[ガイアの夜明け] 大改革!「ニッポンの宿」!(1)

大改革!「ニッポンの宿」!

大滝温泉 天城荘

静岡県河津町。

町の観光名所のひとつが大滝。落差30メートルの滝です。

滝壺のすごそばには露天風呂があります。こんな場所、日本広しといえどもそうそうありません。

数々の映画やテレビのロケ地としても有名です。

その露天風呂を含め東京ドーム10個分の広大な敷地を持つのが天城荘

しかしそんな有名旅館がとんでもないことに・・・。

ここはお風呂だった。

名物の五右衛門風呂は完全に錆びついています。

120帖の大広間は何年も使われていません。

バブルの時代のもの。

天城荘は最盛期には年間10億円を売り上げていました。しかし、ネットを通じたPRや魅力あるプランを打ち出せず徐々に売上は低迷。

そして今年3月に3億2,000万円の負債を抱え破綻。買収されました。

株式会社リバティー

その天城荘にやってきた一人の男。福原良佐さん(61歳)。

天城荘を約1億円で買収。再建を目指す新たな経営者です。

ダサくない? これ。木のドアに替えてもらえよ。

次々と指示を出します。

とにかく今期。今期、黒字にもっていく。

6月7日、天城荘に大型トラックが到着。大改革が動き出しました。

待ちに待った。バリ島で作ってもらって

届いたイスはインドネシアのバリ島から船便で届いたばかり。ロビーを一新しようというのです。

新たなコンセプトはリゾート。若者にまで客層を広げるのが狙いです。

最初のインパクトが一番大事。それでほとんどイメージがつく。

福原さんの改革、そのカギを握るのが若女将の田中智与さん(25歳)。破綻させた前経営者の孫です。

ここでガラッと変えていかないと。自分の立ち位置含めて。今までの天城荘と同じことをやっていこうと思ったら、また潰れるよ。

有名温泉旅館が選んだ再生の道。試練の夏を追いました。

一度は負けても、もう一度勝ちにいく。

若女将とベテラン従業員の確執。

改革の舞台裏から見えてきたものとは?

対馬

福岡・博多港。船に乗り込む福原さんの姿がありました。

1年のうち、3分の1家に帰って、3分の2は出張。それを33年くらい続けている。

高速船で2時間、やって来たのは長崎県対馬。

福原さんは全国各地を巡り小さな宿を対象にしたビジネスを展開しています。

島に降り立つと、

これ免税店。

対馬ならではの光景が広がります。

メニューも日本語と韓国語も必ず併記している。

ここ数年、対馬は身近な海外として韓国で人気。2016年は約29万人が押し寄せました。

民宿 つりの宿

この日、福原さんが訪れたのは50年続く釣宿「民宿 つりの宿」。日本人常連客の減少に悩んでいました。

リピーターは我々と同じで年をとるから。

神宮安實さん、

うちは2代目になると客足がガタッと落ちた。

それは「ネット集客」。全部取られちゃう。

福原さん、ホームページをリニューアルしてもっとアピールすべきだと訴えます。

こちらの宿、以前知り合いにホームページを作ってもらいました。でも4年以上更新はストップしたまま。

面倒くさいですよね?

