[ガイアの夜明け] 食欲の秋を制する!~おにぎりVSサンドイッチ~(1)

食欲の秋を制する!~おにぎりVSサンドイッチ~

株式会社ローソン

宮崎県の最南端、串間市の沖合を行く一隻の漁船。

その船に乗っていたのはローソンのおにぎり開発責任者の堤洋平さん(39歳)。

15分ほど走ると見えてきたのは海に浮かぶ生け簀です。

そこから水揚げされたのは3年養殖し、体長1メートルに成長したブリ。潮の流れが速いこの海域で育てることで天然にも負けない身のしまったブリになるといいます。

堤さんはそこに目を付けました。

養殖のレベルがここ数年上がっていて量も品質も安定している。

とれたてのブリ、もちろん刺し身でも美味しいのですが、これを堤さんはタレに漬けていきます。5分ほど焼くとブリの照焼の完成です。いい照り具合です。

そこで取り出したのが、

おにぎり製造キット。持ち歩いていて、おにぎりがすぐできるようにしている。

常に携帯しているという専用キットを使っておにぎりを作り始めました。

慣れた手つきです。

海苔もいつも持ち歩いているそうです。

できました。

即席で作った海苔照りのおにぎり。あまり無い組み合わせですが、

すごくやわらかい。味がしっかりしているのでおにぎりには合う。これはいけるかも。

ローソンが社運をかけた「おにぎり改革」。それを託された堤さんは半年以上前から全国を飛び回っていたのです。

一方、おにぎりに対抗するのは老舗スーパーの看板商品、こだわりのパン。

売上アップを狙いこれまでにないサンドイッチの開発に乗り出していました。

食欲の秋を制するのはどちらなのか?

新たな仕掛けに動き出した小売業界の奮闘を追いました。

おにぎり大改革

10月末の新発売まで残り2ヶ月なった8月下旬。

ローソンではおにぎり開発のプロジェクトチームが集まっていました。

メンバーはローソンのおにぎりを専門に製造する工場担当者など総勢10人。半年以上前から毎週会議を重ねてきました。

チームリーダーが入社18年目の堤さん。2年半に渡っておにぎり開発に携わり、これまで150以上の新商品を生んできたヒットメーカーです。

今から15年前、2002年11月にローソンは素材にこだわった「おにぎり屋」を立ち上げました。

高級路線のおにぎりを業界で初めて打ち出すと大ヒット。

しかし、その後はライバル各社も同様の商品を続々と発売したのです。

しかも2016年、ファミリーマートがサークルKサンクスと統合したことでローソンは店舗数で2位から3位へ。

危機感が増す中で仕掛けるのがおにぎり大改革だったのです。

この日の議題は堤さんが特に力を注ごうとしている商品のリニューアルについて。それが「焼さけハラミ」。

この商品をどう改善していくかは大きなテーマ。

焼さけハラミ

「焼さけハラミ」は15年前の大幅リニューアルの際に開発された商品で1つ168円。

脂が乗った大きなサケの切り身が入っているのが特徴です。

高級おにぎりシリーズの中では売り上げNo.1の看板商品でもあります。

しかし、

これについてのお客様の意見は何口食べても具が出てこないで下の方にあるとか。まず具のサイズを均一化させないと。

実は消費者アンケートでは具の大きさがバラバラで、中には小さすぎるものがあるとの意見が・・・。

タイ・ユニオン・フローズン

焼さけハラミの課題を解決するため堤さんが向かったのはタイ・バンコク。

訪れたのはバンコク市内から車で1時間ほどの場所にある提携している工場です。

ここで焼さけハラミおにぎりの具材を加工しています。

南米チリで養殖されたサケをこの工場でカットし日本のおにぎり工場へ送っています。

見せてもらったのは原料となるサケ。

しかし、その大きさにバラツキがあります。

営業責任者のジョン・コンニーさんは、

大量に仕入れるのでどうしてもサイズに差が出てしまうんです。中でもこうした小さいサケからハラミを取ろうとすると薄い部位しか取れません。

具に使われているハラミとはサケの腹の部分。

小さなサケの場合、端の方はどうしても薄くなってしまうといいます。

そこで堤さん、

この原料を規格外として使わないことはできない?

少しでも原材料は無駄にしたくありません。生産性がとても悪くなってしまいます。

それでも堤さんは今後、小さい部位は具に使用しないでほしいと指示。その代わり、残った部分は別の商品に利用できないか考えることになりました。

東洋冷蔵株式会社

次に防寒服に着替えて堤さんが向かったのは、

すごい!

マイナス20度、サケの保管倉庫です。

これは壮観ですね。

おにぎりの具として使うには十分な量が確保されているように見えますが、現場担当者の東洋冷蔵の斉藤聡さんからは、

サーモンの相場ですが右肩上がりでどんどん上がってきている。

世界的な寿司人気などで需要が高まり、ここ1年で1.5倍も価格が跳ね上がっているといいます。

ここまで高いのは私の記憶の中でもない。過去最高水準に近い。厳しい。

看板商品の改革に向け堤さん、新たな課題を抱えました。

伊藤一人さん

打開策が見つからないまま帰国した堤さん。

この日は進捗状況を伝える会議です。

上司が15年前のおにぎり改革を行った商品本部本部長補佐の伊藤一人さん。社内ではおにぎり開発のレジェンドと呼ばれています。

堤さん、サケの原料高騰について報告です。

今の価格では持ちこたえられないのでおにぎりの値上げはやむなくと思っている。

しばらく黙って聞いていた伊藤さんは、

若干は値上げをせざるを得ないが品質は絶対に維持して、満足度を下げてはダメ。前回並みとかダメ。何の努力もしていないことになる。別の方法でアプローチして。

時間ないよ、できる?

