今、保険の駆け込み契約が急増しています。
その理由が個人年金や終身保険などのパンフレット。これらの保険商品の保険料が4月から値上がりします。
その背景には日銀のマイナス金利政策の影響で生命保険各社の収益が悪化しているということがあります。
業界最大手の日本生命保険相互会社は3月17日に2020年度までの4年間を対象とした新たな中期経営計画を発表しました。生命保険業界はこれからどう変化していくのか?
日本生命保険相互会社の筒井義信社長がWBSの単独インタビューで新たな戦略を語りました。
保険クリニック
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東京・品川区にある保険販売の代理店「保険クリニック大崎ニューシティ店」。
平日の昼過ぎ、窓口を覗くと2人のお客様が相談に訪れていました。
3月までであれば利率が高いところでお返しできるが。
3月中に契約しておくと金利の率がいい。
生命保険各社が4付きからの保険料の値上げを続々と決めていて、その前に契約をしようと駆け込み需要が増えているのです。
「駆け込み需要はある?」
そうですね。3月はお客様の来店も多い。積み立て型でと話をもらうことが多い。
お客様に話を聞くと、
「3月中に契約した方がいいよ」と相談するなかで聞いたので今やろうと思って。
こちらでは今月に入りお客様の相談件数が2~3倍に増えたといいます。
保険クリニックを運営する株式会社アイリックコーポレーションの本間久嗣店舗マネージャーは、
終身保険だと10~20%、学資保険だと5~10%、年金保険だと5~15%ぐらい保険料が値上がりする。
例えば第一生命保険株式会社の貯蓄型の個人年金であれば28歳の女性の場合、契約が4月以降になると支払う保険料は月1,000円値上がりしますが、戻ってくる年金額は年間3,700円下がります。
日本生命保険相互会社は年間60万円もらえる個人年金保険の場合、30歳の男性では月々の保険料が546円値上がりました。
この値上げの動きは住友生命保険相互会社や朝日生命保険相互会社など10社以上に広がっています。
現状入っている人の保険料はそのまま。
揺れ動く生命保険業界!マイナス金利で大幅減益!
今、生命保険業界が揺れています。
大手生命保険会社4グループの2016年4~12月期の決算は全社減益となりました。
最大手の日本生命保険相互会社も例外ではなく2016年4~12月期の基礎利益は4,498億円と前年と比べ615億円も減少しました。
収益環境の悪化により日本生命保険相互会社は3月17日、3ヵ年の中期経営計画を1年前倒しで見直すと発表しました。
そこにはどんな狙いがあるのか?
日本生命保険相互会社の筒井義信社長、単独インタビューでその戦略を語りました。
筒井義信社長
「3ヵ年の中期経営計画を見直すのはなぜ?」
去年からマイナス金利政策が出てきた。今取り組んでいる中期経営計画の前提が根こそぎ変化してしまった。一刻も早く環境に見合った形で仕切り直しをしなければいけない。
日本生命保険相互会社は新規契約などの目標達成に一定のメドをつけたうえで運用環境の変化に適応するため中期計画の見直しに乗り出したのです。
保険会社は主に国債などの債権を運用し収益を上げ保険金の支払いに充てています。
しかし日銀が2016年にマイナス金利政策を導入して以来、国債の利回りは急激に低下、生命保険会社が運用のメインとしている30年の超長期国債も同様に低下しています。
3月16日、日銀の黒田東彦総裁は、
「保険や銀行などマイナス金利で収益が悪化している業界がある。副作用が大きいマイナス金利を外すことは?」
金融市場に対する影響も勘案してやっている。2%の物価安定の目標を早期達成に向け引き続き適切な金融緩和を進める。
この結果、生命保険会社各社は一部の保険商品の販売を停止するなどの影響を受けています。
筒井義信社長は、
4月から全般的な保険料の値上げにもつながってくる。保険商品の選択肢を提供するという使命が果たせなくなってきている。
環境投資・新興国に活路
国債に依存するという体質を脱却するため日本生命保険相互会社は新たな投資先の開拓を急いでいます。
この日、投資チームのメンバーが参加したのは日本の日銀にあたるチリ国立銀行とのミーティングです。
「チリでの女性の社会進出は?」
チリには多くの成長市場がある。チリの労働力の半分は女性。非常に多くの女性が小口融資を利用している。
日本生命保険相互会社は2016年8月、チリ国立銀行が発行している女性の社会進出を後押しする債権などに45億円投資しました。
ほかにもフランスのグリーンボンドと呼ばれる環境保全活動に使われる債権など長い目で見て高い利回りが期待できる新規領域に今後4年間で1兆5,000億円を投資する方針です。
筒井義信社長は、
環境分野やインフラ、新興国、ベンチャー、成長が目される領域へ投融資を拡大する。
「これまでよりリスクを取っていく?」
高い利回りをあげたい。そうするとリスクを取らざるを得ない。リスク管理の体制をこれまでより強化する。投資の国や通過を分散するなど万が一のマーケットの下落に対し、いろいろなアクションプログラムを準備していく。
健康なほど安くなる!?新保険
マイナス金利が逆風となる中、生命保険会社各社は独自商品の開発を急いでいます。
第一生命グループのネオファースト生命保険株式会社が2016年に発売した商品「カラダ革命」、健康な人ほど月々の料金が安くなる保険です。
ホームページ上で健康診断の結果を記入すると、その人の健康年齢が表示されます。
例えば36歳の男性であれば月々の支払いは1,801円。しかし健康年齢が35歳であれば1,384円と400円以上安くなるのです。
第一生命グループはこうした商品にニーズがあると見ています。
第一生命保険株式会社の営業企画部、北堀貴子部長は、
これまで生命保険会社が提供してきた商品は万一の場合というような非常時のリスクの備えが中心だった。これからは日常に寄り添った商品・サービスの提供が求められていく。
3月17日、第一生命保険株式会社の本社ビルで新商品の開発を目指した会議が開かれていました。
カギとなるのが社員が付けているウエアラブル端末。
通勤時に歩いた成果が目に見えるので一駅手前で降りて歩くというのをみんな実践していると聞く。
第一生命保険株式会社はこの端末で社員の1日の歩数や睡眠時間を収集。ビッグデータとして解析することで商品の開発に結びつけようとしているのです。
さらに来週、無料のアプリも発表する予定です。歩数などが計測できるサービスのほか、顔認証技術を使ったサービス。自分の顔を撮影することで将来の自分の顔を見ることができます。
こうしたアプリでお客様の健康意識を高めながらさらなるデータの収集を狙います。
一方、日本生命保険相互会社もこれまでと全く異なる保険商品を開発。終身年金「グランエイジ」は長生きするほど得をする保険です。
死亡時の保障や解約時の払戻金を低く設定し、その分受け取れる年金額を大きくしました。
発売から1年で加入は3万5,000件に達しています。
筒井義信社長は、
従来の発想を変えて、かつ社会の課題に貢献できて、低金利に強い。こういう商品を工夫を凝らして生み出していきたい。