[ガイアの夜明け] 暮らしに潜む「危機」を救う!~老朽インフラと闘う技術~(2)

暮らしに潜む「危機」を救う!~老朽インフラと闘う技術~

株式会社特殊高所技術

大阪の港に架かる巨大なアーチ橋「千歳橋」。全長1キロ、14年前に開通しました。

そこにやって来たのは株式会社特殊高所技術の面々。

今日は海をまたぐこの巨大な橋の裏側を点検するといいます。

海面から30メートル、作業車も入れないため点検するには人力しかありません。

順調に降下、橋の裏へと辿り着きました。

橋の裏は太い鉄骨が交錯しているだけ。人が歩ける足場はどこにもありません。鉄骨に付けたクランプと呼ばれる道具に全体重を預けます。

忍者さながらの動き。

気になる場所はカメラで記録します。人間が近づくからこそ見落としがちな損傷まで発見できるのです。

株式会社特殊高所技術が点検するのは橋だけでも全国で年間約650ヶ所。3年前の5倍に急増しています。

きっかけは国が設けた点検基準。笹子トンネルの事故を受けて5年に1度、人が近づいて点検することが義務化されたのです。

モロッコ

アフリカ・モロッコ。

そこに株式会社特殊高所技術の和田聖司社長の姿がありました。

立派に整備された高速道路。モロッコでは25年前から本格的な整備が進められてきました。

僕らが知っているアフリカというよりヨーロッパ寄り。

一緒にやって来たのは阪神高速道路株式会社の国際室、西林素彦さん。

高速道路ネットワークとして完成されて維持管理の時代に入っている。

2016年に完成した全長1キロ、高さ200メートルを誇るアフリカで最も高い橋です。

実はモロッコである取り組みが始まろうとしていたのです。

首都ラバトにある国営高速道路会社「モロッコ高速道路会社」の本社。

和田聖司社長と西林素彦さんが会議に参加していました。

モロッコの中でも特に高い橋は特殊高所技術がないと近寄れない。

彼らが管理する橋などの点検のために阪神高速道路株式会社や株式会社特殊高所技術、そしてJICA(国際協力機構)に支援を求めてきたのです。

この技術移転の依頼を和田聖司社長は引き受けることにしました。

海外で技術を広めれば将来的に海外の人材で国内の人手不足を補えると考えたからです。

外国の人を受け入れるのは難しいかもしれないけど、僕らが育てた何代も先の人たちが日本の維持管理を助けてくれるのは理想。

研究生

2016年8月、関西国際空港。そのモロッコから初めての研究生が3人やって来ました。

100人以上の候補者から選ばれた精鋭たちです。

京都にある株式会社特殊高所技術の本社。

2ヶ月に渡る研修が始まりました。

教えるのは技術部長の山口宇玄さん(40歳)。株式会社特殊高所技術の創業メンバーの一人です。

まずは基本の動作、ロープの登り方を教えます。素早い動きに魅入っています。

5時間ほどの講習の後、用意されたのは天井に吊るされた滑車。その先には100メートルのロープ。

3人が一斉にロープを登り始めました。100メートルのロープ登り、新人が初日に必ずやる訓練です。

ハイペースで登るのはヤシーニさん、一番若い30歳。負けじと登るのは1歳年上のエルムクニさん(31歳)。

一方で最年長50歳のエディーニさん、かなりきつそうです。なんとさっさと辞めてしまいました。

今日できないと明日もできないし1ヶ月たってもできない。

疲れたから明日やるよ。

水泳でもバタ足で水を前に蹴る感覚は教えてもらってもなかなか分からない。あれに近いかもしれない。

結局この日、100メートルを最後まで登りきったのはヤシーニさん一人だけでした。

翌日、この日は高さ12メートルの訓練棟でのトレーニング。早くも3人に大きな差が表れていました。

前日100メートルを登りきったヤシーニさん、うまく体を預けロープを的確に操っています。

一方、途中で諦めた2人はロープを登ろうとしてもなかなか上に進むことが出来ません。

5メートルも登らないうちにバランスを崩し身動きできなくなりました。

山口宇玄さんが全員を集めました。

60%でできるとか70%でできるとかではダメ。100%できないと皆さんの安全性を確保できない。いい加減にやらない。「これくらいでいいだろう」という気持ちが安全性を損なっていく。

株式会社特殊高所技術は創業以来、落下事故ゼロ。安全であることが技術の要なのです。

初めての日本で肉体的にも厳しい訓練。前途多難です。

仲間

9月、京都の株式会社特殊高所技術。

うだるような残暑の中、点検技術を学ぶモロッコの研修生3人の訓練が続いています。

昼休み、教官の山口宇玄さんがキッチンに、

仕事が終わった後にスーパーに行って材料を買い出しして、家の近くにイスラム教徒用の鶏肉を置く店があって。

前の晩から仕込んだという洋風の肉じゃがです。

イスラム教の戒律があるため食べられるものが限られる研修生たち。少しでも元気づけようという山口宇玄さんの心遣いです。

山口さん、とても美味しい。本当にありがとうございます。

日本人にやらせてもヒイヒイ言いながらやるトレーニングを外国から来て、自炊・洗濯・掃除も自分でやりながら講習を受けている。驚嘆に値する。

すっかり打ち解け仲間になっていました。

大詰め

いよいよ日本での訓練も大詰め。

この日の現場は高さ25メートルの実際の高速道路です。そこにはロープを自在に操るモロッコの研修生たちがいました。

1ヶ月目とは表情も大きく変わっていました。

みんな最初は軽くみていた。でも全力を出すということを学んだ。

モロッコでの訓練

11月下旬、訓練の舞台はモロッコへ。向かったのは北部にある山間部の巨大な橋。

いよいよ実践に入ります。

山口宇玄さんは、

特殊高所技術を日本で使えるのは分かっているので、モロッコが維持管理している構造物に適用できるか、その成果が得られるか確認したい。

安全に昇り降りするだけでなく、実際に点検も行います。

何か見つけたようです。

幅0.35ミリのひび割れ。日本の基準なら補修の対象になります。

ひび割れの多い場所を叩くと簡単にコンクリートが剥がれ、中から錆びた鉄筋が現れました。コンクリートの厚みが不十分なんです。

同じような問題がいたるところで。

問題だらけです。損傷がたくさん見つかりました。

明らかな不具合。特殊高所技術を使うことで深刻な事態になる前に発見することが出来ました。

訓練7日目、順調に進んでいた訓練に思わぬことが。

切られているっぽい。切られている。

前日、訓練が終わった後、吊るしておいていたロープが夜のうちに切られていたのです。

一体、何が起きたのか?

建設当時から反対派と賛成派があって住民の一部が非協力的でもめているらしい。それも含めて全部受け入れていくしかない。

それでも2週間で4ヶ所の現場を回り、多くの点検作業を行うことが出来ました。

株式会社特殊高所技術のモロッコでの第一歩が刻まれたのです。

エルムクニさんは、

スタートは成功しました。これからもっと一緒に技術を磨きたい。

山口宇玄さんは、

自分の技術が世界中に浸透して、それが受け入れられて、当然のように特殊高所技術が世界から日本に入ってくる。最終的な目標はそこになる。

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