[ガイアの夜明け] 人生、最期まで「我が家」で・・・〜家族で向き合う「在宅医療」〜(1)

人生、最期まで「我が家」で・・・〜家族で向き合う「在宅医療」〜

井上栄三郎さん夫婦

東京・葛飾区にある200坪の家庭菜園。農作業に励むのは井上栄三郎さん(78歳)。健康のため、年間50種類の野菜を作っています。

井上栄三郎さんのご自宅。台所で朝食の支度をするのは妻の睦子さん(76歳)。

冷蔵庫から取り出したのは自家製の味噌。

国産の丸大豆と赤穂の塩と米こうじ100%。

自家製の味噌と栄三郎さん手作りの野菜。そこに溶き卵を入れて健康味噌汁の完成。採れたてレタスのサラダにロールキャベツ、たけのこご飯、なんとも羨ましい朝ごはんです。

睦子さんは葛飾区ラジオ体操連盟の会長。365日、毎朝欠かせません。

一方、栄三郎さんの趣味はスポーツ吹矢。お腹に力を入れる腹式呼吸が体に良いそうです。

健康に人一倍気を使い元気な二人ですが、最近こんな話をするようになりました。

これを葬式の時に使おうと思う。

でも、もう撮り直さないと。

ちょっと生き過ぎた。

人生の最後を意識し始めたのです。

終活

この日、井上栄三郎さんはある集まりに向かいます。受付の名簿には「終活セミナー」の文字が。

「終活」とは人生の最後を見据えて準備する活動。参加者は親の心配をする40代から、自らの最期に向き合う60代と年代はさまざま。

自宅で亡くなりたい方は?病院や施設?それはなぜ?

家族に迷惑をかけたくない。

亡くなる時は、みんなに抱きしめてもらって「愛されていた」という実感の中で亡くなりたい。

人生の最後をあなたはどう迎えたいですか?

井上栄三郎さんの思いは、

病院にいても「あと何日です」という時は家に連れて帰ってほしい。家で最後の息を引き取りたい。

2025年には「団塊世代」が75歳以上の後期高齢者になります。その時、健康でいられるのか?

模索する医療の現場、最後まで安心して暮らしたい。

社会医療法人 祐愛会織田病院

佐賀県南部に位置する鹿嶋市。人口約3万人。

100年以上に渡り地域の医療を支えてきたのが織田病院です。

救急車が到着しました。救急患者を運んでいきます。高齢者のようです。

織田病院のベッド数は110余り。これに対し年間3,200人にのぼる新規の入院患者を受け入れています。その内、4分の1以上が85歳以上です。

高齢者の入院が増え続ける中、国は医療費の抑制を進めています。そのため全国の病院に入院期間を短くするように促しているのです。

こうした実情に織田正道理事長は危機感を抱いています。

平均在院日数が12日。高齢者の救急、新規入院もどんどん増えている。そういう中でどうやって家に帰すか。

入院期間の短縮はそう簡単ではありません。

理事長の長男で内科医の織田吉正さん(34歳)。糖尿病の患者さんは退院して自宅に戻ったものの病状が思わしくないといいます。

今日は血糖値が300を超えている。息切れはどうですか?

ちょっと歩いたら休憩が必要。

せっかく治療をしても家で病状が悪化して再入院をするケースが後を絶たないのです。

病気の治療だけでなく、退院した後の生活まで考えておかないと、病院側は退院してもらうのが難しい。

MBC(メディカル・ベースキャンプ)

