[ガイアの夜明け] 「常識破り」で市場を拓く!(2)

「常識破り」で市場を拓く!

宮ヶ瀬ダム

神奈川県西部の山の中。次々と人が集まってきました。

ここは日本一の集客を誇る宮ヶ瀬ダムです。

その目玉が、

観光放流を開始します。

1秒間に流れる水はなんと30トン。迫力の放水を水しぶきがかかる至近距離で見ることができるのです。

圧倒的な水の量が感動する。

このダムには観光客を呼ぶ、もうひとつの名物があります。

宮ヶ瀬ダムのダムカレーでございます。

宮ヶ瀬ダム放流カレー、1杯1,000円。湖に見立てたカレーのルーをご飯のダムが塞き止めています。多い日には200食近く売れる大ヒット商品です。

放流って面白そうだなと、やりたいって言っていたのでやらせてあげたいなと思って。

やっぱりダムに来たらダムカレーって感じ。

株式会社タカラトミーアーツ

レストランの一角でカメラを構えているのはタカラトミーアーツの加藤しずえさん(40歳)。

ダム観光ブームの中、あえてダムではなくダムカレーに目を付け新たなガチャ商品を開発しようとしていました。

「何でダムなのにカレー?」とか、逆に「知っている」とか「そうきたか」というような、モチーフとして面白い。

加藤さんは美術大学を卒業後、おもちゃメーカーでクレーンゲームの景品作りに携わってきました。

タカラトミーアーツに入社したのは11年前、以来、大人心をくすぐるガチャ商品作りに取り組んでいます。

新商品開発会議

東京・葛飾区。住宅街の一画にタカラトミーアーツの本社はあります。

この日は月に一度開かれるガチャ商品の開発会議。ガチャ商品(カプセルトイ)の市場規模は約280億円。

タカラトミーアーツはその中でトップシェアを争っています。

少子化は深刻な問題、主力のガチャ事業をさらに成長させるためには大人向け商品の開発が必須なんです。

いよいよ加藤さんのプレゼンの番です。

ダムに行ったらダムカレー!

ダムじゃないの?

意外な提案に参加者は怪訝な表情。そこでとっておきのデータを、

宮ヶ瀬ダムは年間130万人超えの集客がある。新しいガチャのマーケティングを模索したい。

ガチャ商品のヒットの目安は約20万個。企画の提案は7割がボツとなる狭き門です。

いいんじゃないでか。スーパーチャレンジな気はしますけど。

なんとか難関を突破した加藤さん。後は結果を出すしかありません。

ここからスタート。ほっとしたぐらいで、現実に戻るかもしれない。どうやって売るんだって。

株式会社松田モデル

東京・江戸川区。加藤さんがやってきたのはフィギュアなどを製造する松田モデル。

ダムカレーのガチャのサンプル作りを依頼しに来たのです。

店で使われている実際の皿や写真を渡し、イメージを伝えます。

いかに美味しそうかっていうところが最優先で作れれば。

ここからが職人の腕の見せどころ。製作部の安齋小百合さんはロウで作った部品の表面をキリを使って細かく掘り始めました。

アルコールランプで金具の先を温め、ロウを溶かして先程掘った表面に付けていきます。

部分部分立たせてあげると、お米っぽい雰囲気が出るといいなと。

今度は野菜。ハンダをガーゼで包みロウの表面を叩くと茹でたジャガイモのザラザラした質感も表現できるといいます。

こうして丸2日かけて細工を施していきます。

一粒ずつ方向にもこだわったご飯は素晴らしいデキです。この後、数日かけて色を付けていきます。

国土交通省 利根川上流河川事務所

一方、加藤さんはダムカレーのラインナップを充実させようと奔走していました。

この日はダムに詳しい専門家から話を聞きます。

ダム観光ブームの仕掛け人、国土交通省の三橋さゆり事務局長。そして全国2,000ヶ所以上のダムを巡ったダム愛好家の宮島咲さんです。

観光客を呼んでいるっていう点で考えれば、東が宮ヶ瀬ダムだったら、西は日吉ダムです。

北海道ではこれですね。豊平峡ダムですね。6月から毎日観光放流をしていて、山がすごくきれい。

加藤さん、何かヒントは掴めたのでしょうか?

