[ガイアの夜明け] 「残業」やめられますか? ~15周年企画 ニッポン転換のとき~(2)

「残業」やめられますか? ~15周年企画 ニッポン転換のとき~

パーフェクトスーツファクトリー

東京・池袋。ここに働き方の見直しに取り組む現場がありました。パーフェクトスーツファクトリー池袋本店。

紳士服業界大手「はるやまホールディングス」の系列ブランドです。

夜10時、この日の営業を終えました。

この店を含む10店舗を管理するブロック長の内山和彦さん(40歳)。閉店後も商品の補充など翌日の準備に忙しいスタッフたち。

もう終わろう。

内山さんはこれまでも残業の削減に取り組んできました。しかし成果は思うように上がっていません。

前年度は1人あたり平均36時間出ている。

この時期の平均残業時間は月36時間。なかには60時間に迫るスタッフもいます。

残業を削減という意識が弱い。

ノー残業手当

3月、そのはるやまが大きな改革に乗り出しました。

はるやま東京支社に集められたのは全国のブロック長たち。はるやまの幹部の説明に耳を傾けます。その中にあの内山さんの姿も。

はるやまホールディングスの岸田健執行役員は、

今、プレミアムフライデーであったり、国が中心となった取り組みがなされている。その流れにまさに我々も乗っていく。「ノー残業手当」を導入し、残業をせずにすんだ人や店を評価する。

はるやまの改革の切り札は、その名も「ノー残業手当」。残業ゼロの社員に手当を支払うというのです。

仕組みは残業を全くしなかった社員に月額1万5,000円の手当を支給。仮に残業をしても残業代が1万5,000円以内であれば、その差額分を支給します。

しかし、

大丈夫なの?1番大型店は?内山さんのところか。

今から人員を増やすと言ってもなかなか難しいですよね。

すぐに人はそろえられない。

人員が足りないという問題は今すぐ解決できない。

難しいな。

業務のムダを秒単位で削りながら残業ゼロを目指す上司。

一方、難題を突きつけられ反発する部下たち。

何で「ノー残業」なんですかね?一番忙しい時に。

日本人の働き方が変えられるのか?

ノー残業手当制度

残業削減を会社から指示されたパーフェクトスーツファクトリーの内山和彦さん。

3月15日、新たな制度「ノー残業手当」導入の前日、スタッフに自らの思いを伝えることにしました

3月16日、明日から「ノー残業手当制度」がスタートします。これを機会に自分たちの仕事の仕方を見返してもらったら。無駄あると思う。皆さんの気持ちが変わらないと絶対に成功しない。何が何でも「ノー残業手当」を成功させたい。

会社を上げて始まる新制度にスタッフは、

率直にうれしい。残業しないでお金がもらえるというのは。

残業は個人的にマイナスイメージがある。

プライベートが充実できるのはいいこと。

肯定的な意見が多い中、1人別の見方をしている社員がいました。入社3年目の百合草亮太さん(24歳)。

残業を普段からしていない人が得するのかな。残業を普段からしていない人に手当が出る。

百合草さんは系列店の個人売り上げ第1位になった、はるやま期待の若手販売員です。

百合草さんの接客は時間をかけてお客様の好みを掴むというやり方。そしてスーツだけでなく靴やネクタイまで、まとめて提案します。まとめ買いで客単価を上げることが売り上げNo.1の秘訣です。

一方、ブロック長の内山さん。表を作っていました。マス目を塗ることでそれぞれの残業時間がひと目で分かるグラフです。

実際に数字に出てくると逃げられない。

残業削減への取り組み

そして始まった、残業削減への取り組み。

この日の朝、内山さんはスタッフの袋詰のスピードを計り始めました。

今、15秒。紙袋を立てた方が早いと思う。

ノー残業を目指す内山さんがこだわったのは、まさに秒単位の時間の削減。店内の移動も接客の時以外、早歩きを命じました。

今度は靴の保管場所から売り場までの歩数を数え始めます。すると靴の在庫を次々と売り場へ移動させます。

よく出る商品は最初から売り場に出ていれば何秒か短縮できる。それが各スタッフの1日、1週間、1ヵ月と見れば、かなり大きな時間短縮になる。

内山さんの対策はほかにも。またまたスマートフォンで時間を計り始めました。

視線の先にいたのは売り上げNo.1の百合草さん。接客の様子を離れたところからチェックします。実は内山さん、百合草さんの接客スタイルにもメスを入れようとしていたのです。

