[ガイアの夜明け] 「不自由」が価値を生む!~車イス社長の挑戦~(2)

「不自由」が価値を生む!~車イス社長の挑戦~

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株式会社ミライロ

東京・渋谷区。

午前11時、駅の改札に垣内俊哉さんの姿がありました。

シャーロットだ。

出勤途中にたまに会うのは、近くのペットショップのミニチュアホースです。

前もお会いしましたね。顔見知り、親友。

垣内さんの目線の高さは106cm。

駅から5分、垣内さんのオフィスがあるビルです。

会社の名前は「ミライロ」。2010年企業、本社は大阪ですが、2017年から拠点を東京に置いています。

垣内さんは立命館大学在学中に同級生と一緒に起業しました。

バリアフリーを推し進めようとする企業を手助けするというビジネスです。

ここ数年、急成長を続けています。

ミライロという社名は「誰もが自由に未来の色を描いていけるように」という想いからです。

この1年で社員は約20人から約50人へと増えました。そのうち9人が障害者です。

日本では数少ないバリアフリーを専門的にアドバイスできる会社なのです。

「バリアフリーは儲かる」というのが垣内さんの売り文句。

「儲けていくぐらい、みんなバリアフリーを続けやすい」と僕らが行った方がいい。健常者はそれを言ったとき「何を言っているんだ、おまえは」となりかねない。

垣内さんはビジネスで日本をバリアフリー先進国にしようと飛び回っています。

アピタ稲沢店

この日やって来たのは愛知県の大手スーパー。

改装にあたっての意見を求められました。

エスカレーターの前に差し掛かると、

速度の調整は?

調整はできない。今の基準からすると「速い」というお客様も多い。

高齢者にはスピードが速すぎると指摘。

こうして次々と改善点をあぶり出していきます。

それは企業にも思わぬメリットが。

アピタ稲沢店の瀬口博店長は、

価格や商品で差別化できるかというと、それだけでは差別化できない時代になってきた。

居心地がいいと思ってもらえる店にお客様は集まってくる。使い勝手が良ければ、また使ってもらえるというのが我々の狙い。

ブルーレマン名古屋

ミライロに新入社員の研修を依頼している名古屋の結婚式場。

実は建物の設計段階から垣内さんはアドバイスをしてきました。

この角度が非常に大事。

車椅子が軽い力でも上れるようにスロープを極限まで緩やかにしました。これも垣内さんのアイデア。

そうした工夫はチャペルの中にも。

必ずしも車椅子に乗っている人が後ろに座るとも限らないので、サイドに十分なスペースを取った。どの席にも移動しやすい。

結婚式に何度も参列しているが、大体後ろに案内される。身近な関係であっても。

このサイドのスペースを広く取ることで車椅子でも行きたい席に行けるようにしました。

ブルーレマン名古屋を運営する株式会社ブラスの河合達明社長は、

最初から「車椅子対応です」と営業しても「ああ、そうですか」ぐらいだが、おじいちゃん、おばあちゃん、「大丈夫ですよ」というとバリアフリーの重要性に気付くことが多い。

こうした取り組みも評価されてこの結婚式場、激戦区の名古屋で毎年10%近く業績アップを続けています。

岸田ひろ実さん

12月18日、千葉県船橋市。

岸田ひろ実さん(49歳)、ミライロの社員で講師を勤めています。

心臓の手術の後遺症で10年前から車椅子での生活になりました。

この日やって来たのは大手住宅メーカー、大和ハウス工業の京葉支社。

大和ハウス工業株式会社

快適に過ごすためのバリアフリー情報は、障害者、高齢者のためだけではなく、大勢の人々が求めていること。

バリアフリーの大切さを学ぶ社員研修。30人が参加しました。

いつものように実感してもらいます。

まず車椅子で街に出ることに。

幹部自ら率先して車椅子に乗ります。マンションの設計や構造を手掛ける集合住宅事業部の鈴木和博次長です。

段差とか坂道、階段、傾斜のある所は後ろ向きに下ろしてください。

体を反らすようななかたちでゆっくりと。

怖い。

下ろす人も初体験。無造作に下ろしてしまったようです。

ちょっとした斜面でもバランスを崩しかねません。

そこに点字ブロックがあるので通ってみてください。かなりの衝撃です。

普段、設計しているんですけどね。

すごいですね、拾い方が。危険と感じる。

普段は意識しない点字ブロックも、衝撃が直接伝わってきます。

この点字ブロック、ある意味危なくないですか?

誰かのために便利なものは、誰かが不自由しているかもしれない。

歩道のわずかな段差でも一人では上ることができません。

若手社員には高齢者の感覚を体験できる器具を身に着けてもらいます。関節の動きを制限するいくつものベルト。装着するだけで歩き方まで変わります。

さらにゴーグル、そしてヘッドホンを付けると、

歩きづらい。全然見えない。

白内障の人の見え方を再現するゴーグル。人とすれ違っても視界が白くぼやけて直前まで分かりません。自転車がいきなりやって来ました。

信号が全然見えない。怖い。

方向は分かる?