丸山ダム

岐阜県の山中。加藤さん、専門家から話を聞いて気になったダムの一つを訪れていました。

木曽川を塞き止める丸山ダムです。完成から60年経つ歴史あるダムですが最近特に脚光を浴びています。

実はわずか50メートルほど下流に新たな巨大ダムが建設されるのです。数年後には丸山ダムを含む一帯が湖に沈んでしまいます。

その姿を脳裏に焼き付けようと観光客が増え始めていました。

ひだまりキッチン Soramame

こちらは近くにあるダムカレーのお店。

ルーを自分で注ぐスタイルなどさまざまな趣向が人気です。

名付けて「丸山・新丸山コラボダムカレー(800円)」。奥のご飯の山を丸山ダム、手前をこれからできる新丸山ダムに見立てた珍しいカタチです。

トーストで作ったゲートを開くと放流。今度は新丸山ダムが塞き止めます。

店主の長棟勝彦さん、

放流というか「放ルー」です。丸山ダムを沈めましょう。60年間お疲れ様でしたって

まずは丸山ダムを崩してから食べるのがこの店の流儀。こだわり一杯のダムカレーです。

いま注目されている。丸山ダムが沈んで新丸山ダムになるというところ。遊びの要素もあるカレーだったのでガチャの種類として選ぶには丸山・新丸山ダムコラボカレー、面白いかなとすごく思った。

株式会社松田モデル

新商品のサンプル制作を頼まれた松田モデル。

着色作業が始まっていました。基本の色は約10種類。どの色をどれだけ混ぜるかは経験がモノをいう世界です。

作っていたのはダムカレーの要となるルーの色。しかし、色がそっくりになればいいというワケではないそうです。

モデルペイント課の奈須雄介さんは、

実際のカレーはこの画像のルーより発色のいい色のイメージを持っているので、きれいな、美味しそうな色を目指して調色をして塗っている。

実際より少し明るめの色に仕上げるのがポイントだといいます。

細かい部分まで筆先で丁寧に塗っていきます。

完成した宮ヶ瀬ダムカレー。約30色を使い色鮮やかに仕上げた野菜。ベーコンの焦げ目まで塗り分けています。ルーに入れられたチーズはまるでとろける寸前のような仕上がり。ソーセージが抜ける仕掛けもそのまま再現しています。

出来上がった商品には自ら足を運んだ丸山ダムに、アーチ型が特徴的な愛知県の新豊根ダム、ご飯の中にハート型のルーは栃木の渡良瀬貯水池です。

ラインナップは全部で6種類になりました。

宮ヶ瀬ダム

8月16日、神奈川県の宮ヶ瀬ダム。あいにくの雨の中、加藤さんがやってきました。

完成したダムカレーガチャの先行販売を行うためです。企画提案から商品化まで約半年。

通常、デザイナーに任せるポスターまで加藤さん自ら作ったこだわりの商品です。

喜んでもらえるような商品にきちんとなっているかというところ。ちょっと不安を抱えながらドキドキしている。

観光放流が始まる時間になっても雨は上がりませんでしたが、お客様はいっぱいです。

ダムカレーを出すレストランでは設置したばかりのガチャを楽しむ人の列ができていました。

親子連れが引き当てたのはハート型のダムカレー。その精巧な出来栄えに思わずお父さんも欲しくなったようです。1回300円、何が出るのか?

本当だ。宮ヶ瀬だ。面白いと思う。

「何年ぶり?」

何年ぶりって言われても覚えていないぐらい。我々の時は10円玉2枚だった。

別の夫婦は全種類揃えようと大量に買い込みます。まさに大人買い。

そして6種類すべてガチャを並べて本物のダムカレーを楽しみます。

SNSにアップする人もいます。これでまた人気になりそうです。

大人心をくすぐるガチャ製品。加藤さんは今回のダムカレーでまた一つ開発の大きなヒントを掴んだようです。

ガチャなので何が出てくるかっていうドキドキワクワクという要素は残しつつ、買ってくれる人の思い出に寄り添うよう大事に作っていけば自然と新規ユーザーたちも、こっちに目を向けてくれる。