お客様がどういうものを求めているのか、お客様がモヤってしているなら、こっちが何か引き出してあげないと延々と続く。

しかし百合草さん、接客にはこだわりを持っているだけに、

細かいなというのは、ちょっとあるかもしれない。接客のスピードはお客様によって強弱があるので、早く早くとは言われるものの、そこに関しては限度がある。

百合草亮太さん

東京郊外にある百合草さんの自宅。両親と3人で暮らしています。

父、正浩さんは保険会社の営業マン。息子が就職してから親子で食卓を囲む機会はほとんどなかったといいます。

体はきつそうだと思っていた。休日はずっと寝ているから。

「これまでより一緒にご飯を食べられる?」

今より帰りが早くなれば、そういうことも増えるのかなと思う。でも、働いた方がいいんじゃないという気もする。昭和の男としては。

売り上げのノルマと残業削減

一方、内山さん。残業削減以外にもうひとつ達成しなければならない課題がありました。

それは売り上げのノルマ。

ちょうど3月から4月にかけて紳士服業界は入社や入学を控えた書き入れ時。この1ヶ月で年間売上の半分を占めます。

その最も忙しい時期に会社はあえてノー残業を求めてきました。

岸田健執行役員は、

まさに今が繁忙期のピーク。この時期にノー残業ができないと恐らく続かないと思う。「絶対にやってほしくない」という時期にあえてスタートを切る。これは会社の強いメッセージ。

忙しい時期だけに閉店間際になっても客足は途絶えません。接客に追われ残業が発生するスタッフが相次ぎます。

「ノー残業」のことはまるっきり頭の中から外れてしまって、お客様が1番ですから。

内山さんに焦りがつのります。そして思わず、

ボタン閉めて。俺から見ていると遊んでいるようにしか見えない。ばかばかしい、時間の無駄。

追い込まれる現場。それでも内山さんは残業削減にこだわります。

お客様と接している時間以外の作業や商品を取りにいく時間を早めるしかない。

これまで閉店後に行っていた商品の補充なども接客の合間を縫って行うようにしました。

しかし百合草さんは、

「ノー残業」をやらなくちゃいけないから本当にこれが。

「これまでだったら?」

終わった後にやっています。こんなの。

残業を削るため日中にやることが増え、接客に集中できなくなっていたのです。

そしてついに、

個人売上目標どうだった?

ギリギリ届かなかったです。申し訳ありません。

了解。上がりましょう。

百合草さんの売り上げにも影響が出始めていました。

百合草さんの訴え

「ノー残業手当」制度の開始から約3週間。4月9日の閉店後の百合草さん、

マネージャー、お話よろしいですか? ちょっと今日も正直思ったんですけど、何で「ノー残業」なんですかね?

難しいこと言うな。

残業しないで売り上げ取れないんだったら、残業してでも売り上げ取りたい。何でそんなに「ノー残業」にこだわるというか、あれだけ売り上げにこだわってきた人が。

売り上げを捨てているわけじゃないよ。

何で今なんですかね?

今っていうのは、この制度が始まったのが?

一番忙しい時に。

最初だから多分違和感があると思う。会社として制度としてやっていこうというのは当然ある。立場としてそれを工夫しながら進めていかなきゃいけない。みんなに強引に押し付けるのはちょっと良くないかなとの思いはある。僕は僕で立場も、そういう立場もあるし。

必死に会社と自分の考えを伝えようとする内山さん。今回の百合草さんの訴えをどう受け止めたのでしょうか?

新たな課題

4月中旬、はるやま東京支社。岸田執行役員と話し込む内山さんの姿がありました。

百合草君はかなり負担を、負担というよりストレスに近い感じ。

それは本末転倒。それは会社は望んでいない。いきなり100点じゃなくても、私はいいと思う。まず1歩踏み出したことに大きな価値がある。

ノー残業を目指すことで生まれた新たな課題。内山さんはどのような答えを出すのでしょうか?

売り上げ

それから間もなく、この日も閉店間際までお店には大勢のお客様の姿が。

そこで内山さん、百合草さんに近付き何か指示を出しました。

「内山さんと何を話した?」

今日の売上最終目標まですごく近いので、まだ店を閉めない。なので私も残業します。俺がいた方が目標にいくなら、むしろいたい。

内山さんは、

非常に迷ったが15分だけ残業やってもらった。私の指示です。

この日は残業削減より売り上げを選んだ内山さん。その決断が思わぬ結果を生むことに。

残業削減の成果

残業ゼロの人に手当を支給する「ノー残業手当」。それを推し進めてきたパーフェクトスーツファクトリーの内山和彦さん。

4月16日、制度の開始から1ヶ月が経ちました。

残業削減に取り組んだその成果は?

去年の同時期が店平均で残業が36時間。今年が3.1時間。単純に10分の1になっている。売り上げも前年比110%を超えている。みんな非常によく頑張ったと思うので、そこは自信を持ってください。

内山さん、

今まで入社して15、16年くらい、やってきた価値観が変わった。社会が変わっていく中で私たちも働き方を変えなきゃいけない。

残業を減らす本当の目的とは何なのか?

内山さんにとって「ノー残業手当制度」は新たな働き方を考える転機になったようです。

一方、トップ販売員の百合草さん、残業は去年の同じ時期と比べ、52時間から4時間にまで減りました。

残業ゼロを目指した、この1ヶ月は何をもたらしたのでしょうか?

「俺の仕事量は残業なしじゃできるわけない」と思っていた。でも削減できているので。残業が当たり前だったときと比べると人生設計じゃないが貯金しづらいところはある。

残業を減らすことの意味を見出した百合草さん。ただ一方で手取りの減少などもうひとつの現実にも気付かされたようです。

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