[ガイアの夜明け] 「働き方が変わる」 人生、「再挑戦」から!(1)

シリーズ「働き方が変わる」第13弾 人生、

朋栄交通株式会社

横浜市保土ヶ谷区、この地域で営業する朋栄交通株式会社。約30台を運行する中堅のタクシー会社です。

ここで働くドライバーの一人、59歳の荒井潤一さん。ドライバー歴は2年3ヶ月。

荒井潤一さんが50半ばを過ぎてから、この仕事を始めたのにはワケがありました。

運転手になる前は社長です。資本金が2,100万円くらいの。自分が倒産させてしまった。

荒井潤一さん

荒井潤一さんは以前、大手企業とも取引のあるITベンチャーの社長でした。

しかし2009年に多額の資金を投じた事業に失敗。会社は倒産し、荒井潤一さん自身も2010年に自己破産をしました。

破産した直後はどん底。どんなじんせいになっちゃうんだろうと。

年齢的にもなかなか再就職できず、ようやく落ち着いたのが今のタクシー運転手でした。

一日おきのシフトで深夜から早朝まで働いている荒井潤一さん。

今は奥様と一緒に賃貸住宅で暮らしています。

荒井潤一さんがあるものを見せてくれました。それは自己破産が決定した際の裁判所からの通知書。家や車は全て手放しました。

家には女房や子供もいる。私だけじゃなくて、それぞれが何をやっていいか分からない状態。

3人の息子たちは今はそれぞれが社会人として独立しています。

専業主婦だった奥様の洋子さんは破産後に保育士として働き始めました。

破産と聞くと、どうやって生きていけばいいのかとよぎったけど、現実働かないとやっていけなかった。

新会社

タクシーの乗務がない日、荒井潤一さんが向かったのはあるオフィスビル。

ここのスペースだけ借りて、開発をしている場所。ここが会社。

失敗したままで終わりたくない。というのがあって、何かやってもう一度浮上したいと。

荒井潤一さんはタクシー運転手を続けながら、2012年に新会社を設立していました。

社員は荒井潤一さんとプログラマーの黒川陽平さんの2人だけ。

開発しているのは写真を自動で加工するソフトです。

画像加工ソフト

ネットショップやチラシに掲載される写真。その多くが背景から商品だけを切り抜いたものを使用しています。

現在、そのほとんどが手作業で行われています。車椅子のように形が複雑な場合、商品と背景の境目に細かい切れ目を入れるなどかなりの手間がかかります。

しかし、荒井潤一さんが開発したソフトを使うと緑だった背景から商品を自動的に切り抜くことができます。

さらに写真から電柱や電線を消したい場合、その部分を赤くマーキングしていきます。すると、まるで最初から無かったような写真になります。

荒井潤一さんはこれらのソフトを使って新たなサービスを始めようと考えていました。

しかし、

お金がない。銀行に行っても門前払い。友人・知人にも以前借りているからなかなか言いづらい。

一般社団法人MAKOTO

新たな会社を立ち上げた荒井潤一さん。

3月上旬、資金を調達するため、ある人たちを訪ねました。起業家の支援団体、一般社団法人MAKOTOのスタッフです。

そこで差し出された資料には「再挑戦」という文字が・・・

竹井智宏代表は

今回「福活ファンド」という名前のファンドを作りました。

「福活ファンド」は日本初の倒産経験者だけを対象にした投資ファンドです。

なぜ一度失敗した経営者にあえて投資しようかと考えたのか?

1回失敗して再起した人の方が黒字になるスピードが早いというデータもある。再チャレンジの仕組みが今までの日本にない。

誰もやっていないなら先鞭をつけて切り開いていこうと

しかし、実際に投資を受けるためには多くの審査や面接を乗り越えなければなりません。

私のような人間でも「成功できます」ということを見せたい。失敗している人に。

株式会社福島銀行

3月下旬、福島県。そこに倒産からの再起を目指す荒井潤一さんの姿がありました。

向かった先は株式会社福島銀行本店。

人生を掛けた大勝負に挑もうとしていました。

会議室に集まっていたのは福島銀行と起業家の支援団体、一般社団法人MAKOTOのメンバーたち。

その2社が共同で設立したのが「福活ファンド」です。

一般社団法人MAKOTOが全国の倒産経験者から事業計画を募集。一次審査を行い有望なものを最終審査にかけます。それに合格すると1人に最大1億円が投資されます。

約50人の候補者の中から荒井潤一さんが最終審査に残ったのです。

本日はお忙しいところありがとうございます。

写真の切り抜きサービスを行うライバル会社より、自分たちが開発したソフトが早く安いことを訴えます。

良質な写真にするにはコストがかかります。良質な「切り抜き」を低価格で即納できれば、お客様の問題を解決できます。

プレゼンテーションは約1時間。終わるとそのまま部屋を出され、審査の結果を待つことになります。人生の大きな分かれ目・・・

1時間半に渡る審議が終わり、荒井潤一さんが会議室に呼ばれました。果たして結果は?