方向がギリギリ分かるぐらい。

駅周辺でも車椅子で走行してみました。

すると目の前に自転車が迫ってきます。そこには意外な危険物が・・・

目線がこうなので、こういう突起物が普段はかわせるが、車椅子だとかわせない。

ミライロ主催のバリアフリー体験研修、約400社の企業が取り入れています。

個人個人が体験した気づきを今度は共有します。

参加者は何を感じたのでしょうか?

身体的に厳しかった。

段差を乗り越える動作が身体的に厳しかった。普段、障害物とならないものが障害物となる。思っても見なかったことに気づきました。

いろいろな建物の設計をしながら、マンション、事務所、健常者目線での内容しか自分で想像していなかった。仕事にも反映できる。

京阪奈墓地公園

大阪府枚方市、垣内さんのもとに新たな依頼が舞い込みました。

駅前からはタクシーで移動。主張へは一人で行くことが多いといいます。

向かった先は大規模な霊園です。

垣内さん、駐車場に着くなり周辺をチェックし始めました。

早速、何か見つけたようです。

タイヤがはまってしまう。デンジャラスですね。

何が危険なのか教えてくれるといいます。

傾斜があると加速する。ハマった先で転倒。

スロープの傾斜で車椅子に勢いがついて、側溝の溝に車輪がはまると、勢いで投げ出され大怪我をする可能性があるというのです。

さらに、

ベビーカーでもハイヒールでも危ない。

そこに霊園の担当者がやって来ました。

危ないなと思って。このU字溝のふた、何とかしてほしいですね。

墓の通路にも問題が・・・

ここに入ったとしても旋回できないので、行くか戻るしかない。しっかりお参りをしたいと思ってもできない。

通路が狭いため方向転換することができません。

さらに大きな問題が、墓の前に来て向き合おうとしても体を向けることができないのです。これではちゃんとしたお参りができません。

駐車場の奥側です。

案内されたのは新しい霊園の予定地。1,000坪あるそうです。

日本で一番大きいオリーブの木の下で眠る樹木葬。

樹木葬の霊園。大きなシンボルツリーを中心にひし形の大胆なデザインが特徴です。

バリアフリーとは程遠かった霊園。そのイメージを一新したいという依頼でした。

先の霊園を見ても、車椅子では移動しづらい。ベビーカーを押している人や杖をついている人だったり、バケツを持っている人もそう、行けない場所、通れない場所がないようにしよう。

改善点

12月下旬、ミライロの東京支社。

垣内さんは下見を元にあの霊園の改善点を幾つか見つけ出していました。

特徴的なデザインになっているので角ができる。この部分で車椅子ユーザーが曲がれない可能性があるとよくない。

垣内さんが特に注目したのは角の部分。

車椅子で直角の部分を曲がるには最低90センチの幅が必要だといいます。

一方、このデザインでは45度の鋭角な曲がり角があります。

掘り広い幅がないと車椅子では通れない可能性があるのです。

山村結さん

1月上旬、大阪府枚方市の霊園。

垣内さんのアドバイスを元に工事が進められていました。

スペインから船で運んできた5トンもある巨大なオリーブの木。

この霊園を手掛けるのは山本一郎社長。

通路にはイタリアから取り寄せたという大理石が敷き詰められていきます。

1区画当たり60万円で販売するといいます。

この日、ミライロの社員に連れられて車椅子の女性がやって来ました。

山村結さん(27歳)、神経の病気で4年前から車椅子の生活です。

垣内さんのアイデアが反映しているのチェックするためにやってきました。

1メートル横幅がある。通常は90センチぐらいだが、1メートルにして曲がりやすいのか見ていただきたい。

図面で垣内さんが注目した45度の曲がり角。

余裕。いい感じ。

スムーズに曲がることができました。

旋回も大丈夫です。

回れます。

従来の幅では方向転換することができませんでした。

幅を10センチ広げたことで車椅子でも問題なく回れました。

わずか10センチで自由に墓参りができるようになったのです。

90センチで規定はOKだが、あえて10センチ広いと旋回もできる。いろいろ指導してもらった。

10センチが大きいですね。

たったこれだけなんですけど。

すると、

私もお墓に行ったことがない、車椅子になってから。墓参りに行けないまま。法要も1人置いていかれる。

これまで墓参りを諦めていたという山村さん、家族会議のエピソードを教えてくれました。

お墓のことを両親が考えているが、「お墓を守ってもらえないなら、買うのをやめよう」と言っている。こういう霊園を見ると、お墓を建ててもいいと思ってもらえるんじゃないか。

とてもうれしいお言葉。

墓が売れないとか、皆さんが離れている原因は我々業界が作っていた。

「ここだったらいい」と、本当は「やめておこう」と思っていた人が思いとどまるのは大きい。

社員の先頭に立って仕事と向き合う垣内さん、しかしその裏で壮絶な戦いが・・・。

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