金沢まいもん寿司
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石川県金沢市、この街で目につくのは回転寿司の店です。
市内に30軒以上、全国屈指の回転寿司激戦区といわれています。
それらの多くが地場の魚を武器にしたご当地の店。
大手チェーンにとっては鬼門と呼ばれる街です。
その金沢で行列が絶えない回転寿司があります。金沢まいもん寿司。
全国に8店舗を展開。
人気のヒミツは、
白子ありますよ。
こちら「がすえび」のわさび入っています。こちら「かに身」のわさび抜きです。
よく見るとレーンにも流れていますがお客様のほとんどは直接注文しています。
実はこの店、回転寿司でありながら職人が一貫ずつ握るスタイルなのです。
店の一押しが白身の王様「のど黒」、二貫で702円。能登の塩で食べると濃厚で上品な脂が一層引き立つといいます。
能登半島七尾湾特産の「赤西貝(702円)」。地元北陸の幸が売りです。
1皿二貫130円から、高いものでは820円まで、金沢ならではの金箔も…。
客単価は平均2,700円。回転寿司としては少し高めですが、
味よし、人よし、全部よし。
裏の仕込み場には日に2度は魚が届きます。
これは富山の氷見のサバ。
輪島港から届いたのは仕入れ値でも1匹3,000円はする高級魚「のど黒」です。
パルコヤ上野
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10月24日、東京・上野。
ここに新しくオープンする商業施設パルコヤ。その開業に合わせて金沢まいもん寿司が出店を進めていました。
北陸屈指の人気店が満を持して東京に乗り込もうというのです。
全国に「金沢まいもん寿司」という名を広めるための拠点となる上野店です。
上野店の営業責任者はこれまで5店舗を立ち上げてきた、いわば切り込み隊長、首都圏事業部営業部長の小池寿夫さん(43歳)です。
小池さんは10代から寿司店で修行。その後、銀座の高級店などでも腕を振るった元職人です。
本来の寿司の文化というのは、職人とお客様が意思疎通して楽しみながら食べる。
自分が受け継いできたものを若い世代にも引き継いでいかないと。
オープンまで残すところ10日。新たなスタッフも加わり研修がスタートしました。
この店では職人にも自ら接客をさせます。
宮原くん、その間で沈黙の状態になってしまっている。次もまたお客様に来てもらうのは「人」だから、そこは自分を印象づけていかないと、この先のリピーターにつながらない。
宮原真也さん(27歳)。この店で最も若い職人です。
塩とすだち、おかけになって、すだちを搾って召し上がりください。
実はお客様の前に立って握るのは初めてです。
小池さん、付きっきりで指導をします。
「何食べようか」ってお客様が迷っているときに「おいしい魚たくさんありますよ、いかがですか」って声を掛けると「行ってみようか」ってなるから。
寿司屋はあの中が一番の「華」。この店の一番のポジションなのでお客様を楽しませて、初めておいしいにつながっていくので全力でいかないと。
小池さん、宮原さんには将来、店を担う職人になって欲しいと期待していました。
グルメ回転ずし函太郎
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一方で小池さん、時間を見つけては、
ここも回転寿司ですね。
さまざまなライバルがいる東京の回転寿司を食べ歩いていたのです。
「産直グルメ回転ずし函太郎Tokyo」は気になっていた店の一つです。
北海彩三昧。
北海道函館を拠点に全国に18店舗展開する話題の店。
お待たせしました。北海彩三昧です。
北海道からの直送。ご当地ネタが自慢のようです。
完全な競合店です。
実は近年、実績のある地方の回転寿司店が続々と東京に進出。
どの店もご当地色を打ち出してアピール。生き残りをかけて激しい戦いを繰り広げています。
この日、小池さんが最後に向かったのはスシロー鳥山店。
そして真っ先に注文したのが国産天然魚のネタでした。
大手チェーンが始めた新たな取り組みに小池さん、危機感を感じていました。
スシローさんみたいな回転寿司でも年々レベルが高くなってきているので負けてられない。
オープン
11月4日、上野にできた商業施設パルコヤ。
その中にある金沢まいもん寿司上野店。
営業責任者の小池さんは気合が入っていました。
東京1号店であるこの店がオープンの日を迎えたのです。
午前10時開店、あっという間に席が埋まりました。
金沢の有名店がオープンすると口コミで広がっていたのです。
金沢のお店があるっていうのは聞いて知っていたので、金沢まではなかなか行けないので近場で行けるならと思って来た。
北陸のネタも準備万端。高級魚のキジハタ、金沢ではなめらという名前で親しまれプリプリとした食感です。富山湾でとれる白えび、濃厚な甘みが特徴。
地元から直送したものばかりです。
金沢おいしいなって思った。他で食べれないようなネタもあって。
子供用に一口サイズにしてくれたのが親切。
食べやすいように小さくカット。こうした細やかな心遣いも職人が目の前で握ってくれるからできることです。
外では1時間待ちの行列ができていました。
今日初めてお客様の前で握る宮原さん。
左からシマアジ、タイ、…
緊張のあまり頭の中が真っ白になっているようです。
メジナでした。申し訳ございません。
思い切って声もかけますが、声が小さくお客様に聞こえていません。気まずい雰囲気に…。
長い一日が終わりました。
初日の売上目標は130万円です。果たして?