できるというかやって。

値段を上げる分、新たな付加価値を付けて欲しいという意見。堤さん、踏ん張りどころです。

イチビキ株式会社

上司への報告から2週間後、焼さけハラミの課題の解決に向け堤さんはある場所に向かっていました。

訪れたのは愛知県豊川市の調味料メーカー、イチビキの第1工場。

創業から245年という老舗です。

味噌や醤油を中心に全国に販売しています。

実は堤さん、ある調味料に目を付けていました。それが「塩こうじ」です。

うちの塩こうじの特徴は他社よりも塩分が控えめで、他の商品よりもうま味が増す。

食材を柔らかくし、うま味を引き立てるといわれる塩こうじ。魚特有の臭みも軽減できるということでう。

堤さんはここの塩こうじを焼さけハラミに使いたいと考えていたのです。

製造工程もひと手間増えるので大変になるが、美味しさのためにやれることは何でもやっていきたい。

日本クッカリー株式会社

新おにぎり発売まで残り1ヶ月を切った10月6日、

堤さんは契約するおにぎり工場を訪れていました。

そこには塩こうじに漬けられたハラミがありました。

この日、試作品を作るのです。

焼くのは全長10メートルもあるベルトコンベア式のオーブン。

こちらが温度設定。

まずは従来の焼さけハラミの設定、240度、6分で試してみます。

うま味がより上がって臭みも取れて美味しくなればと思う。

果たしてどんな焼き上がりになるのか、気になります。

そして6分。

ちょっと焦げている。厳しい、このままでは。

塩こうじに漬け込んだことで思った以上に焦げ目が付きすぎてしまいました。これでは商品としては使えません。

もう一度、設定を変えてやり直し。

すぐさまオーブンの温度を下げ時間も短めにします。200度、4分半にします。

今度はどうか?

下げ過ぎましたね。弱い。香ばしい感じを出さないと美味しそうじゃない。

しかも中心温度を測ってみると、

ダメですね。

基準にしている85度に達していませんでした。

温度と時間を調整して再び挑戦。塩こうじを使うのは初めての試み。何度も繰り返します。

果たして?

いい感じ。ちょうどいい。

見てみると表面に付いた塩こうじが絶妙な焦げ目を出していました。ツヤツヤとして食欲をそそります。

その場で味見、

サケのうま味がしっかり出ていてすごく美味しくなった。いけそうな予感がしてきた。

最終プレゼン

数日後、勝負の時です。

この日は試作品の最終プレゼン。

ここで認められれば商品化が決まります。

堤さんも緊張気味。

「合格率は?」

半分半分。非常に厳しい。

ジャッジを下すのはおにぎり開発のレジェンド、伊藤さんです。

今回の提案は塩こうじにつけ込むことでより美味しさを上げていこうと。

塩こうじ漬けの焼さけハラミ。レジェンドの評価は?

魚の臭みが取れて食べやすくなっている。満足度はかなり上がっている。昔みたいにバンバン売ってほしい。

正式に商品化が決まりました。

全面リニューアル

そして新おにぎり発売前日、おにぎり工場では一斉に生産が始まりました。

今回は15年ぶりの全面リニューアル。

これまで塩水で炊いていたご飯を真水に変更し甘みを引き立てます。

最後に表面にふる塩はご飯に馴染みやすくなるよう粒子を細かくしました。

海苔も焼き加減を強めにしてよりパリパリ感を高めました。

そして具材も大幅にリニューアル。例えば販売個数No.1を誇るシーチキンマヨネーズは、

今までのシーチキンにカツオを加えた。よりうま味が上がるのではないかと。

うま味成分であるイノシン酸が多いカツオを加えることでさらにうま味をアップさせる作戦。

具の量もこれまでの1.6倍に増量しました。

そしてあの焼さけハラミ。具の大きさを統一し塩こうじ漬けという新たな付加価値も付けました。

海苔は1つ1つ直巻きです。

パッケージも高級感溢れるデザインに一新。

値段は30円アップしましたが自信作に仕上がりました。

新おにぎり発売当日

10月31日、新しいおにぎりの発売当日。

昼時のローソンTOC大崎店の店内を覗くとおにぎりコーナーには人だかり。

お客様が次々に新しくなったおにぎりに手を伸ばします。

中でも売れていたのはあの焼さけハラミでした。

新発売だったので買った。すごくアピールしていた。

焼さけハラミのファンだという男性、食べた感想は、

おいしい。お米もしっとりしていて好き。

この店では今までの焼さけハラミより倍の売り上げ。

おにぎり全体でも全店舗で前の週より2割増の売り上げを達成しました。

堤さんは、

ようやくここにたどり着いたというところ。これで終わりじゃない。愚直にお客様の声をしっかり聞いて、ニーズはどこにあるのかを探し続けて変化し続ける。それが一番大事。

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