ガイアの夜明け ニッポン転換のとき ビジネス関連

[ガイアの夜明け] 再び、巨大「規制」に挑む!(2)

2017年6月14日

再び、巨大「規制」に挑む!

株式会社MMJ

[blogcard url="http://www.milkmarket-japan.com/"]

2016年6月、北海道・浜中町、牧場にいたのはMMJ、ミルクマーケットジャパンの社長、茂木修一さん(62歳)。

酪農家から生乳を買い取る民間の卸売業者です。

MMJの売りは酪農家から高値で生乳を買い取ること。契約するのは全国に約60軒。この日は新しい契約農家がMMJに初めて出荷するところでした。

MMJに出荷先を変えることで酪農家は売上げが大幅にアップするといいます。

群馬県伊勢崎市、建物の一画にMMJの本社があります。小さなオフィスに従業員は4人、人件費や設備コストを圧縮しているので生乳を酪農家から高く買い取りメーカーに安く売ることができるのです。

かつて茂木さんは酪農家から子牛を預かって育てる仕事をしていました。そこで経営難で廃業していく仲間たちを見て、2002年にMMJを立ち上げました。

付箋がびっしり貼られた本。乳業名鑑とあります。

バター工場です。作ってくれそうな。

茂木さん、バター不足を解消しようと作ってくれる工場を探していました。

うちの牛乳を入れてバターを作っていただいて買い取ることができないか。

正直、そういう話は非常にありがたい。

茂木さんの申し出に「ありがたい」という返事、ところが、

指定団体との取引があるから、「MMJと取引があるなら、うちから供給しなくていいよね」と逆手に取られちゃうと皆さん、立場がなくなってしまう。

指定団体

指定団体とは酪農家から生乳を集めて乳業メーカーに販売をする組織。

全国に10あり、全て農協系です。

生乳の流通をほぼ独占しているため、そのライバルとなるMMJとの取引に皆、及び腰なのです。

株式会社タカハシ乳業

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群馬県前橋市、茂木さんがやって来たのは、この街にある中小メーカー、タカハシ乳業。

ここは関東の指定団体から原料の生乳を仕入れています。

タカハシ乳業のこだわりの乳製品。全て農薬や化学肥料を使わないエサで育った牛の生乳を使っています。

こちらのバターは120グラムで488円。普通の2倍近い価格ですが高級スーパーなどで売れているそうです。

しかし、社長の髙橋洋さんからは意外な話が、

バターははっきり言って赤字ですね。

利益が大きいはずの高級バターが赤字だというのです。

実はメーカーが指定団体から原料の生乳を買う際、つくる製品によって買い取り価格が異なります。例えば牛乳をつくる場合は1キロ117円。バターなら75円で買うことができます。

これは用途別乳価と呼ばれ乳製品を安定的に供給するために国がつくったシステムです。

ところが、

「バター価格」で原料をもらっているわけではなくて、「飲料用」として買っているからバターを作っても採算が合わない。

指定団体が生乳をバター用の安い価格で売ってくれないため、採算が合わないというのです。

そこで他のメーカーにも話を聞いてみると、

「加工向けの安い乳価を認めません」とか指定団体が言うんだよな。

「指定団体が決めた値段で買うしかない?」

そうです、そうです。

「それに対してメーカーはあまり強く言えない?」

そこなんだよね、本当に。

関東生乳販売農業協同組合連合会

[blogcard url="http://www.dairy.co.jp/kanto/index.cgi"]

関東のメーカーが生乳を仕入れているのは農協系の指定団体、関東生乳販連。50人足らずの組織ですが取扱高は1,300億円に迫ります。

事実関係を確認するためトップの菊池一郎会長に話を聞いてみることになりました。

「『用途別乳価』で原料を売らない事実がある?」

ゼロとは私も言い切れないですね。

「国産バターが足りない時に指定団体がバター用乳価を認めればバターを作れる?」

「飲用」の方が高く売れるのに、有利な方を選ぶのは売る側としては当然。

用途別乳価という国がつくったシステムは機能していないことが分かってきました。

茂木さんは、

指定団体がバター向け乳価を認めない。認めないということは、作らせないということ。安いバターを供給することは実際できない。

ここにもバター作りを阻む闇がありました。茂木さん、どうするのか?

株式会社ベイシア

[blogcard url="https://www.beisia.co.jp/"]

