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[クローズアップ現代+] 「新リストラ時代」到来!? 業績好調なのになぜ?

2016年4月14日

クローズアップ現代

突然の戦力外通告

2016年、大手製紙会社を退職した40代の男性。

工場では生産ラインの調整をまかされ、グループ会社の部長を務めるなど20年に渡って会社に貢献してきました。

公私共に安定した暮らしを過ごしていたのが突然揺らいだのは2015年のことです。

ある朝、人事部から話があると声を掛けられました。

悪いけど活用できる人材かというと、なかなか会社に残っても大変だね。君はまだ若いし外に出て行くことを真剣に考えてもらいたい。

会社は6年連続の黒字。売り上げも増え続けていました。
その最中の戦力外通告に男性は途方に暮れました。

まさに「なんで?」全く納得がいかない。

会社からは退職金の割増に加え、再就職を支援する人材会社の費用を負担すると説明されました。

整理解雇の要件

一般的に整理解雇には経営危機による人材削減の必要性、経営陣の報酬カットなどの経営努力、労働組合への説明などが必要です。

今回の男性の場合、優遇処置を提示して男性の意思で退職するように求めてきました。

会社にたいしてさらに貢献できる意識と自負はあったので、全く退職なんて考えていませんでした。

男性の子供は中学生、今後の教育費や生活費を考え退職には応じれないと伝えました。

すると男性は人事部から退職に応じない場合、「人材会社に通ってもらう」と告げられました。

グループ外でテンプスタッフ(人材会社)で「自分の働く先を見つける」のが仕事。もしかしたら接客みないなほうが向いているかもしれないし、いい機会だと思う。

男性に対して「人材会社で仕事を探すのが仕事」と命令。

まさに想像もしないような業務命令ですかね。あり得ないって即思いました。

棗一郎弁護士

労働法に詳しい棗一郎弁護士によると、このような命令は労働契約法に反していると言います。

自分の再就職先を探せというのは結局、君はもう会社を辞めてもらって他のところに行きなさい、そこを探しなさいということでうから解雇に等しい。それを表現を変えて言っているだけ。もはや退職の強制であって違法なもの。

退職勧告の対象者

王子ホールディングス株式会社やそのグループ会社の退職勧告の対象者は20~50代まで幅広く、持病がある社員やおとなしい社員など、働き方に特に大きな問題のない社員も対象に入っていました。

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業績が好調なのに退職を勧める理由

会社側は取材に応じませんでしたが、男性社員に

紙の需要がかなり減って、事業構造を変えていきましょうと、だんだん洋紙事業はシュリンク(縮小)していこうと

と説明していました。

デジタル化による紙離れや人口減少などにより今後の見通しが容易ではないというのです。

テンプスタッフキャリアコンサルティング株式会社

[blogcard url="http://www.tempcc.co.jp/"]

王子ホールディングス株式会社に対して戦力ではない社員をリストアップして退職を勧めるようにしたのが大手人材会社「テンプスタッフキャリアコンサルティング株式会社」です。

ミスマッチ社員やローパフォーマー、60歳以上の再雇用困難者などに退職をしてもらえれば経営体質を強化できるとアピール。

業績回復基調のときこそ、加算金水準を高めに設定して円満な合意退職を勧めることが有効です。

リストアップされた社員は人材会社が1人当り60万円で引き受け、職探し支援サービスを提供します。
この時、人材会社に支払われる資金の一部に国からの助成金が流れん込んでいました。

本来、職探しを支援するはずの人材会社が、逆に社員に退職を勧めるように提案することに問題はないのか、人材企業に取材を申し込みましたが企業への守秘義務を理由に断られました。

