[ガイアの夜明け] 進化を続ける「道の駅」(2)

進化を続ける「道の駅」

道の駅 発酵の里こうざき

千葉・神崎町。人口6,000人余りの小さな町です。

そこに年に1度、5万人が押し寄せます。彼らのお目当ては「酒蔵まつり」。江戸時代から続く酒蔵がいまも2軒ある神崎ならではの祭りです。

みんなが夢中になっていたのが日本酒の試し放題。酒蔵まつりの名物です。

無料でおいしい酒をたくさん飲める。またバリバリ飲みます。

日本酒だけではありません。鶏肉を塩麹に漬けた焼鳥に、味噌を具材と一緒に丸めたみそ玉、神崎町にはこうした発酵文化が根付いているのです。

この町にある道の駅が「発酵の里こうざき」。

中を覗いてみると大盛況です。人気のヒミツはずらりと並んだ発酵食品。なんと全国から集められています。山形県産の「塩納豆」に、石川県産の「ふぐの子」、ふぐの卵巣をぬか漬けにして発酵させることで毒を抜いて作る珍味です。

発酵食品の数は約600種類。地元の商品にこだわる道の駅が多い中で異色の戦略です。

見たことのない発酵食品につい手が伸びていきます。

珍しいものがある。

こうした常識破りの品揃えで年間65万人を呼び、売り上げは約6億2,800万円。

仕入れをするのは店長の東川慶さん(32歳)。大手企業を脱サラし、今では発酵の魅力に取り憑かれています。全国の知られざる一品を探し回る日々。

道の駅の数が増えて、行く目的が薄れている。全国の商品を扱って地場の商品もある。発酵食品を中心とした売り場展開が一番の武器。

魚メニュー

4月4日、東川さんがレストランで調理担当者と話し合っていました。

実はゴールデンウィークに魚の発酵メニューを打ち出そうと考えていたのです。

発酵で魚がおいしくなることをアピールしたい。

神崎は海まで来るまで一時間掛かる場所にあります。このためレストランでは魚料理で目玉メニューがなかったのです。

1年で売り上げが一番上がる時期。神崎に行く理由の1つに魚メニューが加わるのは大きい。

メニュー開発を任されたのは鮮魚チーフの森山弘行さん。早速、試作のためタイやヒラメなど銚子で揚がった白身魚を仕入れていました。

森山さん、寿司職人として35年の実績を持つ魚のプロ。次々に魚をおろすとそれを地元で発酵させた醤油に漬け込んでいきます。

6種類の白身魚を使った漬け丼。普通はマグロなど赤身で作りますが白身にしました。醤油の色がキレイに出ると考えたのですが、これではどれがどの魚か分かりません。味も似通ってしましました。

森山さん、1から練り直しです。

プレッシャーがある。成功させないとゴールデンウィークに発酵の里の名物が出せなくなる。

道の駅の目玉となる新メニュー作り。ゴールデンウィークまであと1ヵ月。

椎葉村

九州、宮崎県の山の中。東川さんも動き出していました。

かなり山奥まで来ているので切り札となる商品を見つけたい。

向かったのは宮崎市から車で3時間。宮崎の秘境、椎葉村です。

椎葉村地場産品開発直営店に珍しい発酵食品があると聞きつけやって来ました。

特産品が並ぶ店に東川さんが求めていたものが、

これ面白い。ねむらせ豆腐

1年間、冷蔵庫の中でみそ漬けにしている。

村の人以外はほとんど知らない椎葉の伝統食です。

早速、試食させて頂きます。

発酵した味がする。うま味が上がってくる、複雑な味がする。

作っている会社の社長、中瀬玲奈さんが工場を案内してくれました。

ねむらせ豆腐はひとつひとつ手作業で作られています。まず水分を抜いた固い木綿豆腐を昆布で包んでいき、それをさらにガーゼで固く包み、自家製の麦みそで漬け込んでいきます。さらにこれを冷蔵庫で1年間寝かせるのです。

