[WBS] 企業版ふるさと納税!事業連携がカギ!

ワールドビジネスサテライト(WBS)

好きな自治体を選んで個人が寄付をすると所得税や住民税の還付・控除が受けられるふるさと納税は自治体からのお礼の品に人気が集まり、2016年度には総額で2,844億円もの寄付金が集まりました。

一方で今回、WBSで取り上げるのはいわゆる企業版のふるさと納税(地方創生応援税制)です。

企業の寄付金で地方を活性化しようと2年前に始まった国の制度ですが、まだ普及が進んでいないというのが実情です。

果たして今後、個人版のように広がりを見せるのでしょうか?

その現場を取材しました。

吉野杉の家 Yoshino Cedar House

奈良県吉野町、林業で有名な町です。

吉野川沿いに建つ「吉野杉の家」がいま注目を集めています。

やってきたのは大阪から来た観光客。

すごい!

実はここ、吉野町が運営する民泊施設です。

高級品として知られるブランド木材「吉野杉」や「吉野ヒノキ」をふんだんに使っています。

宿泊客は、

木のいい香りがして心地よい。

香りがふわっと来たね。

2017年2月のオープンから1年余りで400人ほどが宿泊。

外国人の利用も多く、口コミで人気が広まっています。

この施設は吉野町が地元の木材をPRするために設置。

その際、国のある制度を利用して企業から寄付金を募りました。

吉野町産業観光振興課の表谷充康さんは、

企業版ふるさと納税を使って寄付をもらった。

地方創生応援税制

企業版ふるさと納税は企業の寄付金で地方を活性化しようと国が2016年度に始めた制度。

まず自治体が事業を立案して国に申請、国から認定された事業に企業が寄付をすると税が優遇される仕組みです。

これまで寄付金は経費扱いにすることができ、寄付金額の約3割が戻ってきました。

この制度ではさらに3割分を税額控除、企業の税負担の軽減割合がこれまでの倍となり、実質的な負担は約4割になります。

吉野町は地元の木材関連産業を活性化するために制度を活用しました。

五感で感じてもらえるものを作ることで吉野材の良さが分かってもらえると思う。

夕張市

この企業版ふるさと納税を財政破綻からの再生に活用しているのが北海道夕張市です。

夕張市は11年前の2007年、353億円の赤字を抱え財政破綻。

炭鉱の町として栄え、11万人以上いた人口は現在8,000人台に減少。

夕張市の人口
1960年 約11万7,000人
2018年 約8,300人

空き家の多い市営住宅の維持管理は財政を圧迫させる要因の一つとなっていました。

夕張市の鈴木直道市長は、

夕張市はお金もない、人のいない中で、ゼロ円でどう事業をするかを求められている。

就任8年目の鈴木市長は今、企業版ふるさと納税に活路を見出しています。

全部で約8億7,000万円の支援(寄付)表明をしてもらっている。崖っぷちの状況でやりたいことはあるのにお金がない。トップセールスで営業して今回のような支援に行き着いた。

こうした寄付金を使って進めているのが、

国道が走っている、ここに市道を通して交通結節点にする。

都市機能を集約したコンパクトシティと呼ばれる街づくり。

拠点となる複合施設を2019年度中の完成を目指して建設を開始。

バス交通のターミナルとなる場所に多目的ホールや図書コーナーなどさまざまな機能を集約する考えです。

株式会社ニトリホールディングス

こうした夕張市の事業に総額5億円の寄付を表明したのがニトリホールディングスです。

ニトリは1967年、札幌市内で創業。地元、北海道の活性化に貢献したいと創業者の似鳥昭雄会長が寄付を決めました。

ニトリがあるのは北海道のおかげ、恩返ししたい。最初は1億円くらいと思っていたが大きな建物だったので5億円に決めた。

ただ全国で1億円を超えるような大型の寄付があったのは数える程度。

今回の制度で国に認定された事業は472件ありますが、十分な寄付が集まっていない自治体が多いのが実情です。

寄付はいいと思う。世界各地でやっている。「寄付は当たり前」「社会貢献は必要」欧米みたいな考え方が足りない。

薬木栽培事業

同じ夕張市では企業にメリットのある別のプロジェクトも立ち上げました。

農林担当の武田信仁農林係長が案内してくれたのは、

あちらが薬木の植栽地。キハダとホオノキを4,000本ずつ植栽。

こちらは植栽をした時の写真、キハダとホオノキは樹皮が漢方薬として使われる薬木です。

夕張市はこの薬木栽培事業を夕張メロンに次ぐ新たな産業に育てようとしています。

ゴールデンウィーク明けには雪が溶けるのでキハダを1万本植栽する。やるなら日本一を目指したい

株式会社夕張ツムラ

この薬木栽培事業に期待を寄せるのが漢方薬最大手のツムラです。

夕張市には漢方薬の原料を加工するツムラの小会社があり、市の職員とは情報交換をしています。

産業振興課の武田農林係長は、

薬木を大規模に植栽する事例は少なく、試行錯誤を重ねながらやるところだが想定しより順調に成長している。

夕張ツムラの経営管理者、戸澤宏之部長は、

本当に楽しみ。

これらの夕張市の事業にツムラは総額3億円の寄付を表明。

漢方薬の売上げは2~3%の割合で増加していて北海道で新たに原料の調達先を確保できることは大きなメリットとなるのです。

ツムラのコーポレート・コミュニケーション室長、土屋洋介さんは、

原料のいい生薬を多く集める必要がある。夕張市の取り組みは新たな産地の開発につながっていく。

一方、夕張市にとっても薬木栽培事業を進める上で企業版ふるさと納税は不可欠だといいます。

今回は全て寄付金で賄われている。企業版ふるさと納税がなければ薬木栽培事業は広げられなかった。

自治体も企業もウィンウィンとなる事業連携型のプロジェクト。

国もこうしたモデルとなる事例を増やし制度の積極的な活用を促したい考えです。

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部、山﨑俊巳事務局次長は、

自治体がやりたいことと企業が寄付したいと思える事業がなかなか見えないという声をもらう。マッチングできるような仕組みを工夫したいと考えている。