[ガイアの夜明け] 立ち向かう!物流「危機」(2)

立ち向かう!物流「危機」

株式会社フジネット

7月上旬、北海道石狩市。

創業51年の運送会社「フジネット」。従業員91人の中小企業です。

野菜の出荷がピークを迎える夏は1年で最も忙しい季節。

レタスやトマトを始め、北海道で採れたさまざまな野菜を運びます。

物流部長の川尻英勝さん(61歳)。ドライバーの勤務管理を担当しています。

川尻さん、今ある問題を抱えていました。

10年くらい前は58人いたが今は40人。原因は労働環境にあると思う。拘束時間もあるし。

ドライバーが減り続けているのです。

国が定めるドライバーの拘束時間は1日あたり原則13時間。

フジネットの勤務表では7月21日からの1週間だけを見ても時間オーバーがかなり目立ちます。

こうした長時間労働がドライバー不足を招いていました。

拘束時間を1時間、2時間、30分なり、できる限り減らしていきたい。

実は川尻さん自身もかつては大型トラックのドライバー。長時間労働のつらさを噛み締めてきました。

その川尻さんがとりわけ気にかけている社員が高山元気さん(33歳)。長時間労働が目立つドライバーのひとりです。

高山元気さん

この日は午後3時30分から勤務。まずは隣町の農協に荷物を取りに行きます。

この日運ぶのは旬を迎えた地元産のきゅうり。

これ10キロの箱。

全部で1,200箱積み込みます。

約2時間後、150キロ離れた札幌市場へ出発。

翌朝5時、やっと高山さんの仕事が終わりました。

帰宅して真っ先に向かうのは家族が寝ている部屋。

まだ熟睡していますね。

妻と3人の子供の5人で暮らしています。

勤務時間が長いので時間がもうちょっと短くなったらなと。

家族との時間が少なかったり、家族との時間が取れるようになれればいい。

家族と食事ができるのは週に1度。思いは切実です。

大島弘明さん

7月11日、北海道当麻町。

高山さん、この日もきゅうりを運ぶ準備をしていました。

そこへスーツ姿の男性が現れ、スマホで写真を撮り始めました。

この人は大島弘明さん。フジネットにも姿を見せました。

ここで配車をしているんですか?

ドライバーを管理する川尻さんにも質問をします。

我々もお手伝いをさせていただきながらこの事業、今回をきっかけに拘束時間の短縮につなげたい。

実は大島さんは国土交通省などの事業に携わる物流の専門家。長時間労働の改善を実験しようとやって来ました。

その実験の舞台にフジネットを提供したのは川尻さん。国の力を利用して長時間労働を解消しようと狙ったのです。

うちの輸送態勢、市場の受け入れ態勢をさらけ出して実態を知ってもらって変わっていく。やった方が絶対いいし、チャンスだと。

調査

その日の午後、再び当麻町の農協。

高山さんの仕事場で実験のための調査が始まりました。

積み込みは1人ですか?

1人のときもあるし、誰か手伝ってくれるときもある。そのときによってバラバラ。

実際の作業の時間を短くできてばいいなと。改善の余地がないか、お手伝いをしている。現場の視点で何か?

パレットに積んで、向こうでパレットのまま荷物を降ろせるなら変わる。

パレットとは荷物を載せるための台のこと。

荷物はまずパレットごとトラックに積み込まれます。しかしパレットは荷主のもの、そのためトラックの荷台でドライバーが手作業で荷物を降ろしパレットを返さなくてはいけません。

一方、届け先では再び手作業でパレットに荷物を積み替える必要があります。

これが長時間労働の一因になっていました。

約11トンの積み替えにかかった時間は2時間13分。この積み替えがなければ仕事はもっと早く終わるはず。

無駄な時間が現場に潜んでいました。

決してこれが稀なケースではない。農産物に限らず、工業製品、食料品でも。荷台までパレットで持ってきて、そこから手で載せる。

結局、この日の高山さんの拘束時間は運転の他に荷物の積み下ろしを合わせて14時間7分にのぼりました。

輸送システム

約1ヶ月後の8月18日、札幌。

大島さんの調査をもとに長時間労働削減への実験方法が話し合われていました。

フジネットの川尻さんの姿もあります。

物流コンサルタントの大島さん、

作業時間の短時間化、省力化が必要。そのためにはパレットを利用した輸送システムの導入が必要。

手作業をなくすためにパレットをうまく利用するというアイデアです。

つまり荷主のパレットに荷物を載せて、それを届け先まで運ぶ。こうすることで手作業の手間を丸ごと省こうという狙いです。

実験開始

8月23日、当麻町の農協。

パレットを使った実験が始まります。舞台はフジネットの高山さんの配送ルート。

手作業に比べて果たしてどれくらい効果があるのか?

パレットに載ったきゅうりで荷台はいっぱいに。約4トン積み終えるのにかかったのは13分でした。

一方、手作業では約11トンの積み込みに2時間13分かかっていました。パレットだと4分の1の時間で終えた計算です。

そして150キロ離れた札幌市へ。

高山さんのトラックが札幌市中央卸売市場に到着しました。

出迎えたのはフジネットの川尻さん。実験を見届けに来ていました。

トラックの荷台から荷物ごとパレットのきゅうりを降ろして実験終了。

この間と今日、どう?やってみて?

時間は早い。

パレットで来て、パレットで降ろして、そのまま帰れるように。

なればいいですね。

パレットで実験した日、高山さんの拘束時間は12時間54分。手作業で荷物を積み降ろした時より1時間以上短くなっていました。

新たな輸送体制

2ヶ月後の10月25日。

川尻さん、

レンタルのパレットですけど、どれくらいの価格で借りられるのか?

川尻さん、パレットを活用して新たな輸送体制を作ろうとしていました。

1枚、1日5円。それで30日借りたとして1枚150円。

いいですね。

それをうちで借りて「これに積んでください」と。その荷物を市場に持っていって、そのまま倉庫へ入れられるような体制を。

自分たちでパレットを用意して荷主から届け先まで一気に運ぼうという計画。大きな効果が期待できそうです。

物流の未来へ向けた新たな一歩。

労働時間を短縮したいのは当然あるが、積み降ろしはドライバーの仕事じゃなくて、預かった荷物を安全にきちっと届けるのがドライバーの仕事。ドライバー本来の仕事に専念できる職場を目指したい。

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