[ガイアの夜明け] 密着!会社と闘う者たち!第2弾(1)

密着!会社と闘う者たち!第2弾

上杉剛さん

2016年6月、霞が関の厚生労働省。

多くのメディアが注目する記者会見が開かれました。

主役は大学生。大手飲食チェーンの元アルバイトです。

向こうの態度は「しょせんバイト」「しょせん大学生」。自分が見ていて見受けられた。許せいないという気持ちが強かった。

労働環境が劣悪だったと声を上げたのは上杉剛さん(仮名・当時21歳)。

なんと4ヶ月連続で1日も休みなく働かされたといいます。

さらに店長から包丁で刺されるなど暴行も受けていたというのです。

会社が人をものとして見ている。何とかそこの改善をしてほしい。

店を運営していた会社を訴えることにしたのです。

しゃぶしゃぶ温野菜

上杉さんが働いていたのは飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」のフランチャイズ店。

鍋の食べ放題が人気で全国に約400店舗を展開しています。

そんな有名店でなぜ問題が起きたのか?

ガイアのカメラは会見の前から上杉さんを追っていました。

3年前の2014年にら千葉県にある大学に入学した上杉さん。長野から上京してきました。

その時、求人情報誌で見つけたのが問題のバイト先だったのです。

有名なところというのもあったし、いろいろ生活費の足しにするために働こうと思った。

2014年5月から上杉さんは千葉県内の温野菜の店で働き始めました。

任されたのはホールの仕事。時給は850円。

面接では週4日程度、1日5~6時間の勤務といわれました。

しかし・・・。

「労働時間はどれくらい?」

朝10時とかから夜中の遅くて5~6時とかもあった。休みのない時は4ヶ月まるまる休みがなかった。

人手不足から仕込みまで任されるようになると1日12時間以上働くことが当たり前に。

1月に300時間以上は働いていたといいます。

ところが会社から振り込まれた給料を見せてもらうと最も多かった月でも15万7,000円ほど。時給に換算すると約450円。

皿を割ったりとか、ミスをしたということで「何時間分の給料なしね」みたいな。

さらに店長からはパワハラを受けていました。

携帯にかかってきた音声が残されています。

殺してやるから!殺されたいんだろ?だからそんな生意気な面しているんだろ!今向かっているから!殺してやる!

本当に怖い人で・・・。

「おかしいなと思わなかったのか?逃げられない状況だった?」

辞めたら懲戒解雇、就職にも響くと言われて逃げられない状況になった。

結局、1年3ヶ月働いて2015年8月に退職。その間、大学には通うことができず単位を全て落としてしまいました。

このまま泣き寝入りはイヤだと上杉さんはある場所に駆け込みます。

ブラックバイトユニオン

ブラックバイトユニオン。

高校生や大学生など学生アルバイトの相談を専門に受け付けている労働組合です。

飲食店の相談が一番多いと事務局長の坂倉昇平さんはいいます。

人手が全然足りないことが現象として現れている。今回の温野菜の職場なんかも人が全然いなくなって学生にもかかわらず非常に長時間、過重な仕事を任せてしまう。学業にも支障が出てしまうケースが非常に多いと考えている。

坂倉さん達、組合は早速、実態の調査に乗り出します。

まず向かったのは上杉さんが働いていた店舗。

ブラックバイトユニオンという労働組合の者ですけど。

現れた女性が店長。電話で罵声を浴びせていた人物です。

あえて暴力のことには触れず長時間労働の実態を聞き出します。

4月11日くらいから8月11日まで連続勤務で休みなく働いていた。それは間違いないですか?

間違いないと思います。でも私が働けと言ったかというとそうではないですが。来ていたのは事実です。

店長としてはどうしてそうなったとお考えですか?