ご飯につけて食べるとおいしい。ウニみたいで。一生懸命作っているから。これだけはなくさないようにしないと。

1年漬けることで味噌と昆布の旨味が豆腐に染み渡りトロトロになった「ねむらせ豆腐」。山深い村の生活の知恵から生まれた幻の発酵食品です。

東川さん、道の駅で扱いたいと仕入れを打診します。

販路を探していた中瀬社長にとっても大きなチャンスです。

よくぞと思った。うちの商品をどうやって知ったのか。多くのお客様に知ってもらえるのはありがたい。

平甚酒店

千葉・神崎町。かつて作り酒屋だった平甚酒店。

店主の平野秀朗さんが作っていたのは酒や味噌作りに欠かせない米麹。こうじ菌を使って昔ながらの方法で作っています。

1日おくと米こうじができる。

平野さんは自家製の米麹を使っていまや貴重な発酵食品を作っています。そのひとつが米麹と大豆、塩だけで作る生みそ。

実は一般的な味噌は酒精と呼ばれる醸造用のアルコールを加えて麹菌の活動を止めてから出荷します。発酵が進むことによる色変わりなどを防ぐためです。

一方、平甚酒店の味噌は麹菌を生かしたまま地元だけで販売するこだわりの味噌です。

塩がかれて味がまろやかになる。

新メニュー作りで行き詰まっていた森山さん、できたての甘酒を飲ませてもらいます。

うまい、初めて。こんなに甘いとは思わなかった。

これを飲める人はいない。自分たちくらい。

通常の甘酒は発酵が進むと酸味が出るため、加熱処理をしてから出荷されます。

加熱処理する前の甘酒はより甘みが強いといいます。

この甘さがあればいろいろな料理に使える。

一般では出回らない甘酒と出会い、何か閃いたようです

「発酵パワー」でおいしさ革命!

数日後、森山さんが再び試作に取り掛かりました。具体的な料理のイメージが固まってきたようです。

麹が生きている味噌と甘酒を魚にどう生かすのか?

味噌に甘酒を加えていきます。

もうちょっと甘い方がいいかな。

甘酒で甘みを調整。そこへ地元産のネギを投入します。作ったのはネギ味噌です。

そして用意したのがマグロ。これをぶつ切りにして醤油ではなく、ネギ味噌で食べる料理に仕立て上げました。

次に取り出しのはイワシ。しかしイワシにはある特徴が、

小骨が多いのが弱点、食べづらい。

イワシは骨が多いため捌いても小骨が残ります。するとイワシを先程作った甘酒味噌で漬け込んでいくようです。

一体何を作ろうというのでしょうか?

3日

3日後、漬けておいたイワシをチェックします。

実は2日漬けただけではあまり変化は見られませんでした。3日目はどうなのか?

骨がやわらかくなっている。昨日より口にあたらない。

試しにナマのイワシを切ってもらうと骨を切る音が聞こえます。一方、3日漬けたイワシは音がしません。

麹は栄養素を分解することで食材のうま味を引き出したり、やわらかくしたりする特性があります。

生でも骨があたらない。斬新な料理が生まれました。

東川さんに味を確認してもらいます。

おいしい。うま味がすごい。

他の店ではできない。蔵元があるおかげでできる。

テスト販売

ゴールデンウィークを間近に控えた4月20日。新メニューのテスト販売が行われました。限定20食。

森山さんが作った「銚子魚膳」。醤油麹を使ったホウボウの煮魚や塩麹を使ったタイの焼き魚など6種類を用意。魚に合わせて麹の使い方を変え、発酵の里ならではのメニューに仕上げました。

ネギ味噌で食べるマグロの味は?

マグロにつけて食べるのは初めて。もっと食べたい、また食べたい・

そしてイワシは?

イワシおいしい。骨がない。

麹の特徴がそれぞれあって、この値段で食べられるのは幸せ。

平日にも関わらず12時30分には完売。

一方、東川さんの元にも待ちに待っていた商品が、あの「ねむらせ豆腐」です。

椎葉村では当たり前のものでも我々にとっては新しいもの。日常的に使って食卓に置いてもらいたい。

1瓶850円。決して安くはありません。

それでも一口食べれば、

おいしい!

チーズと味噌を食べている感じ。

濃厚な感じ。想像ができなかった味。

試食した人が次々と買っていきます。その日のうちに追加発注することが決まりました。

道の駅なのに地元産にこだわらない。常識破りの売り場、まだまだ進化しそうです。

「安・近・短」とよく言われるが安くて近いから行くのではなく、「わざわざ行きたい」と思ってくれる道の駅づくりがモットーなので貫きたい。

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