群馬県伊勢崎市、この街にあるスーパー「ベイシア西武モール店」。

この店で今、売れに売れている牛乳があります。その名前は「北海道 別海のおいしい牛乳」。

値段の割には一番おいしいと子供が言うので。うちではこれです。

大手メーカーの牛乳は税込みで230~250円。一方、別海のおいしい牛乳は178円。50円以上安いのです。

実はこの牛乳、メーカーがMMJから生乳を安く仕入れているので安価で販売できるのです。

北海道 別海のおいしい牛乳

北海道の東部に位置する別海町。この町で酪農を営む島崎美昭さんと中山貞幸さん、「別海のおいしい牛乳」の生みの親がこの2人です。

美味しさの秘密がエサ。国産の牧草やトウモロコシなど10種類以上の原料で作っています。

餌を毎年、改良して組み合わせも変えて味を良くしようという農家はない。

ほとんどの農家は農協からエサを買っていますが、2人はアメリカの飼料会社と直接取引をしてコストも削減しています。

独自の取り組みがもうひとつ。茶色い牛はジャージーとホルスタインをかけ合わせた交雑種です。全体の1割だけ交雑種の生乳を混ぜるのが味の決め手。

交雑種は牛乳の味がまろやかで甘くていい味が出る。ホルスタインとブレンドすることで格別な味が出てくる。

25年かけて、ひたすら牛乳の味を追求してきた中山さん。しかし、その努力は永らく報われることはありませんでした。

指定団体に出荷する場合、各農家の生乳は混ぜられ乳業メーカーに販売されます。

酪農家が努力しても牛乳の味は均一になってしまうのです。

そこで2人は2年前、出荷先を指定団体からMMJに変更。自分たちの牛乳を「別海のおいしい牛乳」というブランドにすることができたのです。

本当に涙が出てきて、それくらいうれしかった。自分が搾った牛乳をみんなに飲んでほしい。それにはどうしても指定団体を抜けるしかない、ということだった。

2月中旬、「別海のおいしい牛乳」の生産者、島崎さんの牧場に外国人の姿がありました。

彼らは酪農大国オーストラリアから来たコンサルタント。

そこにはMMJの茂木さんの姿もありました。壮大なプロジェクトが動き出そうとしていました。

日本の酪農を学んで、何か支援できないかと思ってね。

仕掛け人はオーストラリア領事館のロナルド・グリーン領事です。

オーストラリアの会社がいろいろ技術を持っている。協力関係によって、よりいい事業が日本にできればという期待はある。

質の高い日本の牛乳に注目し、ビジネスができないかとやって来たのです。

実にユニークだね、甘くて、しつこくないし、とてもおいしいよ。

アジアで飲まれている牛乳よりずっとおいしい。これを飲んだら驚くよ。

一方、島崎さんと中山さんも「別海のおいしい牛乳」の海外展開を独自に進めていました。最初に目指すのは台湾。

指定団体がやってくれればいいよ。やってくれないでしょう。

指定団体に頼っていた頃は牛乳の輸出など考えたことすらありませんでした。

今まで1本の道しかなかった。「指定団体」ホクレンに出して、という道。ところが僕ら自由な道を選んだら無限大に道は広がっている。どこの道を行ってもいい。僕らの牛乳は世界で勝負ができるということ。

台湾

3月下旬、台湾。「別海のおいしい牛乳」が販売されるスーパー。

しかし、そこには世界各国のライバルがひしめきあっていたのです。アメリカ産、オーストラリア産、そこで日本の牛乳のスゴさが証明されることになります。

「別海のおいしい牛乳」の生産者、島崎さん。テスト販売の様子を見にスーパーにやって来ました。

思わず笑みがこぼれます。手塩にかけた牛乳が棚のど真ん中に陳列されています。

しかしライバルもひしめいています。台湾産だけでなく、アメリカ産、そしてオーストラリアの牛乳もあります。

「別海のおいしい牛乳」は1本約720円。一番高い値段が付いていました。台湾の牛乳の2倍の価格です。

赤ちゃんを連れた夫婦がやって来ました。早速、呼び止めて自慢の牛乳を飲んでもらいます。

濃いのにさっぱり。

台湾のは、こんなに濃厚で香り高くない。

そして買ってくれました。

その後も「別海のおいしい牛乳」が次々と売れていきます。

北海道の牛乳といえば新鮮なイメージがある。台湾では見かけないので買ってみようと思った。

棚に並んでいた30本は完売。1ヶ月のテスト販売の結果、台湾全土450店舗での販売が決定しました。

規制に守られていることは今までは大事なことだった。これからは我々も変わっていかなくてはいけない。「マーケットは国内だけでなく海外にもある」ということを実践して、次の人たちに未来と希望を与えていきたい。

オーストラリア領事館

そして札幌でも大きな動きがありました。

酪農家から集めた生乳でバターを作ろうとしていたMMJの茂木社長、訪ねたのはオーストラリアの領事館。

領事が出迎えてくれました。

この日はオーストラリアと結んでテレビ会議です。相手はあの乳業のコンサルタント。

工場の能力を知りたい。1キロの生乳をバターと脱脂粉乳にして出荷するまでの製造コストを知りたい。

その数字はすぐに出しましょう。ただ工場をどこまで自動化するかで製造コストもずいぶん変わってきます。

実は茂木さん、酪農大国オーストラリアの製造技術を使って日本にバター工場を作ろうと動いていました。

茂木さんに協力するオーストラリアにも思惑があります。

入りにくい、日本の市場は、違う戦略を持たないと参入できない。茂木さんの動きは市場を変えるきっかけになる。

安くて質の高い国産バターを作る。茂木さんの新たな取組が始まろうとしていました。

バターを使いやすい値段、リーズナブルな値段で届けたい。欲しい品質のものを必ず届ける流通を作れればと思う。

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巨大「規制」に挑む!〜明かされる「バター不足」の闇〜

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