[ガイアの夜明け] 「地方からの挑戦」「知らない町」で再出発(1)

シリーズ「地方からの挑戦」(3)「知らない町」で再出発

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遠野市

岩手県の内陸部に位置する遠野市。電車は1時間に1本程度。人口約2万8,000人ののどかな町です。

副市長の飛内雅之さんが案内してくれました。

カッパ淵

まずやって来たのは一番人気の観光スポットです。

「カッパ淵」です。本当にカッパがいそうと思って旅の思い出をつくっていく。

遠野は民話のふるさと。「カッパ淵」の小川に住むカッパが人々を驚かせたという伝説が残っています。カッパの像が町のシンボルです。

緩く結んで垂らす。釣りざおを。

カッパを獲るための釣りざおを無料で貸し出しています。エサはきゅうりです。

しかし自慢の「カッパ淵」も夏のシーズンを過ぎるとほとんど観光客はいません。

商店街

駅前の商店街。町のメインストリートも空き店舗が目立ちます。

人口の減少に歯止めがかかりません。

市町村も生き残りの時代ですから。いろいろな手を打ってやっていかなきゃいけない。

移住

この遠野市で2016年7月に面接が行われていました。

ある人材の募集を掛けたのです。

ユニクロに入社して店長として新店舗の立ち上げだったり。

長く電機メーカーで研究開発職を。

この人は元パイオニア株式会社の社員。応募者の多くが大手企業の出身者です。

募集をしたのは遠野市に移住して町の活性化に取り組んでくれる人材。例えば地ビールの開発や遠野の食材を生かしたカフェの経営などプロジェクトは全部で9つ。町で起業してもらおうというのです。

具体的に事業内容を示しての募集は全国的にも珍しい取り組みだといいます。そのため10人の募集に400件以上の問い合わせがありました。

藤田紘子さん

9月中旬。採用されたうちの一人が大阪から移住してきました。藤田紘子さん(36歳)。

もう1本向こうだった。

慣れない土地。早速迷子になります。探していたのは商店街にある一軒の店でした。中に入ると工事中。

ここら辺がカウンターキッチンになるのかな。

藤田紘子さんが任されたのは遠野の食材を使ったカフェを開くというもの。商店街の活性化が狙いです。

ここはかつて時計店でしたが6年前に閉店。この空き店舗を活用します。改修費用は遠野市が負担。営業開始から1年間はテナント代も全額補助されます。さらに移住して起業することを条件に手厚い支援も用意していました。

月額17万円の報酬と年間30万円の活動資金。支援は3年間で起業して得られる収入とは別に支払われます。

藤田紘子さんは、

こんなすごいお店、普通だったら持てない。

しかし市民の中には、

賛成はできないな。だって地元に長年いる人が仕事ないんだから続かないんじゃないの。

3年間頂いて「はい、サヨナラ」という人もいるかもしれないよ。

よそ者に託す」地方の生き残り戦略。果たしてうまくいくのか?

それぞれの挑戦を追いました。

食材探し

2016年10月、岩手県遠野市。商店街にカフェを開く準備を進めている藤田紘子さん。

この日は食材探しです。訪ねたのはリンゴ畑。カフェで使う食材は遠野産にこだわるというのがプロジェクトの方針です。

りんごの収穫作業がピークを迎えていました。りんご畑の農家、佐々木フキさん(87歳)。夫が残したリンゴの木を40年守ってきました。

1人で次々ともいでいらっしゃる。すごいですね。

藤田紘子さんも収穫を手伝います。

もぎたてのリンゴを食べさせてもらいます。

自然の甘みがギュッとしていますね。

リンゴの栽培が生き甲斐だと話す佐々木フキさん、1つ1つ丹精を込めて作っています。

こうやって「欲しい」って言って買ってもらえれば助かります。

新しく開くカフェで使いたいというと沢山分けてくれました。ケース山盛り3,000円。

加工しがいがある。

枝豆少し持っていく?

