「くも膜下出血」を防ぐ最新治療とロボットを使った新たな後遺症のリハビリについて取材しました。
兵庫医科大学病院
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兵庫県西宮市にある兵庫医科大学病院。
10年前から脳にある病を抱えている52歳の川口洋子さん(仮名)。脳の動脈に大きなコブがあります。
頭痛などの自覚症状がない。あまり深刻に受け止めていなかった。
川口洋子さんは現在の病状の詳しい説明を受けました。
15ミリ弱。
10年前に7ミリだったコブは約2倍の大きさになっていました。
年間の破裂率が18.5%。現在52歳、一生のうちに必ず破裂する見込み。
くも膜下出血を起こす危険性が高いと言われました。
くも膜下出血
くも膜下出血とは脳になるコブが破裂し、流れ出した血液が脳を圧迫して脳の障害や突然死を引き起こす病です。
くも膜下出血を起こすと15%で即死してしまうといいます。
一命を取りとめても大きな後遺症が残ることが多いです。
脳のコブは高血圧などが原因で膨らむといわれ、さらに喫煙や過度の飲酒が破裂のリスクを高めます。
現在、くも膜下出血で治療中の患者は約4万人。年間1万人以上が命を落としています。
兵庫医科大学病院の脳神経外科、吉村紳一教授は、
社会復帰できる人は20~30%。残りは後遺症か亡くなってしまう。
恐ろしいくも膜下出血。突然死を防ぐ治療の最前線を追いました。
切らない最新治療
先程の川口洋子さん、くも膜下出血を防ぐ最新の治療を受けることになりました。
まず足の付け根を5ミリほど切ります。この治療は局所麻酔で行うことができます。
痛くない、大丈夫。
足の付け根からカテーテルという細い管を入れていきます。慎重にカテーテルを操作して脳のコブがある場所まで運びます。
治療で使われる器具が準備されます。
使うのはフローダイバーターと呼ばれる最新器具。直径4ミリ、目の細かい網目状の金属の筒になっています。
治療はカテーテルを使ってフローダイバーターをコブがある脳の動脈の中に入れます。するとコブに血液が流れにくくなり破裂を防ぎます。
さらにコブの中に血の塊ができて、約6ヶ月でコブが小さくなっていきます。
川口洋子さんの治療が始まりました。慎重にカテーテルを操作します。
コブの横にフローダイバーターが映っています。成功です。
うまくおけました。
治療は1時間ほどで終わりました。
1センチ以上の未破裂のコブには保険が適応され3割負担の場合、費用は約80万円。
局所麻酔のため治療後、すぐに家族と会話もできます。
川口洋子さんはくも膜下出血の恐怖から解放されました。
開頭手術の場合、2週間ほどの入院が必要ですが、この治療は3~5日で退院できます。
身体にメスを入れずに大型動脈癌が治療できる。再発がないのが最大のポイント。
筑波大学附属病院
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くも膜下出血などで脳がダメージを受けると麻痺や言語障害といった後遺症が残ることも多いです。
そんな後遺症を改善する最新医療器具の治験が行われています。
「HAL」と呼ばれる最新のロボット。下半身の麻痺を改善できるといいます。
人は脳から出た電気信号で手や足を動かします。脳の神経がダメージを受けると身体に電気信号を送る神経が減り、体をうまく動かせなくなります。
ロボットを使ったリハビリのデモンストレーションを見せてもらいました。
まず電極を足に貼り付けます。これで脳から皮膚の表面を伝わる微量な電気信号を読み取ります。
「HAL」は脊髄損傷のリハビリ用ですが脳の障害に使うものも仕組みは同じです。
筑波大学附属病院の整形外科、久保田茂希助教授は、
患者さんが膝を伸ばしたり、曲げたりするときに検出した電気信号をロボットが呼び込む。正しい脚の動きを教え、再学習、ロボットを外した時も続くように。
脳からの電気信号を足に付けた電極が読み取り、関節に付いたモーターに伝えて足を動かす。これを繰り返すと脳の神経が再生し、やがてロボットがなくても脚が動かせるようになると期待されています。
リハビリは1回20分、5週間続けます。
この病院ではロボットを使ったリハビリで約8割の患者さんの歩行速度や歩く姿勢が改善されたといいます。
筑波大学附属病院の脳神経外科、鶴嶋英夫准教授は、
残された能力を回復させて最大限に使い障害を受けた側を治療。一番いいのはロボットスーツ。
進化を続けるリハビリの技術。だが病を未然に防ぐため、なによりも検査を受けることが重要です。