自動車の売れ行きに大きな影響を与えるモノの1つが燃費です。その燃費の測定基準が変わります。
日本では車の燃費は「JC08モード」という基準で測定されています。2008年10月から導入された基準です。
これが「WLTCモード」という国際的に統一された基準に変わっていきます。この新しい基準で測定した燃費の表示が義務付けられるのは2018年10月からとなっています。
この新しい燃費表示の認可を国から取得することは現在も可能となっており一部のメーカーが早速動き始めています。
燃費の基準が新しくなることで私たちの車選びにはどんな影響があるのでしょうか?
燃費表示への不信
2016年5月、三菱自動車の燃費不正事件では軽自動車の燃費を最大16%よく見えるように誤魔化していました。
国が認可する燃費表示への不信も一気に高まりました。
国土交通省自動車局の髙井誠治さんは、
そもそもカタログに表示される燃費と実際の燃費の乖離が大きいいから、この16%の違いがあっても認識されなかったのではないかと。そういう厳しい意見、ご批判をいただいた。
カタログに表示されている燃費と実際の燃費との乖離が問題視されたのです。
カタログの燃費と実際の燃費はどれくらい違うのでしょう?
e燃費
[blogcard url="https://e-nenpi.com/"]
実際に車を使った時の燃費をユーザーが登録するe燃費というサイト。
このサイトへの投稿ではガソリン車でカタログ燃費と実際の燃費に約2割の乖離が見られます。
燃費が売りのハイブリッド車では乖離が3割を越すものが多いといいます。
株式会社イードのe燃費プロデューサー、石原正義さんは、
最近、燃費をウリにする車だと実際に走らせても、そこまで燃費が良くないケースが多い。実際の燃費がカタログ燃費の約7割。30%程度の開きがあるとみられる。
セイコーモータースクール
[blogcard url="https://ceico.jp/"]
ユーザーが運転に気を付ければカタログに近い燃費で走れるのでしょうか?
埼玉県の自動車教習所で燃費を良くするための運転方法の講習会「エコドライブ講習」が開かれました。
教習車に乗り込むのは参加者の中尾公明さん。まずはいつもどおりに車を走らせます。コースを3周走った燃費は7.6km/Lでした。
今度は講師のJAF東京支部の善養寺雅人さんからアドバイスを受けながら走ります。
アクセルを踏み込む時にグンと踏み込みすぎてしまう。そこを優しく。ストレートの加速の時も極力、一定の速度で走るように。
燃費は良くなったのでしょうか?
結果は9.2km/L。先程より1.6km/L改善しました。
それでも教習車のカタログ燃費は12.8km/Lなのでまだ乖離があります。
参加した中尾さんは、
カタログ燃費を全然私は信用していない。
こうしたカタログ燃費への不信を受けて国土交通省は新しい燃費の測定基準「WLTCモード」を2018年10月から導入すると決めたのです。
国土交通省自動車局の髙井誠治さんは、
より厳しい条件で燃費の評価をする。使用環境というのもなるべく厳密に反映していく。
マツダ株式会社
[blogcard url="http://www.mazda.co.jp/"]
2018年10月の新基準義務化を前に早くも動いたのがマツダです。
7月に発売する新型CX-3のガソリン車で国内で初めてWLTCモードの燃費の認可を取得しました。
燃費の測定方法はどのように変わったのでしょうか?
その現場にWBSのカメラが初めて入りました。
まず変わったのは車を使う時の乗員や荷物を想定して載せる重りの量です。
CX-3の場合、現行の基準ではドライバーと合わせて110kgの負荷をかければよかったところを新しい基準での負荷は155kgと厳しくなりました。
マツダの環境安全技術部、山形弘彦主幹は、
燃費としては若干悪い方向になるが、さらに実用燃費に近づく方向にある。
新基準ではより多い人数での乗車などを想定し実際の燃費に近付けます。
燃費の表示方法も変わります。走行条件ごとの燃費の違いを表示しなければいけません。ユーザーが自分の使い方に合わせて車を選べるよにするためです。
燃費の測定では市街地を想定した時速30キロ前後、郊外を想定した60キロ前後、高速道路の想定では実際の使用状況に近い最高97キロまで出します。
この3つの走行条件の排気ガスを別々に採取してそれぞれの燃費を測定するのです。
その結果、新型CX-3の市街地での燃費は12.2km/L、郊外の燃費は16.8km/L、高速道路での燃費は18km/Lとなりました。
現行のJC08モードでも低速域から高速域までスピードを出していましたが、その平均燃費のみ測定していました。
新基準でのCX-3の平均燃費は16km/Lと現行の基準の17km/Lと比べて1km/L悪化しました。それでもマツダが積極的に新基準を取り入れるのはなぜでしょうか?
藤原清志専務執行役員は、
お客様が自動車メーカーを信頼しなくなるのが一番怖い。ちゃんと実用燃費に近い状態でそれぞれの走行条件で数値を出すことで、いま信頼が落ちているものを上げたい。
関東マツダ洗足店
[blogcard url="http://www.mazda-brandshop.com/senzoku/"]
都内のマツダの販売店。7月の販売を控えた新型CX-3に関心を持ったお客様が早くもやって来ていました。
栄偉業マンが早速出来たばかりのパンフレットを取り出し商談です。
そこには新しい基準で認可された燃費。なんと手書きです。国から認可が下りるスケジュールがわからなかったため手書きで対応することにしたのです。
お客様は、
カタログの燃費と実態が少し離れている。
営業担当者は
今回からは市街地モードやちょっとすいている郊外モード、あとは高速道路モードなど細かく分けて燃費を出している。お客様から言われる燃費に近いのかなと思う。
新しい燃費の表示にお客様の反応は、
実際の走り方に近い数字を出すのは非常に消費者にとって親切だと思う。
販売店も新しい基準の導入に手応えを感じていました。
関東マツダ洗足店の垣本紀雄店長は、
数字をお客様に明確に説明できるのは私たちにとっては安心感がありイメージだけで話さないで済む。
いち早く「WLTCモード」に対応し始めたマツダ。新しい燃費基準の導入で車作りの競争も新たな段階に入ると考えています。
藤原清志専務執行役員は、
正しい表示をして正しい評価してもらう方が日本の自動車メーカーは強くなると思う。「みんなで頑張ろう」という意味では小さい石かもしれないが一石を投じたと思う。