消費大国のアメリカでもモノを買わずにシェアする、いわゆるシェアエコノミーが拡大しています。
今回はその中でもいま急速に拡大している新しいサービスを取材したのですが、アメリカのベンチャー企業ならではの事業展開の早さにルールの整備が追いつかず混乱が起きていました。
eスクーター
アメリカの西海岸、カリフォルニア州サンタモニカ市。
美しいビーチで知られる観光地です。
その街中でいま急速に増えているのがeスクーター、電動の立ち乗りスクーターです。
利用者は、
初めて乗ったけど楽しいわ。
この辺りを移動するなら車より便利で早く着くわ。
街中の移動手段として最適。この辺で車を運転するのは大変だしね。
このスクーター、実はシェアサービス。
自動車の渋滞が世界一深刻といわれるこの一帯の新たな移動手段として一気に普及しました。
運営会社スタッフは、
アプリをダウンロードしてスクーターのQRコードを読み取ればロックを解除できます。
料金は1回使うごとに1ドルの利用料に加え、1分使うごとに15セントがかかります。
実際に乗ってみると最高時速はおよそ25キロ、フル充電で60キロの距離を走れるモデルもあります。
利用できるのは18歳以上で登録には運転免許証が必要です。
現在、主に3つのベンチャー企業がこのサービスのシェア争いでしのぎを削っていますが、その一つが2018年3月に参入したSPINという会社です。
SPIN(スピン)
スピンのユーウィン・プーン会長、
まず導入したのは中国メーカー、小米製のスクーターです。
価格も性能もシェアビジネスに最適です。
1台500ドルほどでGPSも搭載する中国製のeスクーターがこのビジネスへの参入を可能にしたといいます。
これまでに800万ドル(約9億円)の資金を調達しました。
アジアや欧州など世界の企業が私たちのビジネスに興味を持っています。
スピンは従業員30人ほどの新興企業ですが、わずか5ヶ月の間で19都市でおよそ3万台のeスクーターを可動するまでに成長したのです。
乗り捨て自由
このeスクーターのシェアビジネスはスマートフォンでサービス停止を選択すれば基本的にどこでも乗り捨て自由です。
なぜ可能なのでしょうか?
その秘密は夜にありました。
この街に暮らすスコット・ゲハートさん、ほぼ毎晩GPSの情報を頼りに乗り捨てられたeスクーターを探し運営会社に代わって回収しているのです。
このスクーターの回収で7ドル32セント(約800円)。
これは14ドル3セント(約1,550円)もらえる。
分かりにくい場所に乗り捨てられたeスクーターを回収するとその分、報酬が高くなる仕組みです。
この日は3時間ほどかけて37台を回収しました。
道にお金が転がっているようなもの。集めずにはいられないよ。
全て充電したから指定の場所に戻しますが掛かる電気代は1台あたり10円程度。
この日は2万4,000円ほどの収入が得られました。
この仕事で月に30万円ほど稼ぐというスコットさんですが先行きには懐疑的です。
稼げるうちに稼ぐよ。
このビジネスが3ヶ月で終わるのか3年続くのか誰にも分からないから。
eスクーターの問題
実は急速な普及の影で大きな問題が起きていました。
歩道を走るのは違法だぞ。危険じゃないか。
おまえは警官かよ。
私は住民だ。
歩行者とスクーター利用者の争いが絶えないのです。
一部の利用者が禁止されている歩道で走行したり、二人乗りをするなどルールを無視していることが原因です。
対策を迫られたサンタモニカ死は歩道での走行禁止を示す標識を急遽用意。
市内の全域に設置する予定です。
さらに踏み込んだのがサンフランシスコ市。
6月にeスクーターのシェアサービスを全て停止させ、街中にあったeスクーターを撤去させたのです。
サンフランシスコ市交通局のポール・ローズ氏は、
市民から危険で通行の邪魔になると多くの苦情が寄せられたからです。
ただeスクーターの台数制限など新たなルールを設けた上で8月中にはサービスを再開させたいと担当者はいいます。
公共交通の行き届かない所があり持続可能な交通手段の1つにしたい。
問題はあるものの便利さと楽しさが勝っているようでeスクーターのシェアサービスは今後も拡大していきそうです。