[WBS] アメリカで沸騰する石油ビジネス!日本企業に参入障壁?

ワールドビジネスサテライト(WBS)

「WTI」という言葉、皆さん何の略がご存知ですか?

West Texas Intermediateの略で真ん中にテキサスとあるようにアメリカの石油の一大産地、テキサス州などで算出される原油のことで、原油価格の国際指標になっています。

そのWTI(原油先物価格)が2014年後半に急落して以降、一時20ドル台まで下落しましたが今年に入って急速に回復しています。

これを受けてテキサスではいま石油などエネルギー開発の機運が高まっています。

30兆円ともいわれる巨大市場に挑もうと日本のメーカーも動き出しました。

テキサス州ヒューストン

アメリカ第四の都市、テキサス州ヒューストン。

古くから石油の町として知られ、その近郊には石油の精製所や石油化学プラントが所狭しと立ち並んでいます。

元々テキサス州は石油の埋蔵量が多いことで知られています。

20世紀初頭、ヒューストン近郊で陸上油田が発見され、さらに1930年台からメキシコ湾での油田の開発も始まりました。

最近ではテキサス州でシェールガスの採掘も盛んに行われています。

エネルギー産業の中心地ヒューストンにはスーパーメジャーと呼ばれる「エクソンモービル」や「シェル」などの技術開発拠点を設けています。

海洋技術展(OTC)

先月、そのヒューストンでOTCと呼ばれる世界最大の海洋技術展が開かれました。

2,300以上の企業が出展し、開催期間中には100ヶ国以上から約6万人が来場しました。

その1画にはジャパンパビリオンが設置され、エネルギー開発の市場を狙う日本の企業が集結していました。

石油の探査や掘削用に使われる機材を扱うこちらの会社は・・・

大同特殊鋼(アメリカ)の坂田優一郎社長は、

原油価格も昨年末から上昇基調なので引き合いや実際の受注も徐々に伸びている。

こちらは塗料メーカーの日本ペイントマリン。

その塗料はサビを防ぐ効果が高いことから、すでに多くの船での採用実績があります。

ところが海底の石油やガスの開発設備には全く参入できていないといいます。

日本ペイントマリン・マーケティング部の中川誠統括部長は、

非常に参入障害が高い。海洋構造物は試用期間が25年以上で耐久性が重要視される。実績が求められる。

三菱重工コンプレッサ株式会社

実績がモノをいう石油開発の現場。

その壁に挑む日本のメーカーがありました。

三菱重工です。

2015年4月にヒューストンの郊外で天然ガスの開発に欠かせないコンプレッサーの工場を稼働しました。

三菱重工コンプレッサ北米法人の大槻晃嗣社長は、

コンプレッサーは主にガスの圧力を上げる。いろんなガスの種類に対応できる。

工場の中に置かれていたのはコンプレッサーの主要部品である羽根車。

この羽根車が回転するときの遠心力を使ってガスを圧縮するのです。

三菱重工のコンプレッサーはエチレンプラントなどの石油化学工場ではトップシェアを誇ります。

そして今度は未開拓だった天然ガス開発の現場への参入を目指しているのです。

テキサスとルイジアナからここに来るパイプラインは全てガスなのでガスを冷やしたり分離するのにコンプレッサーが必要なはずだ。だからこの地区に注目している。

ところが社長に話を聞くと意外な答えが・・・

既に市場を占有している大手のアメリカのメーカーがいるので我々の信頼性をお客様に理解してもらうのが最大の眼目となっている。シェアはGEが大きい。

天然ガスの液化に使われるコンプレッサーの市場はアメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)がほぼ独占する状態。

三菱重工もまた実績の壁にぶつかっていたのです。

なんとかGEの牙城を切り崩したい三菱重工。

そこに先月、追い風が吹きました。

公益財団法人日本財団

アメリカのシェブロンなど世界的な石油会社8社が共同で技術開発をする組織「ディープスター」と海洋での石油や天然ガス開発を支援してきた日本財団が技術を共同開発する枠組みをついくることで合意したのです。

このために約11億円の資金支援を行うという日本財団。

その狙いはどこにあるのでしょうか?

日本財団の海野光行常務理事は、

海洋石油・ガスの分野は30兆円という大きな市場があるにもかかわらず日本企業はほんの少ししか入ってきていない。技術をどう海洋石油・ガスの分野、掘削の分野に生かしていくのか。技術の生かし方がわからないというところもある。この部分を今回のプロジェクトで埋めていければと。

三菱重工の技術力

この話を聞きつけた三菱重工が早速動きました。

訪ねたのはディープスターの責任者、シャキール・シャムジーさん。

三菱重工の高い技術力をアピールします。

米国三菱重工業・オイル&ガス部門の境亮祐さん、

我々には陸・海・空、そして宇宙と幅広い分野の製品と技術があります。顧客の問題を解決する強力な研究開発の能力を持っています。

これに対しシャキールさんが求めたのは石油会社のニーズを知ってほしいということでした。

あなたがたは技術を提案するがわたしたちはニーズを考える。ニーズに合った解決方法(技術)を示してコストを削減してほしい。ニーズを踏まえた技術の提案であれば、それは革新的なものになる。

この日、三菱重工の担当者たちは石油会社の生の声をじっくりと聞くことが出来たのです。

具体的な課題と期待されているソリューションについて話が聞けた。石油会社との接点が今まで少なかった。売り込むきっかけがなかった。

三菱重工の工場でも顧客との接点を増やす取り組みが始まっていました。

トラブルがあった時にすぐに部品交換できる状態にしている。他社機のローターも保管している。

コンプレッサーの補修や補修中に必要となる予備の部品を保管するビジネス。

ここでは他社の製品の修理も手掛けています。

顧客との接点を増やし信頼を勝ち取ることを狙っているのです。

工場の周りの広大な芝生はこの地に掛ける三菱重工の本気度を示していました。

将来の受注量が増加した場合には工場のキャパシティーを上げるため、拡張する用意がある。

三菱重工はいま、これまで閉ざされてきた石油メジャーの重い扉を開きつつあります。