152万円。
目標を20万円も上回る結果でした。
初日にしては上出来。このままのペース、それ以上というのを狙っていきたい。
一方、もくもくと後片付けをする宮原さんは、
頑張ったんですけど、お客様の間合いに入れるように…難しい。
「あの店入ったらあの人いるよ」って任せてもらえるように頑張りたい。
あとは経験。
カニ
12月中旬、金沢。
小池さん、年末年始商戦の目玉となる商品を仕入れに来ていました。
冬の北陸といったらカニっていうイメージ。
この時期「金沢」の冠を掲げている店でカニを売らないって考えられない。
真っ先に向かったのは金沢港。冬は日本海の幸が一層美味しくなる季節です。
探していたカニがありました。
身はすごくいい。
卵をたっぷり抱えた香箱がに、メスのズワイガニのこと。11月から12月までの2ヶ月間しか漁が許されていない希少なカニです。
ところが小池さん、
ものはいいけど少ない。
実は11月から悪天候が続き、不漁となっていたのです。
特に香箱がにの水揚げ量はこの10年で最も少ないといいます。
当然、価格も跳ね上がり例年の2倍近くまで高騰していました。
さすがに小池さんも手が出せない価格です。
諦めるしかないのか…。
香箱がに
12月中旬、金沢。
金沢まいもん寿司の小池さんが年末年始商品の仕入れにやって来ていました。
しかしお目当ての香箱がには不漁が続き、価格が高騰。ピンチです。
すると、小池さんのもとに近づいてくる男性が…
長年取引をしている水産会社、重福水産の川島和彦さんです。
途方に暮れていた小池さんを川島さんが連れ出しました。
やっていたのは加工場です。小池さんに見せたいものがあるといいます。
水槽の中から出てきたのはあの香箱がにでした。
何かいっぱい出てきたよ。
しかも次々と…
しけを見込んで、これだけ仕込んであるので。
これ、みんなそうですか?
不漁に備えて確保してくれていたのです。その数1,500匹。
香箱がには東京ではあまり知られていないし、食べたことない人もいっぱいいると思う。微力ですけどちょっとでも支えになれればと。
あんなところでやきもきして…早く言ってよ!
地元には心強い味方がいました。
早速、鮮度のいいうちに釜茹でに。
ズワイガニのメスである香箱がに、殻の中にはたっぷりのカニ味噌と卵が。
これはやばい。若い子みたく、これはやばい。
これまで何度となく食べてきたはずですが、これは格別なようです。
これはうそじゃないと思うので。
これで年末年始を武器が揃いました。
食材
その翌日の12月20日、東京・上野。
金沢で仕入れた食材が届いていました。
能登の天然寒ブリ、川島さんが融通してくれた香箱がにもあります。
勝負を掛けたネタをいざ投入。その反響は想像を超えていました。
年末年始商戦
12月20日、東京・上野。
金沢まいもん寿司がオープンして1ヶ月半が経ちました。
香箱がに。
年末年始商戦の目玉、香箱がに。1匹から取れる身の部分はごく僅かです。オレンジ色のものは卵。それをカニ味噌とともにたっぷりと盛り付けていきます。
手間のかかる一品。
香箱がにの軍艦巻き、二貫で820円。
北陸の冬の味覚が凝縮された濃厚な味です。
東京のお客様の反応は、
初めて食べて美味しかった。
本当はダイエット中で食べちゃいけないんだけど、食べちゃいそう。
食べちゃいました…。
あの若手職人の宮原さんは、
日替わり5貫盛り、失礼します。左からばい貝、金時鯛、中とろ、天然ぶり、がすえびです。
本日のお薦めは天然ぶりと香箱がに、かさごです。
見違えるような接客ぶり。堂々とした職人の顔になっていました。
年が明けて2018年、再び金沢まいもん寿司を訪ねるととんでもない行列ができていました。
オープンから2ヶ月あまりですが、早くもこんなお客様まで、
3回か4回、来ている。金沢のおいしい魚が食べれるので。
オープン日の売り上げは152万円でしたが、その後さらに伸ばし最高売り上げは196万円。
地方発、ご当地回転寿司の挑戦は続きます。
漁師も金沢の業者もみんな思いは一緒だと思う。東京の人たちに金沢・北陸のネタを食べてもらいたい。
金沢の人たちの思いも背負って提供しないといけない。
「勝てますか?」
勝てます。勝ちます。
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