藤田紘子さん、次々と農家を訪ねます。そんな中、思いもよらないことが起こります。

農家の佐々木悦雄さん(70歳)。

全く収穫がなくなる時期としては1月、2月、3月、4月。

5月までない。

ときにマイナス20度近くなる遠野。畑が凍り年に4ヶ月は露地栽培ができないのです。

思った以上に厳しいです。

すると佐々木悦雄さんが自宅の倉庫に案内してくれました。

これは大豆。

ここは野菜の貯蔵庫。収穫がなくなる冬のあいだ保存している冬の野菜を藤田紘子さんに分けてくれるというのです。

若い連中頑張れよ。そういうつもりでね。3年ぐらいでめどが立たないと助成金もストップすると聞いているから。

食材探しは続きます。

藤田紘子さんが移り住んできた家。家賃は月2万5,000円。

藤田紘子さんは高知県の出身です。大学卒業後は大阪にある大手食品販売会社に就職。営業や海外への買い付けを経験したのち夢だった料理人の道へ。

ミシュランの星を持つ日本料理店で修行を積みました。

そして今回、遠野市のプロジェクトを知り思い切って応募しました。

うれしい気持ち半分と決まっちゃったなという気持ちが半分。両親も年だし自分自身も年齢的に今から全然知らない所に行くことに対する不安もあったので。

それでも自分の店が持てるチャンスだと考え遠野に来る決心を固めたのです。

八重樫海人さん

この日、新たに移住をするメンバーが引っ越してきました。

家賃を抑えるために藤田紘子さんとシェアすることにしたのです。

八重樫海人さん(30歳)。東京のIT企業に勤めていました。しかし、マニュアル通りを求められる仕事に疑問を感じていたといいます。

「自分だからできることをしたい」ということはあって、そういうのは大きい組織の中だと難しいので、こっちに来て自分にしか残せないものを残したい。

八重樫海人さんが担当するのは町の特産品であるどぶろく。これを全国に発信するプロジェクトを始めます。

期待

藤田紘子さんのカフェ。工事は着々と進んでいました。

カフェの向かいにある140年続く和菓子屋さん。中ではこんな会話が、

何なさる方なの?ここは?

あそこはカフェになるんですよ。

とういことは人が出入りするの?

「カフェができるのは?」

いいことですよ。特にここは人通りがないから。

後継者がどんどんいなくなるもんね。

本当に寂れて寂れて。これからもどうぞ遠野を救ってください。

移住者が立ち上げるプロジェクトに期待が寄せられています。

観光客をもっと遠野市で誘客できれば、まだまだやれる可能性はある。

福泉寺

福泉寺は市内にあるお寺。檀家の人達が集まり法要が行なわれていました。

その中に藤田紘子さんの姿がありました。

藤田さんっていう方なの。

女性たちが20人ほど集まり食事の準備中。藤田紘子さん、地元に溶け込むチャンスと考え手伝いを申し出たのです。

もちろん料理の腕には自信があります。早速、声を掛けます。

あっちにあるお豆腐、全部切っていきますか?

あの人たちが切るところだから、奥に行って昆布を盛っているところを見てきて。

言われたとおりに行ってみると、すでに十分な人数が。入るスキが見つかりません。

会話にもついていけず輪に入れません。

すると藤田紘子さん、ようやく仕事を見つけました。皿洗いです。少しでも役に立ちたいと必死でした。

休んだほうがいいですよ。

大丈夫ですよ。

疲れるよ。

一生懸命働く姿が目に留まったようです。見ていないようで見ています。

普段は何をしているんですか?

時計店の跡にお店ができるのでお店で出すメニューを考えたりとか。

ずっと遠野にいたわけ?