もう忘れた。パソコンも講習を受けたけど。

ちゃんとした情報発信ができれば、この宿はもっともっと。

商談成立です。福原さんの会社が新たにホームページを作り集客のサポートもしていくことになりました。

こうした小さな宿は全国に数万件。いまや宿泊予約のほとんがインターネットというなか、その多くが取り残されているといいます。

起業した時に日本全国を自分が歩きたいと、集客に困っている人たちをサポートできるような仕事がしたくて。

ビジネスプラン

福原さんの会社、リバティーは静岡市にあります。

設立は1985年。社員は約80人、年間の売り上げは約8億円です。

現在、全国3,000軒の宿と契約。ホームページの作成とその管理・運用を行っています。

さらに集客のサポートまで。リバティーは契約している宿の客室状況を把握、空いている部屋を各予約サイトに掲載してくれます。

夏前、結構空いているようなのでお子さまに対して半額プランを。

空き部屋が埋まらない場合はプランの提案もします。

契約料は月額2万円、その他、集客サポートで売り上げた宿泊代の5%が手数料としてリバティーに入る仕組みです。

「住吉館」は福島県の旅館。ホームページをリニューアルしネットでの売り上げが8倍になりました。

松乃湯

サポートはネット上だけではありません。

2ヶ月に一度は顧客のもとに足を運び、集客の強化について話し合います。

リバティー熊本支店の望月一史さん、

松乃湯の女将さんに対する口コミの評価が非常に高い。

現在、この宿の口コミの評価は5段階で4.2。さらにポイントを上げるためのアドバイスをします。

お客様の思い出をもっと増幅させるために口コミに返信してもらえるとありがたい。

福原さんには壮大な夢があります。小さな宿を連携させて大規模なホテルチェーンに対抗させるというものです。

今まで大規模宿泊施設の後塵を拝していた人たちが、ちょっと進めば大規模に負けないだけのパワーを持てる。

エクスペディアホールディングス株式会社

6月6日、リバティー本社にやって来たスーツ姿の男たち。

この日、世界最大級のオンライン旅行会社と商談です。

エクスペディア、世界43万軒もの宿泊施設と提携をしています。

日本を統括する責任者自ら出向いてきました。

エクスペディアHDのマイケル・ダイクス代表取締役は、

地方の宿泊施設を獲得したい。インバウンドの需要もあるので。驚いたのはいろいろな宿泊施設が御社のシステムを使っている。

エクスペディアの提案はリバティーとの連携。日本の小さな宿を世界に紹介したいというのです。

我々は小さな宿を支援している会社で困窮している集客に関してエクスペディアの力を借りて、海外のお客様が安心して来られる状況を作れたら。

世界最大級のオンライン旅行会社と手を組むことが決まりました。

天城荘

そんな福原さんにとっても伊豆の天城荘の再生は大きな挑戦です。

これまで数多くの宿をサポートしてきました。

しかし、今回は宿の経営の全責任を負います。

滝もあるし、大自然もあるし、相当な資源を持っているから、それを生かせなければ経営能力はない。

自らの手腕が試される大仕事。失敗は許されません。

今回、新たに設ける食事処。以前は物置小屋でした。

壁だったのをぶち抜いて。こんないい景色を。

福島に旅館があって、そこの旅館があぶり焼きを食べさせて。どうしても宿をやる時は炭火焼きをやりたかった。

32年間、全国の宿を分析してきた経験が生かされています。

田中智与さん

一方で課題も山積みでした。

以前の天城荘のホームページは写真を並べているだけ。地味でパッとしません。

そして料理、猪鍋を中心としたメニューは長年変わらないまま、飽きられていました。

さらに福原さんが最も気掛かりなのが25歳の若女将、田中智与さんの力量でした。

若女将があまりにも稚拙で無責任で、100点満点で20点。

実は智与さん、天城荘の前経営者の孫。

私が3歳の時に天城荘にいる写真。

元々、東京生まれの東京育ち。旅館業とは無縁の生活を送っていました。

二十歳の時、それまで女将をしていた叔母が亡くなり急遽、宿を手伝うことになったのです。

えーって思った。結婚の不安とか東京で過ごしたかったとか、家のことだから支えないとダメだし。

今年1月から正式に天城荘の若女将に。

リバティーに経営が移ったのはそのわずか2ヶ月後。彼女にとっても青天の霹靂でした。

土足でスーツを着て、がつがつ入ってきて。急にもう全部変え始めた。

今回、福原さんは従業員の雇用を継続しました。しかも旧経営陣である智与さんを若女将としてあえて残したのです。

その理由は、

ひつとのシンボルとしてやってきた子だから。このシンボルをしっかり守ってあげなければいけない。シンボルから経営者に変えていかないといけない。

ベテラン従業員

しかしその若女将、若さゆえに様々な軋轢を生むことに・・・。

おかわり、美味しいですか? はい、どうぞ。皆さんは?

