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[WBS] 効く抗がん剤を探す!最新「がんゲノム医療」!

2018年5月16日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなっています。

そのがんの治療がいま大きく変わろうとしています。

4月、国ががんの最新治療を受けられる病院として指定した全国111ヶ所の病院の所在地です。

その最新治療というのが「がんゲノム医療」。

遺伝子を調べて患者への最適な薬を見つけるという治療法です。

国を挙げて推進するこのがんゲノム医療、一体どのようなものなのでしょうか?

浮田一信さん

浮田一信さん(59歳)、2年半前に転職先が決まった直後に受けた健康診断がきっかけでがんが見つかりました。

すでに進行した肺がんでした。

肺腺がんのステージ4。骨にも転移していると言われて、残念でしたが「試用期間で契約終了」と言われた。体というより精神的なつらさ。

手術も放射線治療もできない状態だった浮田さん。

強い副作用が出る抗がん剤治療に挑みました。

しかし…

抗がん剤3種類を最初4回使った。

これまでに試した抗がん剤は7種類。どれも効果がありませんでした。

効くかもしれないし、効かないかもしれない。難しい。

そんな浮田さんが4月上旬から新たな治療に臨んでいます。

飲み始めたのはなんと甲状腺がんの抗がん剤。

どうか効きますように。

新たな薬を飲み初めて3週間。

妻と久し振りの外出です。

この日は薬の効果を確かめるための診察です。

国立がん研究センター中央病院の山本昇先端医療科長、

新しい薬始めましたが調子はいかがですか?

夜中の席が明らかによくなったので少しは効いている気がする。

レントゲンはどうかな?

影が明らかに薄くなっているので縮小していると思います。

3週間前のレントゲン写真。白い部分ががんです。

この日の画像では影が薄くなっていました。

わずかにがんが縮小していたのです。

まだ劇的ではない。

まだ3週間ですから。

スタートとしてはいいのではないか。

肺がんの浮田さんに甲状腺がんの抗がん剤が効くとなぜ分かったのか?

カギはがんゲノム医療。

がんゲノム医療

がんゲノム医療とはどの遺伝子に変異が起こったのかを特定し、その遺伝子異常に効く薬をピンポイントで探し出す治療法です。

これまで抗がん剤はがんの種類ごとに決められていました。

がんゲノム医療では遺伝子異常のタイプ別に効果が期待できる薬を選びます。

浮田さんは肺のがん組織を取り出し、その遺伝子を検査。

その結果、浮田さんに効く薬はこれまで甲状腺がんに使う薬だったのです。

少しとはいえ、前は悪化傾向だったので改善傾向に来たことはうれしい。

患者にとって最適な治療法となるがんゲノム医療。

ただ遺伝子検査で異常が見つかっても効く薬がまだ開発中で承認されていない可能性が現状では高いと山本医師は指摘します。

治療をやみくもにする時代は終わると思う。遺伝子異常の頻度がわかれば薬の開発のきっかけになる。

一体、なぜこのようながんゲノム医療が可能となったのでしょうか?

遺伝子検査

2003年、アメリカの国立ヒトゲノム研究所所長、

きょうは歴史的な日です。

15年前、人の遺伝子のDNA配列が世界で初めて解読されました。

解析にかかった時間はなんと13年間、費用は約3,000億円。

2011年、膵臓がんで亡くなったスティーブ・ジョブズ氏。

遺伝子検査を受けたことを自伝で明らかにしています。

この時、検査の費用は10万ドル、約1,000万円でした。

そして現在…

これが「次世代シーケンサー」。

スーパーコンピューターやAIの進歩で遺伝子のDNA配列を読み込むだけなら、たった1日でできるようになったのです。

政府は3月に閣議決定した「がん対策推進基本計画」の柱にがんゲノム医療を位置づけました。

無駄な薬の使用が減れば医療費の削減も期待できます。

厚生労働省の丹藤昌治がん対策推進官は、

将来的には標準的に行う。血液検査、画像検査、病理検査と合わせて、がんになれば誰もが受ける検査の一つとしてゲノム検査を受けて有効な治療を選択する時代が来ると考えている。

ただ現在、遺伝子検査は約50~100万円とまだ高額。

患者負担を減らすため厚生労働省は今年度中の保険適用を目指しています。

株式会社理研ジェネシス

[blogcard url="https://www.rikengenesis.jp/"]

巨大市場の誕生に熱い視線を送る企業が…

理研ジェネシスは病院から遺伝子検査を委託されています。

がんの具体的な名前は言えないが、患者のがん腫瘍の組織検体。

がん組織からDNAを抽出してどのような遺伝子異常があるか分析しています。

そのために使う新しい試薬を理研ジェネシスは国立がん研究センターと共同で開発。

NCCオンコパネルと呼ばれる検査試薬。

この薬をがん組織から抽出したDNAに混ぜることで、がんに関連した遺伝子114個だけをピックアップして遺伝子変異を短時間で見つだせるようになったといいます。

AIを駆使した分析機械が約1日かけて読み解きます。

この日、分析した患者の遺伝子の状態を見ると、

本来Aが並んでいるはずの場所にTが複数存在している。

アルファベッドは遺伝子のDNA配達。

Aが並ぶはずの列にTが混在し、異常が見つかりました。

今後、遺伝子検査の需要は広がりそうです。

理研ジェネシスの近藤直人社長は、

ヒトの遺伝子検査市場はほとんどゼロ。がんゲノム医療が始まると数年で数万人が利用する検査に急拡大すると思う。

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