[ガイアの夜明け] どこへ行く?ふるさと納税(2)

どこへ行く?ふるさと納税

伊那市

アルプスに抱かれた人口約6万9,000人の長野県伊那市。

この町も総務省の通知に揺れていました。

困惑の表情を浮かべるのは白鳥孝市長。

来るべき時が来たなと。どういう解釈をするのかというのが第一印象。「資産性」の部分とか。

伊那市のふるさと納税特設サイトにずらりと並ぶのは家電製品です。10万円の寄付の返礼品としてテレビやオーディオ、30万円の寄付にはスチームオーブンレンジ、人気海外メーカーの掃除機もあります。

2年前から家電を返礼品に加えたところ寄付額は急上昇。2016年度は約72億円を集め、全国2位でした。

そんな矢先に出されたのが総務省の通知です。

資産性の高い電気製品は送らないように明示されていました。

「地域への経済効果等のいかんに関わらず送付をしてはいけない」というくだりはちょっと、地域の経済が元気になることが趣旨だったので、私としてはこれは削除してほしい。

町を行くと電気製品関連の工場が点在しています。大手から中小まで約20の企業があるのです。

株式会社赤羽電具製作所

中には生産量日本一の部品もありました。

従業員50人ほどのこの会社が製造しているのは抵抗器と呼ばれるもの。電気の流れる量をコントロールして製品の故障を防ぐためのものです。

営業統括本部の石川賢一さんは、

基盤1枚あたり数個から数百個。電気が流れるものには全て基盤がつく、基盤には必ず抵抗器が使われる。

近年は安い海外製に押されていました。

これが空いているライン。昔は20ラインがフルに稼働して2交代で、それこを作りきれない。今は余裕で作れる。

こうした電気製品を扱う企業の数は最盛期の3分の1にまで減ったといいます。

低迷する産業を活性化させたいと市は地元の製品が使われている家電を返礼品に採用しました。

長野県電機商業組合

さらに廃業が相次ぐ小さな電気店を救う狙いもあります。町の電気店組合を通じて商品を買い上げることで下支えすることにしたのです。

長野県電機商業組合伊那支部長を努める伊藤千織さんと息子の義記さん。この日も全国への発送準備に追われていました。

返礼品特需で店は初めて黒字に転じたといいます。

電気屋を継ぐと決めたが、どこに希望を見出せばいいか分からない部分もあった。だいぶ先が明るくなった。

しかし一方で大きな不安もありました。市があの総務省からの通知に対してどう対応するのか、死活問題だったのです。

それでも伊那市側が曲げずにやると言ってくれたらうれしい。明らかに伊那市も町おこしをしていると目に見えている。そこら辺を考えてくれたらありがたい。

伊那市の決断

通知が出されて10日余りの4月12日。この日、市長が各部署の責任者を集めました。

通知に強制力はないのですが従うかどうか協議をすることにしました。

例えば資産として見るか見ないか、そういう切り口から見ていくと資産の評価にあたるのかどうか?

資産性の高いもので10万円以上の物を減価償却資産にあてていくルールがある。10万円未満の家電は「資産性の高いもの」にあたらない。

税務上では10万円未満のものは消耗品扱いになります。返礼品にもそれを当てはめられるのではないかというのです。

翌日、ふるさと納税担当の職員が訪ねたのは電気店組合の伊藤さん親子のもとです。市の新たな方針を伝えに来たのです。

通達の中で家電製品が対象になっていて、高価なものというところで市として検討した結果10万円以上のものは資産性の高いものになるという判断から29年度以降は10万円以上のものに関しては取引は終わり。その代わり10万円に満たないものは今まで通り取り扱いをする。

半ば諦めていたという2人は一安心です。

孫も来た。

生まれたばかりの孫娘、なんとか家族の生活は守っていける、そのはずでした・・・、

ところが1週間後の4月21日、高市総務大臣は、

伊那市の考えについては報道などで承知している。ふるさと納税の趣旨に反する返礼品として電気・電子機器など資産性の高いものを地域への経済効果のいかんに関わらず送付しないよう地方団体に要請をしている。今回の伊那市の対応については通知の趣旨にそぐわないものだと考えている。

伊那市の独自基準は認められないというのです。

一方、総務大臣から名指しで批判された格好の伊那市、緊急会議が開かれることになりました。

事業者にも配慮し国にもという非常に難しい洗濯をしなくてはいけない。国にけんかを売るなんてことは考えていませんので。

一度は家電を続ける判断をした市長、揺れていました。

返礼品の見直しについて国はどう考えているのか、制度を管轄する総務省市町村税課の池田達雄課長は、

地場産業であるかどうかというのは非常に難しい。そこで生産しているものもあれば加工しているものもある。一部の部品を製造しているというケースもある。地場産業というくくりの中でそれはいい、というふうにしてしまったらそれはまたとめどもない返礼品の競争になりかねない。地場産業の振興、伝統産業の振興は本当に大事だと思う。集めたふるさと納税をそういったものに使っていただいて伝統産業の振興に取り組んでもらいたい。

5月9日、この日、伊那市は記者会見を開きました。果たして家電を続けるのか、それとも・・・。

伊那市の判断そのものが全国の自治体への影響が大変大きい。家電製品等については総務省の意図を参酌しながら資産性の有無を問わず全ての品目について返礼品から外すという結論に至りました。

全ての家電製品を返礼品から外すことにしたのです。

「正直悔しさは?」

複雑ですね。答えを出したので頭の中はすぐ切り替えて次の段階、返礼品の姿かたちにアイデアを職員全員に出してもらって、また製品づくりをしていく。

一方で市長はこんな言葉も、

地方は結構したたかですよ。

市の決定は町の電気店組合にも伝えられました。

難しいんでしょうね。我々も元の生活に戻って頑張ってやるしかない。

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