意外な国との連携が日本の資源開発を前進させるかもしれません。
氷のような塊が燃えています。石油に代わるエネルギー源として注目されているメタンハイドレートです。
レアアースはスマートフォンや電気自動車などハイテク機器に欠かせない原料です。
実はこれらは日本の近海にも存在していて、日本列島周辺にはメタンハイドレート、南鳥島周辺にはレアアースを含むレアアース泥があることが確認されています。
ただし、これらを海底から取り出す技術や人材が足りていません。手付かずの状態が続いています。
そこで政府は海洋開発技術者を2030年前に現状の約2,000人から1万人に増やす目標を掲げていますが、ただ実際には育成するノウハウが不足しているのが現状です。
そこで今注目されているのがイギリス北部のスコットランドです。
ここに一体どんな打開への道があるのでしょうか?
The Underwater Centre
[blogcard url="https://www.theunderwatercentre.com/"]
イギリス北部、スコットランド。フォート・ウィリアム、穏やかな入江に世界有数の施設があります。
ここは恐らく世界最先端の施設。
施設の名は「アンダーウォーターセンター」。
海中での建設作業にあたるダイバーなどの訓練を行う特別な施設です。
気温0度の中、次々と海に潜っていくダイバーたち。
醉心メートルで行われていたのは金属を溶接する訓練。
水上では教官が作業を見守っています。
次の溶接場所に移動して。
分かりました。
数十メートルまで潜る海底での作業は死の危険と隣り合わせ。
豊島晋作記者、
こちらでダイバーたちがどのくらいの深さにいるのか、ダイバーの状態をチェックしていて、緊急の場合に備えてダイバーが待機しています。
こうした安全対策のコストも含め、訓練費用は通常3ヶ月で約230万円。高度な訓練は3週間で同じく230万円と高額です。
通常 | 3ヶ月 | 230万円 |
高度 | 3週間 | 230万円 |
それにも関わらずここには世界中から志願者が集まってきます。
訓練生は、
イタリアから。
シンガポールから来た。
ハンガリーの訓練生は、
働いて貯金してクルマも売り払ったよ。熟練ダイバーになればたくさん金が稼げる。
世界中で海洋開発が進む中、能力によってはなんと1日40万円以上稼ぐダイバーもいるといいます。
アンダーウォーターセンターのスティーブ・ハム氏は、
オックスフォード大学やケンブリッジ大学の卒業生と同じくらい金を稼げる。
無人潜水機
この施設ではダイバーの訓練に加え、近年利用が拡大している無人潜水機のテストも行っています。
世界中のメーカーがテストを申し込んでいて、日本の川崎重工が作った無人潜水機も2017年にここで本格的な水中試験をクリアしました。
ロバート・ゴードン大学
世界有数の北海油田を有するスコットランドは海洋開発に関わる企業、技術、そして人材が集まっています。
北部アバディーンにあるロバート・ゴードン大学には海洋開発の専門コースがあります。
キャンパス内には海上の原油掘削施設を再現した巨大なシミュレーターもあります。
豊島記者が試しに操縦してみると、
爆発したみたいです。
なんと爆発事故を起こしてしまいました。
やはり熟練した技が必要で操作はかなり難しい。
ロバート・ゴードン大学のフィル・ハザード教授は、
ここに座って原油を掘るには5年か10年はかかる。我々は人材を育てている。
SUBSEA EXPO
このアバディーンで先週、ヨーロッパ最大の海洋開発の商談会「サブシー・エキスポ」が開かれました。
約150の企業が出展、海での資源開発は毎年、世界で約30兆円が投資される成長市場だけに海上は熱気に包まれています。
その海上にスコットランド企業の担当者と話す日本人女性の姿が…
将来的なビジネスパートナーを探している。
中尾真美さん、元は日本の大学職員でしたが一念発起しロバート・ゴードン大学で海洋開発を勉強、スコットランドで海洋開発の調査を行う企業を立ち上げました。
あえて日本ではなく、スコットランドを選んだのはこの分野で最もチャンスが多いと考えたからです。
海洋開発関連企業「リゴカル」の中尾美穂さんは、
海洋開発の企業が世界中から集まり、ノウハウも技術もかなり成熟している。ビジネス参入しやすい環境が日本より整っている。
千代田化工建設株式会社
[blogcard url="https://www.chiyodacorp.com/jp/"]
大企業も動いていました。
千代田化工建設の社員。陸上のプラント建設の大手の千代田化工は2013年にスコットランドの海洋開発会社「xodus(エクソダス)」を買収。
陸から海へのシフトを加速させています。
エクソダスはすでに日本近海でのメタンハイドレートの調査で実績をあげています。
千代田化工建設の高木憲三さんは、
これまで千代田化工になかった技術を学べることは非常に大きい。日本近海の海洋資源開発に生かせると信じている。
日本の技術をスコットランドに!共同開発を進めるある事情とは?
豊島記者、
一方で自分たちの技術をスコットランドに売り込もうという動きも見えてきました。
自社の無人潜水機をアピールする三菱重工。
日本近海で津波センサーを設置しているNECあ海底での情報収集の機器を売り込みます。
NECの米崎義高さんは、
ともに世界一を目指しましょう。
実は彼らの真の目的は現地企業と共同で技術開発をすること。
日本財団とスコットランド自治政府は総額20億円を援助し、共同開発を促しているのです。
日本近海の資源開発は加速すると期待されています。
日本にはプラントも専門分野もない。今回は良いチャンスを得た。
スコットランド企業の反応は上々です。
実はスコットランド側にも日本と協力したいある事情があります。
スコットランド国際開発庁のスコット・ウィルソン氏は、
北海油田でとれる原油の量は減っていて、私たちは将来に備える必要がある。世界市場で生き残るために日本の技術力は魅力的だ。
原油が底をついた時に備え、自分たちの経験と日本の技術で今後新しいビジネスにつなげる考えです。
スコットランドは日本にとって資源開発の良きパートナーとなるのか?