楽曲の著作権料を徴収して権利者に配分する業務を行っている団体「一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)」が新しい方針を明らかにしました。
それは民間の楽器教室から著作権使用料を徴収するというものです。
楽器教室側からは戸惑いや反発の声が当然聞こえてきます。一体、どういうことなのか?
MGSミュージックスクール
[blogcard url="http://mgs-school.jp/"]
東京・世田谷区にある楽器教室「MGSミュージックスクール」。
先生と共に熱心にピアノを練習する女の子がレッスンの最後に弾いていたのは2016年に話題になったヒット曲「PPAP」。
楽曲の著作権を管理する一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は、2018年1月からこうした楽器教室の練習の場でも著作権料の徴収を行う方針を発表しました。
その著作権料は年間受講料の2.5%を検討しているといいます。
これに対し生徒の保護者の反応は、
何か納得はいかない。
教室にかかる必要があるのかなと。
教室の運営者であり自らもミュージシャンの顔を持つ徳丸浩二社長は複雑な心境だといいます。
教室だからいい、コンサートはだめという線引きは難しい。保護者にどう納得してもらえるかが肝。できれば徴収はしないでほしい。
一般社団法人日本音楽著作権協会
[blogcard url="http://www.jasrac.or.jp/"]
大きな戸惑いを生んだJASRACの方針。その本部を直撃しました。
大橋健三常務理事は、
受講料を徴収して楽曲をレッスンで利用している以上は楽曲を作った人に対して一定のリスペクトをしてください。
JASRACは練習のために生徒の前で楽曲を演奏するのは著作権法が定める「公衆に聞かせる行為」であり使用量が発生すると主張。
使用料を徴収する対象は当面は大手の一般財団方針ヤマハ音楽振興会や株式会社河合楽器製作所などに限定するといいます。
楽器店や楽器メーカーがやっている楽器教室というのは、ビジネスモデルは楽器の販売促進。音楽文化を担うビジネスで作品を作った人に対価を払うつもりはないというのは到底理解できない。
音楽教育を守る会
こうしたJASRACに対して音楽教室側は猛反発。
使用料を徴収される対象となった大手楽器教室や指導者団体は「音楽教育を守る会」を結成。JASRACに方針の撤回を求める構えです。
音楽教育を守る会の発起人で一般社団法人全日本ピアノ指導者協会の専務理事の福田成康さんは、
先生が生徒に見本で弾くものを公衆の現場で弾く演奏と同じように課金する。普通の日本人の感覚として考えられない。
「著作権料がかかると負担するのは生徒か教室か?」
最終的にはレッスン料が上がると思う。
宇多田ヒカル
宇多田ヒカルさんなどミュージシャンの中にはJASRACの方針に疑問を示す人も現れています。
宇多田ヒカルさんはTWITTERで、
もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使ってほしいな。
著作権料
JASRACに音楽の著作権料を支払わないとならない業種や場面はたくさんあります。
カラオケボックスの場合、部屋の大きさで使用料が決まっています。店員が10人までの場合は1室、1ヶ月で4,000円です。11~30人だと8,000円、51~100人だと1万6,000円になります。
漫才やマジックなど演芸で音楽を使う場合は会場の定員が200人までの場合だと入場料が無料でも曲の使用料が1,200円かかります。入場料が5,000円の場合は2,000人規模だと1万9,800円です。この額を支払えば時間内に何曲掛けても大丈夫です。
パチンコやパチスロから流れる音楽は1月から徴収が始まったばかりでパチンコ台を作ったときに1台1曲あたり50円となっています。初年度の今年は安く設定されていて3年後には80円になる予定です。
このように音楽を利用するさまざまな場面で著作権料の支払いが発生しますが、今回の楽器教室の徴収について専門家は一体どう見ているのでしょうか?
福井健策弁護士
著作権法に詳しい福井健策弁護士は、
最も踏み込んだ、かなり微妙な領域についに手を伸ばしたのが今回の音楽教室。
「楽器教室の練習というのはプロが見ても微妙な領域か?」
公衆に聞かせるための演奏が権利の対象と著作権法には書いてある。裁判になったとして音楽教室での練習・稽古というのが公衆に聞かせるための演奏であると裁判所が判断するかどうかは五分五分。