小布施堂
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長野県の山間にある小布施町。人口は約1万1,000人。
人影もまばらな駅に女性2人組が降りてきました。ハピキラFACTORYという会社の正能茉優さん(25歳)と山本峰華さん(26歳)。
2人がやってきたのは小布施堂。90年以上の歴史を誇る地元の栗を使った菓子の老舗です。
名物は「栗鹿の子」。栗の実を栗の餡で包んだ自慢の一品です。
2人はカウンターの奥へ、そこには営業の責任者、営業部長の南謙さんが待っていました。
今思えば小布施堂さんとやったあの仕事は奇跡だったといつも思っている。
いろいろな人に言い回っていて、これができたから私たちはやっている。
いろいろやりましたね。
正能さんと山本さんは4年前、大学の授業でこの町を訪れた時、小布施堂と出会いました。そして伝統の和菓子「栗鹿の子」を若者にも知ってもらいたいとある提案をしました。
パッケージのリニューアルです。赤いハート型にしてバレンタイン用に発売をしたのです。
売り場は若者の街、東京・渋谷。すると10日間で用意していた2,000個の栗鹿の子が完売したのです。
営業部長の南さん、
「2,000個売れると思っていた?」
思っていなかった。商品も彼女たちの年代に合わせたものにリニューアルしたけれども、売り方も彼女たちが直接関わってお客様に提案したので、結果的に商品が動いたと思う。
株式会社ハピキラFACTORY
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2月17日、長野県小布施町。正能さんと山本さんはあるお宅へ。
2人は現在、会社勤めをしながら小布施に通い続け、ある取り組みを進めています。
関西圏には名前が通っていないですよね。関東には強いんだけど。
関西では全然ダメ。
この日集まったのは30代の若手農家。
ハピキラの2人は農業を通じて小布施町全体を活性化させようというのです。
しかし、
こんあ狭い町だからまとまりあるかと思うじゃん。あちこちにグループがあってまとまりがあまりない。
小布施町の市村良三町長は、
全体を小布施でやるぞっていう感じをつくっていきたいよね。
小布施町にとって農業は主力産業。農家の力を結集して町を売り込みたいと考えていますが、まだ道半ば。
会合に参加していた町長は2人に大きな期待を寄せていました。
町に刺激や情報やあるいはショックを与えてほしい。
農業の現状
ある週末、2人は再び小布施に。
やって来たのは果樹園。
すいませんお仕事中。何のお仕事をしているんですか?
ブドウの房切りという作業をしている。
改めて農業の現状を確認して回ります。
こちらではブドウとモモ、さらにリンゴを栽培していました。
別の果樹園でも話を聞きます。
こっちクリ。こっちブドウです。
こちらではブドウに加え、秋の収穫を控えるクリ、リンゴも育てていました。
小布施では1年を通して様々な果物が作られているのですが、実はそれが悩みのタネ。種類が多いため特産と呼べるものがなく品質に比べて知名度は低いままです。
課題は山積み。
新しいアイデア
長野県小布施町、様々な果物が取れる一方、目玉の特産品がありませんでした。
農業を通じて町の活性化に取り組むハピキラFACTORYの正能さんと山本さん。
東京で会社員としての仕事をしながらミーティングを重ねてきました。
そしてこんなアイデアが生まれました。
どんな果物でも入れられるものにして、それを送るようにした方がいい。箱だね、必要なもの。共通の箱とデザイン。
果物をひとつひとつ売り込むのではなく、「小布施の果物」として全体をブランド化する。そのためのパッケージを考えていたのです。
しかし果物を詰め込むオリジナルの段ボールを作ると1箱約210円。普段、農家が使っているものは約120円。これでは大きな負担となってしまいます。
そこで、
段ボールだけでシンプルなシールを貼っているかわいいものがいっぱいある。
茶色い段ボールでいいでしょ。
白いシールとか。ガッと貼れるような大きなステッカー作る。
2人は段ボールの一部にオリジナルのシールを貼ろうというのです。
これで本当にブランドイメージを作ることができるのでしょうか?
東郷りんさん
4月7日、この日はスマートフォンを使ったテレビ会議。相手は金沢の美術大学でデザインを学ぶ東郷りんさん(22歳)。
リンゴは絶対入れてほしい。リンゴとブドウとモモ。
これまでの活動を通して若者同士のネットワークを持つ2人。デザインが得意な東郷さんが今回のプロジェクトに参加します。
いい意味でのギャップが生まれたらいいなと思っていて、段ボールだし中開けたらリンゴなんだよ。だけどそのリンゴは特別なものである、というふうに思ってもらえるような。
見た目だけでは分からない小布施の果物の品質も伝えたい。難しい注文です。
2週間後の4月23日、石川県金沢市。どんなデザインになったのでしょうか?
スケッチを描いて、スキャンして。
ブドウ、リンゴ、サクランボなど小布施の果物が整然と並ぶ余白を生かしたデザインです。
早速、2人に画像を送信します。
すると、
全体的にかわいい&シンプル系になっている。もうちょっと大人っぽい方がいいなって思っているのね。
3人でデザインを練り直します。
本当においしいものが引き立つようなデザインにしなくてはいけないと思っている。
小布施の果物の魅力を伝えるデザイン。東郷さん、どのように描くのか?
オリジナルシール
6月3日、長野県小布施町にハピキラFACTORYの2人の姿がありました。
町の現状を訴えていた若手農家の家を訪ねました。
この日の訪問にはある目的がありました。離れに移動すると保存していたリンゴを段ボールに詰め始めます。
貼ってみるか。
あの段ボールに貼るシールが完成していたのです。
最初のイラストに比べ果物が大きくリアルに描かれています。生い茂る葉も描き瑞々しさと上質な感じを表現しました。
茶色い箱の方が。
茶色もかっこいいでしょ。
無地だったらどっちでもいいかもね。
どっちでもいけるんだよ。
こういうのしている農家ってあまりいない。
地味な段ボールがこれでオシャレになるんだ。
農家の皆さん、戸惑いながらも嬉しそうです。
2週間後、若手農家が色めき立っていました。
6月17日、小布施町の若手農家が集まってきました。5日前、ハピキラの2人がネット販売のサイトを開設したのです。
いいじゃないの。
あのオリジナルのシールで小布施の果物をアピールします。
売り方にも工夫を凝らしました。配送は季節ごとの年3回。何が入っているかは手にして初めて分かる仕掛けにしました。さらに旬な果物を中心に送るため発送日は未定。
異例づくしの商品ですが、この日までに早くも10件の注文が入っていました。
1,000個きたら1,000万円だもんね。1個1万円だから。そんな大きな金が急に動くのってびっくりした。
年内1,000件の受注を目標にしているといいます。
地方と東京女子の異色のコラボ。新たな感性が地方を変えようとしています。
山本峰華さんは、
私たちが通訳になって地方の本当にいいものを伝えることができるといいなと思っている。
正能茉優さんは、
歳を重ねていくごとにライフステージに合った地方の見方があるかなと思っていて、おばあちゃんになってもできるかなと思っている。
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