千葉県の房総半島をのんびり走るローカル電車「いすみ鉄道株式会社」。
いすみ鉄道株式会社が鉄道業界の注目の的になっています。
いすみ鉄道株式会社
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いすみ鉄道株式会社では休日にもなると都心の満員電車に匹敵する混雑ぶりです。
お客様のお目当ては満開の桜と菜の花が楽しめる田舎の景色です。
国吉駅
国吉駅の売店には女性客が大勢いらっしゃっています。
女性客のお目当てはいすみ鉄道株式会社とムーミンのコラボ商品。
なかなか見ないものもあって、すごくワクワクしている。
この売店のムーミングッズの品揃えは日本一で、多い月には200万円を売り上げます。
いすみ鉄道株式会社ではムーミンのラッピング電車が運行しています。
ムーミンや菜の花などを使ってファミリー層や鉄道にはあまり興味を示さない女性客を呼び込んでいます。
いすみ鉄道株式会社の歴史
いすみ鉄道株式会社の前身は1930年に国鉄の木原線として開業します。
しかし赤字路線となり1987年の国鉄民営化に伴い自治体と企業が出資する第三セクターに引き継がれます。
ピーク時には100万人が利用していましたが人口の減少に伴い乗客は激減。
今ではピーク時の3分の1になっています。
2008年には「2010年までに業績を回復できなければ廃線」というところまで追い込まれました。
しかし2010年から売上は回復したことで鉄道業界から注目を集めることになりました。
復活の理由
いすみ鉄道株式会社の復活の理由のひとつがイベント列車です。
イベント列車には伊勢海老特急お刺身列車(1万5,000円)や居酒屋列車(5,800円)など予約の取れない人気のプランが多数あります。
いすみ鉄道株式会社は地元の人を運ぶ以外に「観光列車」として売り上げを回復させたのです。
旧型ディーゼル車両キハ
ピンポイントで狙ってお客様を集めたものが昭和の香り漂う旧型ディーゼル車両キハです。
JRが廃車にする車両を安く買い付けました。
その結果来てくれるようになったのが「鉄道マニア」です。
「写真を撮るだけでもいいので来て」と言ってくれる鉄道会社は他にはない。
「撮り鉄」は鉄道会社に敬遠されることが多いですが、いすみ鉄道株式会社では大歓迎。
だから鉄道マニアのいすみ鉄道株式会社は聖地的存在となっています。
他にも切符を昔ながらのハサミで切る演出や、座席のシートを国鉄時代の青色に張り替えたり、中釣り広告も国鉄時代のものを使用しています。
鳥塚亮社長
いすみ鉄道株式会社の鳥塚亮社長は鉄道に魅せられて50年の筋金入りの鉄道マニアです。
自宅には鉄道マニアが喜びそうなアイテムが多く集められています。
最初はよそ者だったので、何言ってんだ、航空会社にいた人間に田舎のことが分かるわけないと。
1960年に東京で生まれた鳥塚亮社長。
子供の頃は時刻表が愛読書という鉄道少年でした。
就職の時は希望する鉄道会社に新卒の応募がなかったためイギリスの航空会社に勤務。
転機は2009年、いすみ鉄道株式会社が経営立て直しのため社長を一般公募。
鳥塚亮社長は50歳目前でしたがエリート航空マンの地位を捨ていすみ鉄道株式会社の社長に就任します。
しかし廃線も噂された赤字路線。
こういうローカル線があったら、自分は乗りに来たいと思うかどうか、わたしは乗りに来たい。だから絶対にお客様は来る。
お土産
いすみ鉄道株式会社の価値を信じて、外部の視点で観光客や鉄道ファンを呼び込んだ鳥塚亮社長。
お客様にお金を使って頂く仕掛けも色々と作っています。
売店でお土産として販売している「犬釘」。
犬釘はレールを枕木に固定する釘です。
錆だらけの犬釘を1本300円で販売しています。
また線路に撒かれていた赤い石も販売する予定です。
赤い石は何十年も線路を支えてきた。ブレーキをかけて車両の鉄粉が飛び散って赤くなったことが分かる。
この石の謳い文句は「パワーストーン」
いすみ鉄道株式会社自体が廃止にならずに生き延びた。キハも本当ならスクラップになるはずが生き延びている。だから「パワーストーン」。買った人が100人か200人がニンマリしていればそれでいい。
このような方法で鳥塚亮社長はいすみ鉄道株式会社の最高売上を更新しました。
キャッチコピー
鳥塚亮社長はいすみ鉄道株式会社の魅力を表すキャッチコピーを考えました。
ここには、何もないがあります。
人口の90%は「「何もないが」があります。」と言っても来ない。だが10%くらいの人は「何もない」と聞くと「面白そう行ってみたい」と思うはず。10両編成の特急列車が着いて1両分がいすみ鉄道株式会社に乗り換えてくる。単線で1時間に1本、1両の列車しかない、いすみ鉄道株式会社の「商品の供給力」。超えるものを望んでもしょうがない。
万人受けをする商売は必ず東京が勝つ。田舎の商売は違う。100室のホテルを毎日65%の稼働率にすることは田舎ではできない。3部屋の露天風呂付きの部屋を2部屋埋めることなら田舎でもできる。こういうことが田舎の商売であるべき。
ローカル鉄道は男性の趣味として定着しているが、「鉄道マニア」「男の趣味」として長年やってきてダメになっている。だからターゲットは女性。だから「ムーミン列車」。航空会社にいるとよく分かるがヨーロッパ旅行の90%は女性客。女性はお金を持っていてフットワークが軽く行動力がある。男の人向けの鉄道雑誌で「ブルートレイン」の記事を見ても書いてある、「いつかは乗りたいブルートレイン」。「それじゃダメ、今乗れよ」と思う。「俺も定年になったらブルートレイン乗ってみたい」と思っても結局ブルートレインは全部なくなってしまった。