9月から遠野にいて。

藤田紘子さんも積極的に話します。

独身だって。誰か紹介してやって。

そっちですか。

地元の人との距離が少し縮まったようです。

引き渡し

11月中旬。カフェの改修工事が終わり店が引き渡されました。

店内は木の温もりが感じられる落ち着いた空間です。観光客だけでなく地元の人たちの憩いの場にしたいという想いもあります。

藤田紘子さんが自分の足で集めた遠野の食材も揃いました。佐々木フキさんのリンゴもあります。

オープンまで2週間。メニュー作りを急ぎます。

すると本来の料理人の顔になっていきます。

袴田大輔さん

一方、他のメンバーも動き出していました。

ユニクロの店長をしていた袴田大輔さん(29歳)。この町で地ビールを作る責任者に選ばれました。

ビールを飲みたいために遠野に行くみたいな。そうやってどんどん人を呼び込んで町を面白くしていけたらと思う。

町を見渡せば至るところにホップ畑があります。

遠野産のホップは大手ビールメーカー、キリンビール株式会社も使っています。

袴田大輔さん、今年中には町に醸造所を作る予定です。

この日はホップの生産者を訪ねました。

袴田大輔さん、年間を通して観光客にアピールするための様々なアイデアを温めていました。

ホップの成長とともに醸造所のできる過程を見学したり、見学者と一緒に内装をやったり。

いいね。内装やったり。

都会からの移住者と地元の人が組むことで寂れていた町が大きく変わろうとしています。

コモンズカフェ

12月1日、カフェがオープンする日を迎えました。

藤田紘子さん、お客様が来てくれるか緊張した様子です。

他のプロジェクトのメンバーが手伝いに来てくれました。さらに地元の人から思わぬラッパのエールが届きます。この町にとってカフェができることは一大ニュースなのです。

開店すると次々にお客様やって来ました。多くの人がカフェのオープンを心待ちにしていました。

早く来たいって思いながらワクワクして今日来た。入った瞬間、すごく素敵。

夜、営業している店が少ないため午前11時30分から午後9時まで営業することにしました。

遠野の食材を使った料理のお披露目です。どんなメニューを用意したのでしょうか?

遠野産の野菜をふんだんに使った「週替りプレートランチ(1,200円)」。サラダやかぼちゃの煮物など素材本来の味を上手に引き出しています。

単品のメニューも充実。おすすめは薬膳カレー(1,000円)。6種類の野菜を5時間以上かけて煮込んでいます。あの佐々木フキさんのリンゴが隠し味。

抜群。遠野でこういうおいしいカレーが食べられるとは。

手間ひまかけた料理はどれも好評です。

なかなか遠野では食べられない。

リピーターになる。地元産を使っているのがうれしい。

夕方になると中学生の姿も。

俺、ウーロン茶のアイス。

若者の姿があるだけでなんだか活気が生まれます。

こういうティーの店に行ったことがない。良かったです。次も来たくなりました。

この日の来店客は40人以上。藤田紘子さんもホッとしたようです。

活気を失っていた商店街に明かりが灯りました。

岩手県遠野市、商店街にカフェがオープンしました。

2週間後、営業前に訪ねてみると、大阪から移住し店を切り盛りする藤田紘子さん、元気がありません。

結局、休みが全然ない状況なので。一人でやるとなるとやっぱりきついなというのはある。

夜9時の閉店後も翌日の仕込みに追われます。このところ店に泊まり込みで睡眠もままならない状況でした。

店を続けていくためにも正式にアルバイトを雇うつもりです。

ある日の夜、カフェに大勢の人が集まっていました。藤田紘子さん、商店街の人を招待したのです。

お客様の笑顔を見れば苦労も忘れてしまうようです。

しかし市からの支援は3年で終わります。住民もそのことを気にかけていました。

新しい人が来るのも、それはそれでいいんだけど出来上がって、また出ていかれるのは寂しい。それだけはお願い、いてちょうだい。

せっかくここでご縁ができたので

知らない町で暮らし始めた藤田紘子さん。彼女を必要としている人たちがここにはいます。

一緒に移住してきた仲間たちが労います。

藤田紘子さん、これからも店を続けていく覚悟です。

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