アメリカが駆け引きを繰り広げているのは北朝鮮だけではありません。
アメリカと中国の貿易戦争回避に向けた通商協議が19日までの日程でワシントンで開かれます。
交渉の焦点となるのが、「スマホ」と「大豆」です。
まずアメリカは国内の企業に対し中国の通信機器大手「ZTE」向けの、半導体などの輸出を禁止しました。
これによりZTEはスマートフォンの生産停止に追い込まれました。
一方の中国はアメリカ産の大豆などに報復関税を課す構えです。
今回の交渉でどこまで歩み寄れるか不透明な中、中国政府が交渉の決裂に備え着々を準備を進める実態が明らかになりました。
大豆
中国・黒竜江省の黒河市。
有数の穀倉地帯として知られます。
大きなバケツを持った農民たち。
バケツの中を覗くと大豆の種です。
農民は、
車にあるのは全て大豆の種だ。
この日はちょうど大豆の種まきの時期。
4台の種まき機をつなげた特注の機械を使い一斉に作業を行います。
中国の大豆の実に3分の1を生産するこの地でいま異変が起きています。
高偉さん(38歳)、
去年は約50万平方メートルだけど今年は約150万平方メートル植える。
「去年の3倍?」
そう去年の3倍だ。国の良い政策で補助金が多い。やる気も出る。
大豆を植える量が急速に増えているのです。
地元政府は4月末、大豆の生産拡大に向けた通達を出しました。
大豆の生産者に(667平方メートルあたり)補助金を200元(約3,600円)以上出す。
今年植える作物は必ず大豆にしろ。
農民は乗る気です。
北京支局の朱秋紅記者、
こちらに見える畑は本来トウモロコシを植える予定でしたが政府の要請で大豆に変更しました。
この地域は大豆とトウモロコシの栽培が盛んです。
土地が枯れないように植える作物を毎年変えていますが、今年は大豆を植える農民が圧倒的に多い。
高さんも今年は大豆だけを植えて年収40%増を見込んでいます。
「中国政府が急に大豆の増産を通知した理由は?」
アメリカと貿易のトラブルがあるから。自分の国の大豆が売れるからだ。
米中貿易摩擦
中国政府が生産に力を入れる大豆。
米中貿易摩擦の焦点となっています。
4月4日、中国政府の官僚は、
アメリカ産大豆・自動車・化学製品など106項目に25%の関税をかける。
アメリカは中国が貿易赤字を解消しなければ最大1,500億ドル分の中国からの輸入品に追加の関税を課す構えです。
対する中国は制裁が実施されれば大豆をはじめとするアメリカからの輸入品の関税を強化すると反発。
トランプ大統領の支援者が多い大豆農家を狙い撃ちする形です。
やる気も出るし出稼ぎの農民もみんな戻ってくる。
貿易協議
こうした中、米中の2回目の貿易協議がいよいよワシントンで開始されます。
中国側の代表は習近平国家主席の経済ブレーン、劉鶴副首相。アメリカ側はムニューシン財務長官やロス商務長官です。
トランプ大統領はZTEへの制裁の緩和を突如表明。
一方、ロス商務長官が「隔たりは大きい」と牽制するなど交渉は予断を許しません。
これに対し中国政府は
天津の港には大豆を乗せた船が来ています。トラックへの積み替え作業を急いでいます。
港にあったのはブラジル産の大豆。
中国政府はブラジル、ロシアからの輸入を増やし大豆の確保を始めています。
一方で3月のアメリカ産大豆の輸入は1年前に比べて27%減少。
大豆をめぐりアメリカを牽制し、駆け引きは激化しています。