投資委員会で議論して投資をさせていただくことで決定しました。

実はこの「福活ファンド」、福島を拠点にすることが条件。

荒井潤一さんのような新たな起業家を福島に誘致することが狙いでもああります。

福島銀行の眞壁孝文さんは

福島から離れていく人が多い。来る人が少ないという状況下で、一度失敗した人でもチャレンジできる土地が福島にあるんだということが少しずつ広がっていけばと思う。

チャンスを勝ち取った荒井潤一さん。

良かった。やっぱりうれしい。

あらためて同じ失敗をしないように気を引き締めてやりたいなと。

新たなスタート

4月中旬、横浜市。この日の乗務を終えた荒井潤一さん。ロッカーにある私物や制服を片付けます。

そして社長室へ。

勝手ですが、退職させていただきたいと思いまして。

差し出したのは「退職届」。最後の挨拶にやってきたのです。

関光一社長は

うちでも頑張っていただいていたので、残念だけど、そういうことであれば、ぜひこれからも頑張って。

いろいろお世話になりました。ありがとうございました。

その夜、今後のことを話し合う荒井さん夫婦の姿がありました。

本社移転して会社が福島の会社になる。

今年は行ったり来たり。

奥様は

失敗はできないから。

自分のためでもあるけど、みんなのためでもある。

保育士として働く奥様は横浜に残ります。

6月、福島県郡山市。ここで福島での生活が始まります。1DKで家賃は3万2,000円。

34年ぶりですね。こういう所に1人で暮らすのは。

荒井潤一さんが見せてくれたのは福島銀行の通帳。「福活ファンド」から当面の資金として1,000万円が振り込まれていました。

クラウド型全自動切り抜きサービス

その資金を使って始めたのがネット上で画像の切り抜きを請け負うサービスです。料金は1枚10円からですが、最初の1ヶ月は無料で受け付けます。

その間に、できるだけ多くの業者にメールを送りサービスを知ってもらう計画です。

スタートが勝負。1年して余裕が出たら広い所を借りて女房を呼ぶとか考えられるようになりたい。

6月中旬、荒井潤一さん東京へ。

訪ねたのは写真スタジオ、メールに返信があったところに営業を掛け、ソフトの説明をしていきます。その後もネットショップの関係者など2週間で15の業者を回りサービスを売り込みました。なにしろ営業部員は荒井潤一さん一人だけです。

福島に戻った荒井潤一さん。

この日の夕食はコンビニで買ったのり弁と漬物。食事をしながらメールをチェックします。すると

思ったより少ないなという感じ。反応が。

すでに500社以上にメールを送りましたが、その1割ほどしか返信がありません。

今、営業は私1人だけ。何か別の手を打たないといけないかなと。

荒井潤一さん、早くもピンチです。

サムライアイランドEXPO

6月下旬、東京・品川区。

そこに倒産からの再起を掛ける荒井潤一さんの姿がありました。

国内外のITベンチャー約70社が出展するイベント会場です。周りは若い人ばかり、その中で荒井潤一さん、自社で開発した画像処理の技術をアピールすることにしたのです。

すると早速、興味を示す男性が現れました。会社のホームページの編集を担当しているといいます。その場で切り抜きを実演すると

それで切り抜けるんですか?すごいですね。それは面白いですね。

ネットで不動産情報などを発信する会社の女性。興味を持ってくれたのは表札など個人情報の部分を消すことが出来るサービス。

ここ消したいとやると全部消してくれる。

この写り込みとかはどうやって?

ソフトが計算する。

女性は

邪魔なものが入ってきて、いい写真だけど使用しないことがあった。これだと時間がかからずにできそう。

その後も、様々な企業が荒井潤一さんのソフトに興味を持ってくれました。

文面と写真では全然違う。見せると伝わるので。

こういう所で出すと思わぬ人が来て、今までとは違う展開になる。

ヤフー株式会社

東京・港区。荒井潤一さんにいきなり大きな話が舞い込んできました。

向かった先はあのヤフー株式会社の本社。

対応してくれたのはヤフーショッピングの担当者、大手智彦さんです。

38万店舗、2億商品を扱う巨大ショッピングサイトが荒井潤一さんのサービスに興味を持ち、話を聞いてくれることになったのです。

写真、すべてのコストを安く。納期においても他社を圧倒できる。

こういうサービス。うちにはない。皆さんアプリなどでせっせと切り抜いている。各自のストアがやっている。そういう意味では革新的。

ショッピングに出展するストアにはいいサービスではないかと。値段のメリットもあるので、前向きに検討させてもらいたい。

ヤフーショッピングのパートナー企業になるため、話し合いを進めていくことになりました。

復活のチャンスをもらい、新たな道を歩み始めた荒井潤一さん。

本当のスタートはこれから。商売をやっていけると胸を張って言えるようにすることが恩返しになる。

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