竹ノ谷金作さん
埼玉県戸田市のとある住宅。出迎えてくれたのは竹ノ谷金作さん(88歳)と妻のコトさん(82歳)。
夫の金作さんは11月に自動車の免許を自主返納したばかり。
体を壊して入院したが、その後も車に乗るつもりでいた。ここのところ事故の新聞記事があまりに多いので。
今年の夏に入院した金作さん。退院後も車に乗りたい気持ちはありましたが、それを思い留まらせたのが相次ぐ高齢者による自動車事故のニュースでした。
ただ、これまで45年近く運転してきた金作さんにとって車のない生活は非常に不便です。
そこで代わりの足として入手したのが、
その辺を歩けるようにと思って。
金作さんが購入したのは電動カート「ぱるぱる」。
電動カートは歩道を走るため自動車免許は不要。近所までの足として利用しています。
遠くへ乗って行くつもりはないが、病院へ通うので、そのくらい。
株式会社パルパル
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こうした「近所までの足」に目を付けたのが、その名も株式会社パルパル。
オフィスの一角に展示してある電動カートに乗っているのが社長の内山久美子さん(77歳)。
自身が足を悪くした際に既存の電動カートに乗ったところ操作が難しく、70歳にして自ら「ぱるぱる」の開発に挑んだのです。
80歳、90歳のおじいちゃん、おばあちゃんがとっさの場合にサイドブレーキを引けるかなと、引けないだろうと。だったら勝手にブレーキが利くようにした方がいいだろうとか、いろいろな疑問があって「よし、作ってやろう」と。
それまで乗り物などの製造に携わったことがなかったという内山久美子社長。技術者と協力し、試作を繰り返しながら、とにかくシンプルな作りを目指しました。
「前進」レバーを押すと進む。離すと完璧に止まります。
スピードの調整はゆっくりの「カメ」マークから「うさぎ」の早いに回すだけ。速度は最高でも時速約6キロメートル。
価格は1台16万円ですが、免許を自主返納した人には2万円引きのサービスも。
手頃な価格や高齢者目線の作りがうけて売上は徐々に伸びていますが、電動カートに抵抗感を持つ人が多いゆえに認知度がまだまだ低いのが現状です。
「私には早い」とか「私はそんな年じゃない」とか言わず、「楽だから乗る」。それでいいと思うんです。
高齢者が車を手放しても困らない環境を整えることが大切だと内山久美子社長はいいます。
免許を返すことは、長い間、何十年も車に乗ってきた人にとってものすごく大変なことだと思う。そこをちゃんと押さえてあげないといけない。
ヤマハ発動機株式会社
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石川県輪島市では11月から日本初となるある乗り物の本格導入が始まりました。
それがエコカートと呼ばれる改造型のゴルフカート。
観光地のほか、病院や商店街など3つのコースを10分おきに走行。料金は無料です。
開発したのはヤマハ発動機株式会社です。なぜゴルフカートを利用しようと考えたのでしょうか。
ヤマハ発動機株式会社の渉外部、平野雅久部長は
シートベルトやドアがなくてもナンバーが所得できて乗降しやすい。
通常、ゴルフカートは公道を走れませんが、サイドミラーを付け、最高時速を20km未満にするなどして保安基準をクリアし軽自動車のナンバーを取得。公道を走れるようにしました。
今はまだ法律上、運転手が必要ですが、カートには自動運転機能が付いていて、道路に埋めた誘導線を読み取って動き、決まったポイントで自動的に停止、再発進はボタン一つで行います。
この自動運転機能が将来的には普及に向けた大きな鍵になるといいます。
輪島商工会議所の里谷光弘会頭は、
自動でなければ、非常にコストが高く、生産性が高い年代に運転してもらわないといけない。自動にすると高齢者でも運転できる。コストだけでも3倍くらい違う。
輪島市から補助を受けるかたちで輪島商工会議所が購入したエコカート。バスが一台1,000万円以上するのに対し、エコカートなら10分の1程度の価格で導入できるのも大きなメリットです。
人口の約43%が65歳以上の輪島市。その高齢者にもっと外出してもらおうとエコカートを導入しました。
近場と長距離を考えると、遠いところはバスやタクシー。近いところはカート。
「その違いは大きい?」
大きいと思う。私も高齢になってきたから感じる。
様々な形で広がりつつある「高齢者の新たな足」。それを確保することは町の経済活性化にもつながると輪島市では考えています。
一人で住んでいる高齢者が「つまらんな」という時に、「バスに乗って買い物行こうか」とは思わないが、ちょっと出たらカートが日常的に動いていて、カートのベンチに座って商店街に行けるとしたら商店街の活性化にもなる。