みんなに聞いてもらえば分かりますが「来なくていい」と言っていました。「もう休んでもらって構わない」「帰ってもらって構わない」邪魔になるので。

連続勤務については認めたものの、上杉さんは自発的に働き、「帰れ」と言っても帰らなかったと言うのです。

さらに、

普通の人が2時間で終わらせる仕込みを寝ながらやったり、休みながらやったり、ずっと続く。

能力の問題で労働時間が長くなったと説明しました。

店長の言い分を上杉さん本人に確かめてみると、

能力と言っていましたけど睡眠時間もなく、毎日休みなく働いていたんで・・・。

おかしいなと思う。

「店長は自発的に来ていたと言っているが?」

店長が勝手にシフトを決めていて、そこに休みが1日もなかったです。

DWE Japan株式会社

組合は店舗を運営していたフランチャイズ加盟企業「DWE JAPAN」にも交渉を申し入れました。

戻ってきたの回答書。

そこには、

事実に反し当を得ないご主張であると思料します。

と書かれていました。まさに全面否定。

苦境に立たされた温野菜の元アルバイト、上杉さん。

会社との2年間に渡る戦いを追いました。

旬報法律事務所

2016年春、しゃぶしゃぶ温野菜の元アルバイト、上杉剛さんが向かったのは有楽町にある法律事務所。

働いていたフランチャイズ企業を訴えることにしたのです。

上杉さんが辞めた3ヶ月後に店舗は閉鎖、店長も姿を消していました。

上杉さんの主な訴えは3つ。

  • 1日12時間以上もの長時間労働
  • 4ヶ月の連続勤務
  • 店長からの暴力や脅迫行為

です。

絶対に許せないという気持ちがある。諦めたくない。

株式会社レインズインターナショナル

温野菜を運営するのはレインズインターナショナル。

焼肉の牛角や居酒屋の土間土間なども展開している大手外食チェーンです。

フランチャイズ本部として360社の加盟企業と契約。

その加盟企業が1,000店舗以上のチェーンを展開しています。

レインズインターナショナルはブランド名やノウハウを提供する代わりにロイヤリティーを取る仕組みです。

番組はレインズインターナショナルにインタビュー取材を申し込みました。

すると書面で回答が・・・。

FC加盟店舗において今回のような問題が生じたことは大変遺憾に存じます。

他方で、フランチャイズ契約関係においては、あくまでFC加盟企業がその雇用する従業員の労務管理及び労働環境に対する責任を追うべき立場にあります。

つまり上杉さんを雇っていたのは加盟企業の一つであるDWE JAOANであり、本部に法的責任はないといいます。

今回のケース、労働法の専門家、青山学院大学法学部の藤川久昭教授はどう見ているのか?

残業代支払い義務はDWEにある。これはフランチャイズ本部の責任はほとんど問えない。

その一方で、フランチャイズというシステムが抱える問題もあるといいます。

フランチャイズは儲けを出す仕組みの中で人件費が一番メスを入れやすいと思われているので、フランチャイズ加盟店の店長やアルバイトにしわ寄せがいってしまう。無理をさせてしまう。構造的な問題は我々は見逃してはいけない。

フランチャイズ経営の構造的な問題を指摘しました。

DWE JAPAN株式会社

上杉さんを雇っていたフランチャイズ加盟企業WDWE JAPANにも取材を申し込みました。

川井直社長です。温野菜の他に牛角を3店舗運営しています。

「暴力とか暴言を背景に長時間労働させていた?」

私の気持ちとしては、そのようなことはなかったと思っている。

現状、今ある資料とか組合や本人から提出された音声を聞くと自分の中でもそう考えざるを得ない。

「4ヶ月、休みなく働いていたとか長時間労働はあったのか?」

いまだに本当なのかという部分が実際にはあるんですが、逆にそれがなかったという証明も私の方ではできない。いろいろと争点がたくさんある中では現状はその部分は認める方向で考えている。

DWEの弁護士は、

認めるにしてもどこまで認めるかなかなか悩ましい。

すると社長、パソコンを持ってきました。

問題の店から送られてきていた勤務記録です。

「4ヶ月連続で働いていた時期?」

2015年7月、出勤日数22日、休み8日。

1月に8日間休んでいることになっていました。

トータルで105時間。

月300時間以上働いていたはずが105時間、上杉さんの主張と大きく食い違います。

店長の発言だけを信用すると本人がどうしても勤務時間を打ち忘れてしまうから、毎回店長が確認して打ち込んでいた。

勤務記録は本人ではなく店長が付けていたというのです。

緊急会議

2016年5月。上杉さんは弁護団と緊急会議を開きました。

主任の大久保修一弁護士。

会社側が持っている勤務記録との食い違いをどう立証するのか?

上杉さんの記録だけでは証拠して不十分です。

すると大久保さん、

「出退勤の記録を出してください」と裁判所を通じてお願いする。

会社に残っているはずのデータや資料を裁判所を通じて押さえることにしました。

そして上杉さんは決断します。

裁判

DWE JAPANを相手取り未払賃金の支払いなどを求め裁判を起こしたのです。

同じ日、証拠の確保が行われます。

やって来たのはDWE JAPAN。

裁判所の者ですが。

上杉さんは警察にも告訴状を出すことにしました。

暴行や脅迫について店長らを刑事事件として訴えたのです。

対応しなかった会社側にも責任はある。

裁判や刑事告訴のかたちで相手に受け止めてもらえれば。

弁護団の事務所では確保した証拠品の調べが始まりました。

会社に保管されていた証拠品です。

大久保弁護士たちはあるものに目を付けました。

それは防災防犯チェックシートと書かれた書類。

出勤時と退勤時に鍵の施錠やガスの元栓の開け閉めを確認するためのものです。

担当者のサインを書く欄にはカタカナの「ウ」の文字が並んでいます。上杉さん本人が書いたものでした。

会社の勤務記録では休日となっていた日、しかし上杉さんのサインが・・・。

否定しようがない事実として、そこにいたことが分かる。重要な証拠。

さらに警備会社に残されていた店舗のカードキーの記録も手に入れました。これを見れば店を開け閉めした人物とその時間が分かります。

010から始まる番号が上杉さんが持っていた鍵のナンバー。ある日の勤務時間を見てみると朝8時52分に出勤、退勤は翌朝の8時35分。なんと24時間も店にいた日もあったのです。

丹念に調べた結果、122日間の連続勤務や月438時間もの長時間労働が浮かび上がってきました。

裁判の中で必要な最低限の書類は確保できていると思う。

その頃、刑事事件では店長などによる暴行や脅迫が認められ罰金刑が下されました。

川井直社長

再び川井社長に話を聞きます。

まずは暴力について、

あった事実がはっきりしているので私も管理者として未熟であったと今は反省しています。

「長時間労働や連続勤務はどう考える?」

警備会社のカードキーに関しては持ち回りで使っていた話もあって私もまだまだはっきり、そこまで確信を持っていない部分と連続勤務が4ヶ月続いたという話なんですが、その頃のアルバイトに確認する限りそういう事実がなかなか分からない。

出勤日数や労働時間の長さについては争うというのです。

現在、裁判所において労働時間などの審議が続いています。判決は2018年の予定。