そこで織田先生は新たな取り組みを始めました。それがMBC(メディカル・ベースキャンプ)と名付けられた在宅医療の前線基地です。

ここにいるのは訪問看護師やヘルパー、理学療法士など「在宅医療」に関わるスタッフ。通常は別々の事業所にいますが、それを1箇所に集約したのです。

ここを拠点に退院後、まずは2週間、医師やスタッフがチームとなって患者を訪問。見守ることにしたのです。

早速、医師と看護師が患者さんのもとに向かいます。

するとMBCの巨大モニターにはどのチームがどの患者さんの家に向かっているのが表示されます。

緊急の呼び出しがあれば画面に表示され近くにいる医師を向かわせることもできます。

織田先生、IT技術を駆使して在宅医療を充実させようとしているのです。

緊急治療をして家に帰すとなると、高齢者はスムーズに自宅に復帰するのは難しい。自宅を「病院に近い状態」にしたい。

深村松根さん

4月7日、一人の患者さんが退院を迎えました。

深村松根さん(92歳)。大腸の感染症で1ヶ月間入院していました。肺にも持病を抱え酸素吸入が欠かせません。

家族ぐるみで農業をしているため息子さん夫婦は日中、父親を一人きりにしておくのが心配だといいます。

そこで織田先生が取り出したのはタブレット端末。MBCの切り札です。

家に置いてもらえれば結構です。「テレビ電話」みたいなもの。

病院と自宅をこのタブレットでつなぎ、退院後も遠隔で見守ろうというのです。

もうひとつ取り出したのは時計。

時計を着けてもらって、ここがナースコールになっている。

ナースコールとして機能するスマートウォッチ。心拍数も図り、そのデータを自動で病院に送ってくれます。

最新機器の説明に首を傾げる息子さん夫婦。

果たして92歳の深村さんにこのシステムが使いこなせるのでしょうか?

深村さん、1ヶ月ぶりに我が家に戻ってきました。自分の部屋でホッと一息。

病院にいれば見てくれているので安心感があるが。

「不安はある?」

ずっと付き添っていられないので、そこが一番不安。

早速、タブレットを試してみます。病院からテストの連絡です。しかし、耳の遠い深村さん、タブレットを直接耳に付けてしまいました。

ハードルは高いようです。

タブレットの不満

1週間後の4月14日。この日は織田先生がタブレットを使って深村さんに呼びかけます。

深村さんの自宅では外部スピーカーを直接耳に当てて聞こえるように工夫がされていました。

自宅に帰ってからの調子はどうですか?

帰った時期はふらついてどうしようかと思ったが、今はふらつきは少なくなった。

深村さん、順調に回復をして家の中なら自力で歩けるようになりました。

しかしタブレットにはまだまだ不満がありました。

画面が小さくて、看護師さんとか見たことあるが誰だか分からない。

画面が小さいため病院の誰と話しているか分からないというのです。

さらに深村さん、普段はヘッドホンを付けてテレビを見ています。そのためタブレットの呼び出し音に気が付かないこともあるのです。

織田先生、MBCのスタッフやシステムの運営会社の担当者とともに改善点を検討します。

この画面だと小さい。

話される人もタブレットから離れている。

新しい在宅医療

4月21日、ついに深村さんの不満を解消する手段が見つかりました。

深村さんの自宅でスタッフが慌ただしく動き始めました。テレビに様々な機械をつなぎます。そして画面の上に設置したのは小型のカメラです。

早速テスト。病院から呼びかけると深村さんはいつものようにテレビを見ていますが、急に画面が切り替わりました。

病院からコールをするとテレビが自動的に切り替わるので見逃すことがなくなります。さらに大きくなった画面で深村さん、顔なじみの看護師を見つけました。

鐘ヶ江さんかな?

タブレットの時より生き生きとしています。

病院側も大画面にしたことで看護師やヘルパーらが同時に会話できるようになりました。

テレビで見守る新しい在宅医療のスタートです。

織田先生、退院に不安を抱いていた息子さんを訪問。

やっぱり家がいいとおっしゃっていた。

状態はいいみたい。デイサービスも行けるようになれば幸い。

織田先生、

気持ち的には皆さん家がいいと思う。プラスアルファでこうして体重や食事の管理がきちんと見れれば、逆に病院にいるよりは本人の満足度が高い。

進化する在宅医療。その模索が続きます。

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