株式会社ホクノー
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北海道厚別市にあるホクノー中央店。
ホクノーの創業は1971年。札幌市内に6店舗を展開する中堅のスーパーです。
オープンした店内を覗いてみると、お客様の姿はまばら…。その多くが高齢者です。
お客様に買ったものを見せてもらうと、
今日はちょっとしたもの。油とか1,000円くらい。1人だから。
2人しかいないから、そんなにたくさん買ってもどうにもならない。
もみじ台団地
ホクノーのこの店舗は札幌最大規模の市営団地「もみじ台団地」に囲まれています。
札幌で働くサラリーマンのベッドタウンとして1968年に造成が始まりファミリー世帯に人気でした。
しかし、ピーク時には約2万5,000人いた人口は約1万5,000人にまで減少。いまや住民の半数近くが65歳以上の高齢者です。
野地秀一社長
8年前に父親から会社を引き継いだ3代目社長の野地秀一さん(49歳)。
頭を悩ませていました。
1万人減少、地方都市ひとつがなくなったような感じだから、厳しいことは厳しい。
地元で生まれ育った野地さんは東京理科大学を卒業後、北海道拓殖銀行に入行。
東京で為替取引などを担当していました。
しかし1997年、バブル崩壊による不良債権の急増などで北海道拓殖銀行が経営破綻。
それを機に野地さんは家業を継ぐためホクノーに入社しました。
当時の写真を見ながら、
チラシをまけばお客様が取れる時代だった。
食品メーカーと共同で行った特売フェア、日曜日に駐車場で開いた朝市は大勢のお客様が訪れる人気のイベントでした。
しかし高齢化が急速に進んだこの20年でホクノーの売り上げは4割も減少して約36億円。
銀行員時代とは違い、今度は経営者として迎えた危機。
決断を迫られていました。
食を提供するビジネスは絶対なくならないと思う。手の打ち方によっては生き残る道はある。それを追求できればいい。
ホクノー健康ステーション
9月下旬、ホクノーの本社にもみじ台団地の住民の代表が集まりました。
実は野地さん、地域住民を巻き込んで大勝負に打って出ようとしていたのです。
市営住宅にいても「サ高住」にいるような感覚で生活できるのが理想の姿。
サ高住とはサービス付き高齢者向け住宅のこと。集合住宅の中に専門家が常駐し食事や介護サービスを提供するサービスです。
一般的には入居時の契約金や家賃のほかに毎月の利用料が必要になります。
野地さんはこのサ高住をヒントに団地全体をひとつの集合住宅と見立てました。
そして中心にあるホクノーの店舗で健康にまつわるサービスを新たに展開しようと考えたのです。
名付けて「ホクノー健康ステーション」。
健康寿命を延ばそうと思っているので、「配達サービスをやれ」という話もあるけど、歩いてきてもらって少し運動をしてもらおうと。
ここをキーステーションにして住民が買い物のついでにいろいろな情報を得られる。そういう機能を持ったステーションにしてほしい。
頑張ります。
かつてないサービスを提供することでホクノーへの来店回数を増やしてもらう、スーパーの枠を超えた作戦です。
ゲームコーナー
野地さん、会議の後に2階の売り場を案内してくれました。
そこにあったのはゲームコーナー。
かつては家族連れで賑わっていましたが高齢化が進んだ今、利用者はほとんどいません。
ここを健康ステーションにしたい。
先代社長
仕事を終えた野地さん、弁当を抱えて向かった先は先代の社長で父の武さん(82歳)の家です。
6年前に母親は亡くなりましたが父の武さんは住み慣れた家を離れるのが嫌で今も一人暮らし。
3年前には心臓の手術をしたこともあり野地さんの家族が夕食を用意しています。
いただきます。美味しいわ、おなか空いているから。
先に野菜。
地域の高齢者に元気で長生きをしてもらいたい。父の武さんも期待しています。
もみじ台はなかなか難しい地域だから、うまくいけばいいなと思ってみている。
大改装
10月中旬、いよいよ店舗の大改装が始まります。
きれいさっぱりなくなっちゃって、200坪くらいある。
このスペースにお客様を呼び込む。どんな施設が出来上がるのでしょうか?
健やか食堂
野地さん、ほかの手も打っていました。
1階にあるホクノーが運営する食堂「健やか食堂」。
新たな高齢者向けのメニューを開発していたのです。
どうですか?
それが例のさらさらレッド?
血液サラサラ。
これがさらさらレッド、血流を改善する成分「ケルセチン」が一般的なタマネギの3倍も含まれているそうです。
血圧や血糖値の上昇を抑えることが期待できます。
健康食のレシピを開発する会社と作った減塩・低カロリーのメニューです。
高齢者の健康を守る「健やか定食」。600キロカロリー未満に抑え、メインの魚料理は塩を一切使わず餡かけの出汁で味付け、さらさらレッドも添えました。
気になる味は?
おいしい。
値段は500円。
毎日食べても飽きないようにメインの魚料理は日替わりです。
改装作業
11月4日、改装は大詰めを迎えていました。
業者だけでなくスタッフも総出で手伝います。
まさに手作りの健康ステーション。
将棋盤だ。
将棋や麻雀を楽しんでもらおうと無料で貸し出します。
こっちにやっておくか。
今度は何を?
通路に出ていたワゴンなどを動かし始めました。
野地さん、ある仕掛けを考えていました。
大体これで。
オープン
11月6日、健康ステーションがオープンの日。
かつてのゲームコーナーが高齢者のコミュニティスペースに生まれ変わりました。
あとはオープンを待つばかり。
午前9時30分、シャッターが開くと次々とお客様が…。
30分も経たない内に大勢の人が訪れました。
全国でも珍しい取り組みに地元のメディアも駆け付けました。
午前10時、いよいよオープン。
まずはプロが教える体操講座。皆さん楽しそうです。
医療の専門家が常駐する無料の健康相談室。
えっ!
少し緊張されていたみたい。
血圧が高かったようです。
自分も年になってあちこち病気が出てきて、それで興味を持ってチラシが入っていたから来てみた。いいなと思う。
女性2人組は店内でウォーキング。実はこれも野地さんが仕掛けたもの。
雪が降る冬の間も運動ができるようにと通路をウォーキングコースにしました。
しかもスマホのアプリ「あるくと」と連動し、歩くとホクノーの買い物ポイントが貯まる仕組みです。1ヶ月最大500円分の買い物ができます。
251歩。ちゃんとやらなきゃ、せっかくだから。
昼時、食堂を覗いてみると、
お待たせしました、健やか定食です。
あの健やか定食に次々に注文が入っていました。
血糖値がちょっと高い。健康のため。
夕方になると休憩スペースでは子供たちが遊ぶ姿もあります。孫と一緒に過ごせる空間を目指します。
一方、スーパーの売場では食生活を改善してもらおうと特設コーナーが、減塩などにこだわった食材を取り揃えていました。
健康ステーションから流れてくるお客様がスーパーの売場で買い物をする。
野地さん、手応えを感じていました。
これから一気に人口の崖を迎えるので、人口の崖を迎えた時に生き残っているかどうかということをまた長期スパンで考えていかなきゃならない。変化が激しいからこそ生き残れる、勝ち残れる道もあると思う。
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