アメリカのトランプ大統領が鉄やアルミの輸入に制限をかけるなど世界の貿易に暗雲が立ち込める中、貿易の物量はネット通販の拡大やグローバル化が進んだことで増加しています。
貿易量が増える中、危険が高まるのは衝突などの海難事故です。
いま日本の海運大手がそうした海の上の課題解決に挑もうとしています。
日本郵船株式会社
[blogcard url="http://www.nyk.com/"]
横浜、停泊しているのは日本郵船の船です。
運航にはどんな危険が潜んでいるのか?
WBSのカメラが乗船させてもらいました。
午後3時、出港です。
船はこうしたレーダーと船長による目視によって安全を確認しながら進みます。
車のように車線のない海上では船があらゆる方向に走ります。
出港から10分後、
左から3~4隻来てる。
船体グリーンの船と聞いたが見当たらない。
見えた。隠れてた。
大きな船の影から小型船が現れました。
見えない危険は様々なところにあるのです。
実は海で起こる事故の7割以上が人が原因です。
また夜になると、視界は真っ暗。
他の船をレーダーや目視で確認しますが陸地と船の明かりを見分けるのは困難です。
そこで今、日本郵船が取り組んでいるのは「衝突リスクの見える化」です。
波がうねる壁。
入ってみると本物の船のデッキにいるかのような部屋が…
夜から朝へと画面が切り替わります。
船が揺れているような状態も再現できるシミュレーション装置です。
研究ではこの装置を使いベテランの春名克彦船長に仮想の海を走ってもらいます。
「今一番何を気にしているの?」
左からの船。あそこに行きたいけど漁船が邪魔。
ベテラン船長にどの船にどのような注意を払っているかを声に出してもらい、その船長の判断を元に船を「危険」、「注意」、「無関心」に分類。
今までにベテラン船長20人による84パターンの航行データが集まっています。
作ろうとしているのは自動で周りの危険度を知らせるシステムです。
白い線は自分の船の進行方向を示しています。
「ポン」という音でオレンジ色になったのは注意しておくべき船です。
進行方向が画面の右から左なので、このままではぶつかる可能性があります。
また赤色になった船が…
すぐに進路を変えないとぶつかる危険がある船です。
これまでのシステムは他の船との距離が近くなると警告音を出すまでが精一杯。
スピードも進行方向もバラバラの船が海を行き交う中、それぞれの危険度の判断は船長の経験に頼らざるを得ませんでした。
日本郵政の桑原悟さんは、
経験が少ないと船がいっぱい来たとき、自分の情報処理能力を超えるので、そこにベテランの感覚を与えることで「気付き」を与える。周りの状況を把握することに役立てたい。
日本郵船はこのシステムを2020年までに実用化させたい考えです。
株式会社商船三井
[blogcard url="http://www.mol.co.jp/"]
危険を回避する取り組みは他でも。
商船三井が展示していたのはAR(拡張現実)の技術を使った装置です。
船からの風景を写した映像に航路や周辺を走る船の情報を重ね合わせて表示しています。
こちらは視界が悪い実際の船からの映像です。
開発中のシステムで見ると船がいることが分かりますが、ARがないと船の姿は全く見えません。
商船三井はこの技術で専任の負担を減らしたい考えです。
商船三井の技術革新本部、清家康之さんは、
船員の業務の効率化は進むと思う。数年先には使えると思う。
内藤忠顕社長
なぜ今、こうした技術開発に日本の海運大手が取り組み始めているのでしょうか?
日本郵政の内藤忠顕社長に話を聞きました。
物量が伸びる中で大競争が起きる。何らかの形で差別化していかないと、この大競争の中で生き残れない。
背景にあったのは危機感でした。
「どういう創意工夫で差別化を図る?」
陸上の自動運転に近いコンセプトが船にもいずれ入ってくると思う。変化をつかんでいきたい。