宏課長

この施設だけで数億円の費用がかかる。
この取り組みはSDGsに資する取り組み。食料安全保障の強化にもつながる。
国家的プロジェクトとして位置づけてほしい。一つ目は財政的な支援。
こうした中、政府も支援に乗り出そうとしています。
テレビ東京が入手した10月26日時点の総合経済対策の原案。そこに下水汚泥の肥料利用拡大への支援が盛り込まれています。設備投資などへの財政支援を行っていく方針です。
下水から生み出される新たな肥料。肥料メーカーも期待を寄せています。
ハイポネックスジャパンは神戸市に対し再生リンの購入を申し入れています。ただ、供給量が限られているため、まだ実現には至っていないといいます。
ハイポネックスジャパン
猪俣正道開発部長

神戸市の再生リンは商品化に十分可能性がある。
まだ全国でも供給量が限られているので今後絶対的な量を供給してもらうことが必要。
まだ使われていない原料を使って肥料を生産し供給することが資源の循環につながっていく。