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[WBS] [新・ニッポンの素材力]世界最細の「繊維」…その実力!

2018年3月20日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

1本に見える糸ですが8,630本の繊維でできています。

現在、商業用として生産されている長い繊維の中では「世界一細い繊維」と言われています。

今、この細い線から次々と画期的な商品が生み出されています。

帝人株式会社

[blogcard url="https://www.teijin.co.jp/"]

大江麻理子キャスター、

繊維大手の帝人です。今回の素材はこちらで開発されたものです。

出迎えた女性が世界一細い繊維、「ナノフロント」を開発した帝人グループの技術主幹、神山三枝さん。

今回の素材がこちらですね。今、1本に見えている部分が1本ではない?

ナノファイバー8,360本の集合体。

商業用としては「世界一細い」繊維。

電子顕微鏡で見てみると1本に見えていた糸の中にいくつもの繊維が入っているのが分かります。

一体どうやって作られているのでしょうか?

ナノフロント

愛媛県松山市にある帝人の生産工場。

帝人フロンティアの機能ファイバー工場、小西正洋工場長、

ナノフロントの原料になります。

ナノフロントの原料はペットボトルなどにも使われている普通のポリエステルです。

それを繊維を作る機械に流し込みます。さらにもう一つ、特殊なポリエステルも流し込み熱で溶かします。

2種類のポリエステルは液体となり独自に開発された金型を通ります。

糸を出すための金型を組み上げるところが一番の肝になる。

この金型に帝人の技術が詰まっているため詳しくは企業秘密ですが、実は金型の中には小さな穴があり、さらにその穴の中に836のとても小さな穴が空いているといいます。

その836の穴をポリエステルの液体が通ると金型から出てくる時には1本の糸となって出てくるのです。

1本の中に836入って、その1本1本が「ナノフロント」。

糸を断面図にすると繊維となるポリエステルが特殊なポリエステルに覆われています。その糸を10本分、1つにまとめます。

そうすると、その1本の糸には8,360本もの繊維が入っていることになるのです。

そして、それをアルカリ液に浸すと特殊なポリエステルの部分だけが溶け出し、8,360本の繊維だけが残ってくっつきます。

これがナノフロントです。

今までの細い糸だと、糸の状態で細くしなければならなかった。非常に難しかった。ナノフロントはこの中に細い糸を内在させるので生産工場としては工程が楽になる。

こうした製法によって世界一細い繊維が簡単にできるようになったといいます。

ナノフロントの感触は?

湿っているのかなと感じるくらいしっとり感があります。触り心地は少し引っかかりがあるような。

ナノフロントのメリット

細いとどんなメリットがあるのでしょうか?

神山さんは、

滑りにくい。

ナノフロントで作った靴下と普通の靴下で滑りにくさを比べてみると、

反復横跳びをして靴下の滑りにくさを確かめてみます。

まずは普通の靴下。

ちょっと滑る。グッと踏み込んだ時に外側の足が…

続いてナノフロントの靴下。

足の裏がナノフロントの靴下。

グリップが効きます。全く滑らないわけではないですが。

このようにナノフロントは滑りにくいという特徴があります。

その滑りにくさに目をつけたのが大手家具チェーンのニトリ。

株式会社ニトリ

[blogcard url="http://www.nitori.co.jp/"]

掛け布団カバーにナノフロントを採用しました。

布団カバーの内側にある白い部分がナノフロント。それによってカバーの中にある掛け布団がずれにくくなるといいます。

国立大学法人浜松医科大学

[blogcard url="https://www.hama-med.ac.jp/"]

さらに浜松医科大学の針山孝彦教授はナノフロントを使って画期的な手袋を開発しました。

どんどんめくりやすくなる。

手袋をしていても簡単に本がめくれます。

針山教授がこの手袋を開発した理由は、

指紋をなくして日常生活に困っている人がたくさんいる。

病気や仕事などで指紋が薄くなってしまった人たちのためにナノフロントを使ってすべりにくい手袋を開発したのです。

ナノフロントは毎年3つ以上の商品を生み出し、ここ5年で売り上げは5倍に伸びました。

海南華盛天涯水泥有限公司

[blogcard url="https://www.hscement.com/"]

大気汚染が深刻化する中国でも世界一細い繊維が活躍しています。

海南島にあるセメント工場。毎日、粉塵が舞い散っています。

この工場の屋上にはナノフロントを使ったフィルターが設置されています。

工場の中で排出された粉塵をナノフロントを使ったフィルターでろ過して外に漏れないようにしていました。

フィルターを持ち上げてみると外側に大量の粉塵が付いています。つまりそれだけ、粉塵が粉塵が外に漏れるのを防いだといえます。

金衛民工場長は、

効果は抜群、我々のグループ会社全体が使っている。

新しいナノフロント

そして2月、帝人が新たに発表したのが新しいナノフロント。

従来のナノフロントと比較すると3分の1以下の細さ。

700ナノメートル
200ナノメートル

それなのに、なんと1本の中に数万本の繊維が入っているといいます。

これまでよりさらに目が細かいフィルターが出来るので、より細かい粉塵やホコリなどを防ぐことが出来ます。

神山さんは、

細くて強い繊維を作っていくことは命題中の命題。どこまで繊維を細くしていけるのか、やれるところまで突き詰めてみよう。

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