連日、国や自治体から注意が呼びかけられています特定外来生物のヒアリ。刺されると火傷のような痛みを伴う強い毒を持っていて最悪のケースでは海外で死亡例も報告されています。
このヒアリですが6月以降、全国の港で確認されてきましたが、愛知県の春日井市では7月10日に港以外の内陸で初めて発見されました。
こうした事態を受けて環境省などは7月11日に全国68の港でアリを殺す毒入りのエサを大規模に設置することに決めました。
ヒアリは本当に日本で広まってしまうのか?
そして私たちにどんな対策ができるのか取材をしました。
株式会社ドン・キホーテ
先週、ヒアリが100匹以上確認された大井ふ頭。隣接するみなとが丘ふ頭公園ではヒアリを発見した場合、素手で触らないよう注意書きが貼られていました。
近所のMEGAドン・キホーテ大森山王店ではお客様からの問い合わせを受けて7月12日から急遽、ヒアリ対策グッズの販売コーナーの新設。ヒアリを1秒で殺すスプレーや巣にいるヒアリを全滅させる毒入りのエサなどが置かれていました。
増渕銀平店長は、
殺虫剤を通常の4~5倍に増やしている。「死に至る」という報道もあるのでお客様は敏感になっていると思う。
実際、お客様は、
ヒアリが大井ふ頭に出たと聞いたので子どももいるのでちょっと心配だ。
品川区立八潮南保育園
住民の不安に品川区も対策を始めていました。
品川区立八潮南保育園ではヒアリの注意書きが貼られています。
さらに、秋山照呼園長は、
どのように使えばいい?
品川区職員の田中剛さん、
園庭で万が一、ヒアリを見かけたら殺虫剤で処理していただく。
品川区は7月11日、大井ふ頭近くの5つの幼稚園と保育園にヒアリを殺傷することができるスプレーを配布しました。
親は、
保育園の先生がいろいろやってくれるので、あまり心配はしていないが自分たちで公園に行くなど生活の中では気を付けないといけない。
園長は子どもは大人以上にヒアリに接触する可能性が高いといいます。
子どもたちはアリやダンゴムシが大好きなので見つけたら触っている。ヒアリか普通のアリか区別もつかないと思うので職員が気を付けて子どもたちの行動をよく見ている。
ヒアリの特徴
住民の不安の種になっているヒアリ。一体どのような特徴があるのでしょうか?
ヒアリは生存能力が高く、水の上でもいかだを作り女王アリやタマゴをのせて避難することができます。決して水に沈むことはありません。
またボール型をしたヒアリの集団を押してもビクともしません。
ヒアリは自分より体が大きい相手でも集団で襲いかかり針から毒を注入します。
人間が刺されるとどうなるのか、アリの研究をしていて実際に刺された経験もある九州大学決断科学センターの村上貴弘准教授に話を聞いてみました。
「どういった状況で刺された?」
ヒアリの巣を崩したときに数百匹出てきて刺された。火が付いたように痛い。そのあと30分くらいすると刺された場所が白くうむ。その周り1センチくらいが赤く腫れて痛かゆくなる。
中国
日本で発見されたヒアリの多くは中国から来たコンテナから発見されています。
五島尚武さん、
今年5月、神戸港で発見されたヒアリは甲州市南沙港の貨物船のコンテナの中から発見されました。
中国でヒアリが初めて確認されたのは2004年。以来、中国政府は水際対策を強化し地域によっては年間320億円の費用をかけていますが、生息地域は現在、11の省や区にまで拡大しています。
2005年にはヒアリの専門機関「甲州瑞豊生物科技」も設置され発見や駆除に乗り出しています。
中国で初めてヒアリを確認した専門家の陸永躍博士、
これが女王ヒアリです。生きているよ。
タマゴを生むメスの女王ヒアリ。ヒアリは繁殖力が強く1匹の女王アリが1日に1,000個以上のタマゴを生むといいます。
1つの巣には複数の女王アリがいるため短期間で爆発的に数を増やします。この点が一般的なアリと大きく異なる特徴です。
コメやトウモロコシ、果物などの苗木や種を食い荒らし農作物などにも被害が出ています。
ヒアリの駆除に同行させて頂きました。現場はオフィスビル近くの空き地です。
ヒアリがいる場所には「ヒアリ観測中」との立て札が置かれています。
ヒアリの蟻塚、できてから1年から2年が経過しているといいます。草を分けてみると現れたのは全てヒアリです。
巣を開くとたくさん出てくるでしょう。非常に攻撃性が強いのです。
この空き地にヒアリが見つかったのは6年前、スコップで蟻塚を掘るとさらにたくさんのヒアリが現れます。1つの巣には働きアリが20万匹もいるといいます。
2年から3年放置すると激増する。100倍から1,000倍になるのです。
散布しているのはベイト剤という毒を含んだエサです。ヒアリが巣の中にこのベイト剤を持ち込むと巣の中のヒアリ全体を駆除できます。
しかし何度駆除してもすぐにヒアリは繁殖してイタチごっことなっています。
深く調査すると広い範囲でヒアリが見つかる。根絶は難しい。今は人に被害が出ないように対策をしている。
フマキラー株式会社
広島県廿日市市、ここで今、ヒアリの対策が急ピッチで進められていました。
殺虫剤大手のフマキラー、持ってきてもらった箱の中には、
特別に許可をもらってアルゼンチンアリを飼育している。
毒を持たない特定外来生物のアルゼンチンアリ。
しかし、ヒアリとある共通点があります。
フマキラーの開発企画室、山里圭室長は、
繁殖力が高いのが共通点。この研究を生かしてヒアリの広がりを止めることができないかと思っている。
ヒアリと同じく1つの巣に複数の女王アリがいるアルゼンチンアリ。1993年に初めて日本で発見されて以降、高い繁殖力で各地で生息するようになりました。
実はアルゼンチンアリを初めて発見したのがフマキラーの研究員。そのためアルゼンチンアリを巣ごと駆除できる毒エサなどを販売してきました。
1つの巣にすごい数のアリがいるので処理するために駆除剤の量が必要。適切な量を防除対策で設定できている。ヒアリも同じくらい繁殖力があるのでアルゼンチンアリの対策が有効になる。
フマキラーは実際に海外のヒアリで駆除剤の効果を確認。
こうした経験からフマキラーは7月11日、環境省などが実施する全国68の港でのヒアリ駆除計画で協力要請を受けたといいます。
さらにフマキラーは駆除剤の生産計画を前倒し今後の需要増加に備えます。