2016年3月に国は人材会社などに退職者を生み出すような提案をすることは適切ではないと通知を出しています。

厚生労働省の生田正之職業安定局長は

厚生労働省としましては積極的に退職者を作り出すようなことは職業紹介所の趣旨に反するということでダメではないかと考えています。

様々な業界に浸透

社員の退職を企業に提案する人材会社のビジネスが様々な業界に浸透していることが明らかになってきました。

2016年3月に開かれた労働問題に取り組む弁護士によって開かれた電話相談会。

人材会社で出向先を開拓することが、これからのあなたたちの業務ですという内容を示した文書を配られました。

人材会社の支援プログラムを受ける申請書が退職届になっていました。

この日は過去最高の利益を挙げた電機メーカーや製薬会社などで働く社員からも相談が相次ぎました。

多くの企業が将来を見越して人材会社と連携し一部の社員に退職を勧めていると見られています。

日本労働弁護団の島崎量事務局長は言います。

いろんな業界にわたって実際に行われていて、人材会社のほうも本当に他の社名もいろいろ相談が出てきているので、かなり数も多い。びっくりしました。

社会保険労務士

企業が第三者の支援を受け社員を退職に誘導するという動きは国家資格を持つ専門家にも広がっています。

最近、大きな波紋を呼んだ「すご腕社労士の首切りブログ」。

社員をうつ病にして罹患させる方法」などを書いていたのは社会保険労務士。

企業と労働者の双方を守るために相談や指導をするのが本来の役割です。

国はこ社会保険労務士に対してブログに不適切な内容があったとして3ヶ月間の業務停止処分を出しました。

社会保険労務士による退職の斡旋

ある社会保険労務士によって退職に追い込まれた40代の男性。

勤めていた福祉施設から退職を勧められました。
その際、同席していた社会保険労務士に次のように言われました。

ご退職という形にご同意頂ければと思うのですが。退職にご同意いただけない場合は残念ながら解雇という形になります。

その後、退職の意志はないと伝えたところ、社会保険労務士が代行して作成した文書が送られてきました。

その文書には「わたしを解雇して下さいとの要望に応じ、貴殿を解雇します」と書かれていました。

企業のリストラを代行する社会保険労務士

一人あたり40~45万。そのあたりの金額で代行しています。

この社会保険労務士によると最初は低めに設定した退職金の額を徐々に上げていくことで社員を合意に導いてくといいます。

わたしがリストラ代行ないし退職勧奨代行した場合、大体95%は成功している。

交渉時は労働者ではなく報酬を支払う企業を優先するといいます。

中立ってほとんどありえないですね。実際、依頼者(企業)だけ守ればいい。そういうふうに割りきっています。

労働移動支援助成金

社員の退職を企業に提案する人材会社のビジネスに使われた労働移動支援助成金。

労働移動支援助成金はやむを得ず失業をした方の転職を支えるために導入されました。

安倍晋三首相の言葉です。

成長企業へ失業なき円滑な労働移動を図っていきます。

3年前、国は労働者を成熟産業から成長産業へダイナミックに移動させる方針を決定しました。

その切り札として労働移動支援助成金の適応する範囲を拡大。
その結果、支給総額はそれまでの7倍以上に伸びていきました。

ところがこの労働移動支援助成金が退職者を生み出す提案をしていた人材会社に流れていました。

国は今後、人材会社が社員の退職を企業に働きかけていた場合、労働移動支援助成金を支給しない方針です。

労働移動支援助成金と使用して転職

成長産業への橋渡しとなるとされてきた労働移動支援助成金を使用して実際に転職をした人もいます。

大手メーカーを50代で退職した男性。
以前の職場では30年近く営業や事務を担当していました。

人材会社を通じて40社ほどに応募してきましたが面接までこぎつけたのはわずか4者でした。

キャリアチェンジで考えたのですけど、われわれの世代のニーズは少なかった。

再就職活動をはじめて8ヶ月、採用されたのは社員十数名の町工場です。
給与は月25万円。以前の半分になりました。

やはり賃金ですね。20~30%のダウンは覚悟してたんですが、実際は前の給料の半分以下の状況であまりにもギャップがあったので正直、今でも悔やまれます。

国は労働移動支援助成金を使用して転職した人達のその後を調査しました。
給与は平均で74.7%と7割近くに下がっていました。

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