世界的なビッグイベントであるオリンピックを支えるのが協賛金や物品などを提供するスポンサー企業です。
今回の平昌オリンピックでは合わせて95社がスポンサーになっています。
このスポンサー企業にはいくつかランクがあり、その最上位にいるのがIOC(国際オリンピック委員会)と契約する「The Olympic Partner」、略して「TOP」と呼ばれるスポンサーです。トヨタ自動車、コカコーラ、パナソニックなど13社あります。
その協賛金は莫大な額で、契約期間にもよりますが数百億円ともいわれています。
企業に果たしてその額に見合うメリットはあるのでしょうか?
オリンピックの舞台裏をスポンサー企業の視点で取材しました。
パナソニック株式会社
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2月9日に開かれた平昌オリンピックの開会式。
話題となった演出が地面に派手な映像を映し出したプロジェクションマッピングです。
会場の観客席に上の方を見ると複数の光線が出ていました。
それを出していたのが映像を映し出すプロジェクター。最新型が80台。パナソニック製です。
パナソニックはオリンピックの「TOP」スポンサー。
会場のモニターや音響に至るまで全てパナソニックです。
実はTOPスポンサーになれるのは同じ業種では1社のみ。
大会に関連する機材や物品、サービスなどを独占的に納入できるのです。
会場内を見てみると他社製品のロゴにはテープが貼って見えなくなっています。
さらに他社製品のカメラやレンズには黒い布が…
スポンサー以外の企業の宣伝にならないようにするためです。
TOPスポンサーが支払う協賛金は非公開ですが、夏冬2大会の4年単位で100億円程度が目安と言われています。
パナソニックは東京も含め、2024年まで契約しています。
果たして採算が合うのか?
パナソニックのスポーツ事業推進部の笹木秀一部長は、
世界人口の半分が見るオリンピック。ショーケースという観点では非常に大きい。世界にアピールする場。
その効果は絶大です。
開会式でも使われていたプロジェクター、2012年のロンドンオリンピックでもスポンサーだったパナソニックは開会式で最新のプロジェクターを導入。大会後、引き合いが増え、高輝度プロジェクターの世界シェアは一気に49.7%と爆発的に伸びました。
日本コカ・コーラ株式会社
[blogcard url="https://secure.cocacola.jp/"]
そのオリンピックのスポンサーの中で最も古いのがコカ・コーラです。
1928年のアムステルダムオリンピック以降、90年に渡ってスポンサーを務めています。
ソウル市内。街に現れたのは巨大なコカ・コーラの自動販売機。
中は今回の平昌オリンピックに合わせたイベントブースです。
TOPスポンサーは世界中でオリンピックを利用したプロモーション活動ができるのです。
東京でもこんな仕掛けを…
新宿の地下街に現れたのは日本人のメダリストをモチーフにした氷の像。メダルを取る度に像が増えていきます。
コカ・コーラによると他社と差別化が難しい飲料はふとした瞬間に思い出してもらうことが最も重要だといいます。
世界で盛り上がるオリンピックはイメージ戦略には絶好の場なのです。
日本コカ・コーラの髙橋オリバーさんは、
心に残るシーンに「コカ・コーラあり」というシチュエーションをつくることで、コカ・コーラのファンを広げていく。
カンヌン アイスアリーナ
フィギュアスケートの競技会場。
羽生結弦選手が金メダル連覇、大いに盛り上がりました。
会場ではこの日、ペアのショートプログラムが開かれていました。
観客席の後ろにいたのはパナソニックのスタッフたち。
ある新しいシステムのテストをしていました。
それが現在開発中のマルチ動画配信システム。
観客がタブレットなどで映像のアングルを変えたり、スローモーションをかけたり、自由に操作して視聴できるものです。
担当者は、
巻き戻し機能を使ってジャンプの瞬間をリプレイしたり、見づらかった瞬間もズームアウトできるので有効だった。
パナソニックはこのシステムを2020年の東京大会で本格導入する予定です。
それを前にオリンピック本番の舞台を使ってテストできるのもスポンサーだからこそ。
そこにやって来たのはIOC(国際オリンピック委員会)のスタッフたち。新しいサービスに興味津々です。
オリンピックはスポンサー企業にとっても熱い戦いの舞台となっていました。
平昌でトライアルを実施したことは東京大会に向けて大きなステップ。常に新しい技術を投入していきたい。