アメリカの雑誌「TIME」が選ぶ毎年恒例の今年の人。
女性たちが表紙に載っていますが、今年選ばれたのはサイレンスブレイカーズ。沈黙を破ってセクハラ被害を告発した人たちです。
アメリカでは今、セクハラ行為を糾弾する動きが広まっていてハリウッドの大物プロデューサーから大物政治家まで要職を追われた有力者は50人近くに上っています。
今やアメリカを大きく揺るがしているこの告発の裏側を取材しました。
#MeToo運動
内田広大記者、
ニューヨークの中心部、セントラルパークの直ぐ側に来ています。こちらではセクハラ被害の防止を求める集会が開かれています。
集まったのは過去にセクハラ被害を受けた女性やその支援者です。
女性たちが声を上げるきっかけとなったのは、ツイッターで「#metoo」のハッシュタグを付けてセクハラ被害を告発する運動です。
10月中旬にハリウッド女優、アリッサ・ミラノさんの呼び掛けをきっかけに世界85ヵ国以上に広がりアメリカでは大きな社会問題に。
この運動をきっかけに著名な司会者のチャーリー・ローズ氏や与野党の議員も相次いでセクハラ被害を告発され番組打ち切りや議員辞職に追い込まれました。
この集会の主催者は「SNSの力が社会を動かした」と強調します。
主催者のアンマリー・ハウバートさんは、
SNSが人々を団結させました。仲間の存在をSNSで知り、告発する勇気を与えられました。
トランプ大統領
セクハラを糾弾する矛先はホワイトハウスにも…。
トランプ氏はじつに18人の女性から過去のセクハラ行為を告発されています。
告発した女性の1人を訪ねました。
ニューヨークに住むジェシカ・リーズさんは1979年、飛行機の中で隣り合わせたトランプ氏から性的被害を受けたと主張します。
窓側に座ったその男性は「ドナルド・トランプ」と名乗りました。彼は突然、私に飛びつきキスをしようとしました。そのたと彼の手が私のスカートをまくりあげました。
声を上げることもできず、席を離れたというリーズさん。
周りの乗客は誰も助けようとはしなかったといいます。
私は誰にも言わなかったし、何も考えようとしませんでした。トランプ氏が去年の大統領選に出馬すると知るまでは。
取材の2日後の12月11日、リーズさんは記者会見で議会に調査を求めました。
これに対しトランプ大統領はツイッターで、
会ったこともない女性に話をでっち上げられ嘘の告発をされた。フェイクニュース(嘘)だ。
と告発を否定しました。
アラバマ州上院補選
そうした中、12月上旬の南部アラバマ州の上院議員補欠選挙ではセクハラ問題が争点となりました。
与党共和党のムーア候補に数々のセクハラ疑惑が浮上したもののトランプ大統領は支持を表明しました。
トランプ大統領は、
ムーア候補に投票しよう。
結果はムーア候補が敗北。共和党は保守王国のアラバマ州で25年ぶりに議席を失ったのです。
グロリア・オールレッド弁護士
今回、ムーア候補を厳しく糾弾したのは人権派弁護士のグロリア・オールレッド弁護士です。
過去には故マイケル・ジャクソン氏やタイガー・ウッズ氏などを相手取った訴訟で知られています。
そのオールレッド氏がアラバマ州での選挙の翌日、テレビ東京の単独インタビューに応じました。
アラバマ州で勝利したことは非常に重要です。セクハラ行為を告発されてもトランプ氏は大統領になれたので、ムーア候補も「否定すれば十分だ」と考えたのかもしれませんが、女性の訴えが有権者に届いたことを私はうれしく思います。
オールレッド氏はトランプ大統領に対する訴訟も手掛けていて今後もこの問題を厳しく追求していくと強調しました。
力には力で対抗し声を上げる必要があります。女性は長い間、非力でしたが黙って苦しむ時代は終わったのです。女性たちはもう黙っていません。
これに対し共和党に近い立場を取る弁護士はオールレッド氏の取り組みには政治的な狙いがあると指摘します。
共和党に近いマイク・サーノビチ弁護士は、
彼女は民主党の活動家です。共和党を攻撃するためにセクハラ問題を利用しているのです。
2018年には中間選挙が控えていて、その争点となる可能性があるセクハラ問題。
有力者を糾弾する動きは今後も続きそうです。