[ガイアの夜明け] 暮らしに潜む「危機」を救う!~老朽インフラと闘う技術~(3)

暮らしに潜む「危機」を救う!~老朽インフラと闘う技術~

東京都下水道局

東京都の下水道事務所、東部第一下水道事務所。ある会議が行われていました。

昭和26年に敷設し65年経過した下水管。

参加者が真剣な顔で見つめるのは江東区内の下水道内部の映像です。

真ん中の円の中が直進方向の映像、外側は壁面を360度映し出したものです。

撮影した特殊なカメラ。人が到底入れない狭い下水管も走りながら撮影するだけで内部の状況を詳細に伝えてくれます。

ひびが入って水がにじんでいる。

都内では下水管の老朽化による道路の陥没が年間500件以上発生するなど、その対策が緊急の課題です。

老朽化が深刻なエリアは20年前から優先的に整備しています。しかし工事が完了したのは全体の約40%です。

そこで今、ある技術が注目されています。

SPR工法

実際の現場に行ってみると帯状の材料がマンホールの中へ次々と送り込まれていきます。

最前線ではたった一人が機械を操作していました。

実はこの工法、マンホールからプラスチックの帯を送り込み、螺旋状に巻いていくことで古い下水管の内部に新しい管を作っていきます。

SPR工法」と呼ばれる世界初の画期的な技術。

透明な模型を使って仕組みを見せてもらいます。

古い下水管の内側に新しい管を作っていくのです。その後、隙間にモルタルを注入して一体化します。こうすることで強度が上がりさらに50年使うことが可能になるのです。

従来の工事は道路を掘り返し、古い下水管を取り出して交換するという手間のかかるものでした。

一方、SPR工法は道路を掘り返す必要がなく、コストは2分の1、工期も3分の1で済むのです。

厄介な現場

別の下水道工事現場。交通量の多い道路をまたいだ約170メートルの工事区間です。

掘り起こすにはかなり厄介な現場です。

マンホールから中に入ってみると縦横3メートル以上の大きな下水道です。

そこにもプラスチックの材料がマンホールから送り込まれていきます。あのSPR工法です。

「ここを掘り返すのは難しい?」

非常に難しい。「SPR工法」で一気に施工できる。住民や車で通る人への影響はかなり少ない。

地下では大型の機械で新しい下水道が造られていました。

先端に取り付けられた小型のロボットが古い下水管の内側に沿って帯状に材料を巻いていきます。

材料は特殊な樹脂でできていて中央には補強材のスチールが埋め込まれています。

こうして老朽化した下水道が驚くほど早く再生されていたのです。

その工事の様子をチェックする男性。SPR工法の開発者の一人、積水化学工業株式会社の津田順さん(38歳)。

ひどいひび割れだとどれくらい?

東京都下水道局の葛西孝周さんは、

ひどい所は5ミリ。定期的に調査して悪い所は緊急の補修工事で直している。

この下水道は造られてから約50年。あちこちに大きなひび割れがあります。

このようなひびがあると、まず手作業で補修。その後、SPR工法で管を造っていく必要があります。

このままの状態で直接施工できれば、もっとスピードアップができる。強度がある材料の方が長寿命化につながる。ぜひそういう材料を開発してほしい。

こうした大きな下水道の再生にはより強度のある材料が求められていたのです。

今後開発するものは、それだけで長い期間、下水道を支える工法が必要になる。

積水化学工業株式会社

12月下旬、積水化学工業株式会社の京都研究所。

下水道再生のプロ、津田順さんはより強い材料の開発を設計チームに依頼していました。

必要な剛性を確保するには、この形状が最適。

新たに設計された材料。強度を上げるために中央にある補強材のスチールを大きくしました。

地下5メートルで震度7の地震にも耐えられる設計だといいますが、

高さは?

45ミリです。

幅は?

58ミリ。

補強材の大きさが気になるようです。

実際に試作してみて触りながら。

不安を抱えながらも試してみることに。

試作品

琵琶湖の南側に位置する滋賀県栗東市。積水化学工業株式会社の栗東工場。

この京都の研究所で設計された材料の試作品が届きました。

新たに開発された材料は従来のものに比べると補強材のスチールの大きさが際立っています。

いつものように材料を引っ張り出そうとしますがビクともしません。

材料は2メートルのドラムに巻き付けられています。これを1m30cmの下水管を想定して小さく巻こうとしているのですが補強材のスチールが硬すぎて小さくならないのです。

あまりの硬さにお手上げ。

どうするかな。ちょっと切ってもらおうか。

津田順さん、スチールに切れ目を入れるように指示します。曲がりやすくすることで小さい円に誘導してみることに。

徐々に力を加えていくと、

割れた!

スチールの周辺が割れてしまいました。

巻き出しできない。あまりにも剛直すぎる。

補強材のスチールが強すぎてうまく巻けないのです。

津田順さん、部下と戦略を練り直します。

回転体、回転体・・・。

発想の転換が必要です。

津田順さん

津田順さんは大学でロボット工学を専攻。

しかし積水化学工業株式会社に入社後、配属されたのは下水道を再生する部署でした。予想もしていなかったそうです。

下水の部署は最初は抵抗があったが、自分が作った機械で古くなった下水管がきれいに直るのは面白い。

いまや下水道再生のプロとなった津田順さん。

誇りを掛けて作ったのが不思議な形をした機械でした。

新たな機械

1月下旬、積水化学工業株式会社の栗東工場。

津田順さんの頭の中にあった新たな機械が形になりました。

材料を巻いているドラムの中に組み立てて使う回転台と呼ばれるものです。

ドラムに巻かれている材料を引き出して後ろのローラーで曲げる。

すると以前は3人がかりでもびくともしなかった材料がスムーズに引き出されています。同時に一回り小さい巻きグセも付いていました。

問題はこの先です。

さらに小さな直径1m30cmの下水管に入れるため機械に巻き付けなければいけません。

前回は割れてしまいましたが

入ってる。

これで震度7にも耐える新素材を使いこなすメドが立ちました。

このやり方であれば現場でも通用する。完成ですね。

普段はまったく目立たない下水道というライフライン。それを支える影の立役者たちです。

日常で何事もなく使っているものが急になくなるのはとても不便だと思う。それが使い続けられるのは僕らが直しているというのが大きい。そこに仕事のやりがいを感じている。

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