それは夕食の時間に起こりました。

食べている間におかわりを聞かなくていい。食べ終わってから聞けばいい。食べている間におかわり聞くと。

え? もうなくなりそうだったから。

まだお箸が進んでいるからさ。

おかわりを勧めるタイミング、ベテラン従業員と意見が合いません。

あとちょこっと、お客様が食べている頃に「よかったらおかわりしてください」って普通は聞くよね。

訳の分かんない娘がいるんだよ。

気が付いたことを言う。それはまだ早い。その場で言うなんてもってのほか。うまくやるためには盛り立ててもらわないと、自分ではできないんだから。

経験も実績もありません。あまりに荷の重い女将の役割。

女将さんといえば、みんながついていく人。私にはその力がまだない。

ひいおばあちゃんとか自分の家に対する思いが強いのかもしれない。

福原さん、智与さんを呼び出しました。あることを考えていたのです。

ここでガラッと変えていかないと。自分の立ち位置含めて、今までの天城荘と同じことをやっていこうと思ったら、また潰れるよ。だって潰れたんだから。

芦名

8月上旬、福島県会津若松市の東山温泉。

智与さん、リバティーの福原さんの勧めでここの宿に女将研修に来たのです。

芦名は1975年創業の純和風旅館。レトロな雰囲気が人気で予約が取れない宿として知られています。

福原さんとは20年来の付き合いだという女将の和田美千代さん。

お客様が到着すると女将が真っ先に出迎えます。すぐさま荷物を受け取り館内へ。率先して動きます。

一方で出しゃばらず黒子に徹することも。

そしてまた自ら荷物を手に部屋へとお客様を案内します。

普段の自分とはまったく違う女将の動き。

暇を見つけては掃除まで。

本当は全部自分でやらないといけない仕事。できないから人にやってもらっている。やるのは当たり前みたいになるとうまくいく。「やってもらっちゃった」って思うじゃない働く側も。

智与さん、これまでのことを女将に打ち明けました。

いろいろ嫌なこと言われろ、言われれば言われるほど身になるから。

悩める若女将、果たして変われるのか?

りばてぃ リゾ・音 AMAGISO(天城荘)

今年3月、経営破綻した伊豆の温泉旅館「天城荘」。

「りばてぃ リゾ・音 AMAGISO」として再出発しました。

社長の福原さんと若女将の智与さん、再生に向け歩みを進めています。

8月16日、リバティーによるテコ入れが始まって5ヶ月。徐々に成果が見え始めていました。

夏休みに入り連日満室が続いていたのです。

ホームページに滝が流れる映像があって、すごく自然を感じられる宿なのかな。

平凡だったホームページはドローンを使った臨場感溢れるものに。

長年変わらず飽きられていた料理、旬の食材を使った会席料理に一新しました。これまでは一度に全部出していたものを一品ずつ出して味わってもらうスタイルに。

そして新たに設けた食事処「明池亭」。囲炉裏では新鮮な海の幸がお客様を喜ばせていました。

夕飯の素晴らしさ、おいしかった。

そして若女将は、宿の顔として笑顔で接客に励む一方、裏では中居さんの仕事を積極的に手伝うようになっていました。

みんなぞれぞれ自分の仕事をやっているので。

これまでの若女将とは見違えるような仕事ぶり。

ベテランの従業員は、

よくやるようになったでしょう。うれしいです、私は。

洗い場に入ってビシャビシャになりながら洗い物をやっていた。褒めにいって手をたたいて喜んだ「えらい」って。ああいうのを見るのは嬉しい。みんなのやる気が起こる。

夕食の時間、まだまだ料理を一品ずつ出すスタイルに慣れていないスタッフ。

ごめんなさい。私が間違えて先に持っていった。

ベテランの中居さんが出し間違えたようです。

でも若女将、優しく手を添え背中を押します。

先月からすると変わった。みんなも頑張れる。

そんな若女将の姿を福原さんもしっかりと見ていました。

伊豆、天城荘の再生。福原さん、さらに大きな構想を抱いていました。

ここはキャンプ場を作って。

敷地内の荒れ地をキャンプ場として整備する計画も。ファミリー層を獲得するのが狙いです。

サビだらけの五右衛門風呂は、

昔のお客様は五右衛門風呂に入りたくて来る人が多い。何とか復活させたい。

東京ドーム10個分の広大な敷地。やれることは山ほどあります。

温泉を戻して、ここに露天風呂。

客室もまだほとんど以前のままですが、若女将は、

ここの壁を抜いて広い雰囲気の部屋を作りたい。

若女将の夢も膨らんでいます。

臨時ボーナス

8月24日、忙しかった夏も一段落。

この日、福原社長は従業員を集めました。

この夏を何とか乗り切ってもらったということで。

再生が始まって5ヶ月、今期黒字化の見込みが立ち思い切って臨時ボーナスを出すことにしたのです。

21年間で初めてでございます。

宿の再生、そのキーポイントはひとえに人材の再生にありました。

もう一度、若女将が敗者復活戦で、この宿を切り盛りしていく気持ちになってくれた。後継者として、いつか社長になれる人物に育ってほしいと思っている。

期待を背負うことになった若女将は、

良いスタッフがいっぱいいて「応援するから」とか「頑張ろうね」とか、みんなが天城荘で働いて良かったと思えるようにしたい。

福原さんは、

小規模旅館は一軒一軒、全部違って、漁師のお父ちゃんもいれば、海女さんのお母さんもいれば、そこでしか味わえないものがあったり、そこでしか聞けない話があったり、日本の伝統文化を守るのに小規模旅館は絶対に継続していかないといけない。

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