株式会社ファームスズキ
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瀬戸内海に浮かぶ広島・大崎上島。
人口は約7,700人。
古くから造船業が栄え、山肌にはミカン畑が広がっています。
この島に江口洋介さんを唸らせた絶品のカキを出すレストランがあります。「FARM SUZUKI FARMER'S KITCHEN」。
この日はグループ客で賑わっていました。お目当てはもちろん、
どうぞ、生のカキになります。
おいしそう!
塩田熟成牡蠣です。
おいしい!いくらでも食べられる!
おいしい!言葉にならない。
とれたての新鮮なカキが1時間4,000円で食べ放題。
週末を中心に島外から多くの観光客が押し寄せています。
店を開いたのはファームスズキ社長、鈴木隆さん(41歳)。
鈴木隆社長
養殖場なので皆さん、見学によく来てくれる。食べられる場所を作るのは夢の一つだった。何よりうれしい。
店の隣になる巨大な池が鈴木さんの秘密基地。
この池でカキを養殖している。塩田の跡の池。
池の広さは東京ドーム約2個分。
塩作りは昭和初期に途絶えていました。
鈴木さんはその池を買い取り、日本で唯一の塩田牡蠣の養殖をスタートさせたのです。
塩田は海や川と隔てられているためウイルスなどの侵入が抑えられるといいます。
さらに、
4~5ヶ月くらいで早いのはこのくらいの大きさになる。成長がものすごく早い。
水深が浅く、太陽光がよく届くので植物プランクトンが爆発的に増える。餌がふんだんにある状態。
大量の植物プランクトンを食べたカキは甘くてまろやか。濃厚な味わいに育つといいます。
大学卒業後、海外の水産物を扱う会社にいた鈴木さん。
買い付けで海外の市場を回る中、ある事実に気付いたそうです。
世界中でカキは食べられているが、日本のカキはまず見かけることがなかった。日本のカキを海外で販売してみたいなと。
実は海外で殻付きのカキといえばフランス産やアメリカ産などが主流。日本のカキは剥き身用で育てられているため殻付きはほとんど出回っていません。
海外でも通用する殻付きカキを作りたいと31歳で起業。
養殖場として目を付けたのが塩田跡でした。
そこには大きな夢が、
フランスで塩田の跡でカキを養殖しているのを見たことがあって、そのカキはトップブランド。塩田跡なら日本を代表するようなカキが作れるのではないか。
養殖を始めたのは7年前の2011年。
わずか数年で最高級のフランス産に負けないカキを作りあげました。
今では年間40万個を生産。香港やロシアなど海外市場で高く評価され、24万個を輸出しています。
一人で始めたファームスズキの社員は現在5人、パートやアルバイトも雇い、島の雇用に貢献しています。
福増和子さん(77歳)は、
この年で使ってもらえるのはものすごくありがたい。
ありがとうございます。いつまでも来てください。
クルマエビ
夜8時、鈴木さんがカキの養殖池にやって来ました。
何かを引き上げています。
鈴木さん、新たな挑戦を始めていました。
網に入っていたのはエビ。まるまると太ったクルマエビです。
よく育ってくれました。
それは失われていた島の宝。
かつてクルマエビの産地として名を馳せた大崎上島。
しかし、島の高齢化で担い手が減り、エビ養殖は途絶えていました。
島の人たちがクルマエビに対する思いが強くて。
日本初、常識破りの養殖でクルマエビの復活をかけます。
狙うは高級食材がひしめく香港。
そこには思わぬ壁が…
競争は激しい。
夢を拓く!ニッポンの島!
複合養殖
広島県・大崎上島のファームスズキ。
この日は見学客が訪れていました。
始まったのはエビの収穫。
すごい跳んでる。
鈴木さんが進めているのは世界でも珍しいカキとエビの複合養殖です。
カキは池の水面付近、エビは底の方で育ちます。生育場所が違うため一つの池で同時に育ち、採算性を高めることが出来るといいます。
エビ養殖
鈴木さん、とれたてのエビの殻を剥き始めました。そして、お客様がそのままパクリ。
おいしい!プリプリしている。
最高です。
美味しさの秘密は鈴木さんのこだわりにありました。
エビ養殖というとイメージするのは薬漬け。薬品を結構使っているとよく言われるので…有機的にエビを育てている。
通常、クルマエビの養殖は1平方メートルあたり30尾から40尾で育てます。過密状態で病気になりやすいため抗生物質などの薬品を使うのが一般的。
一方、鈴木さんの養殖は1平方メートルあたり7尾から8尾。自然に近い環境のため薬品を使う必要はなく、餌をふんだんに食べます。
そのため天然以上に甘みの濃いまるまる太ったエビが育つといいます。
ヒゲが長いのがうちの特徴で密度をすごく高く飼うとヒゲがどんどん短くなる。ヒゲが長いというのは有機的に低密度で飼っている証。
2年前、鈴木さんはエビの本格出荷を開始。
活クルマエビの値段は1キロ8,800円。最高級のクルマエビとしてほぼ贈答用に限られています。
課題は販路の拡大。
鈴木さん、狙いを定めた市場がありました。
香港に持っていこうと思っている。中華料理などでエビはよく使われるので一番大きいマーケット。なんとか切り拓きたい。
アバディーン魚市場
2月1日、香港。そこに鈴木さんの姿がありました。
やってきたのは香港最大のアバディーン魚市場。香港の台所でどんなエビが使われているのか視察にやって来ました。
そこで鈴木さんが目にしたのは予想もしていなかった光景。
日本では冷凍物しか見かけない東南アジア産の養殖エビが生きたまま大量に輸入されていたのです。
すると鈴木さん、あるエビに目を止めました。
これはいいエビですね。
身が引き締まった一際大きなエビです。
天然ですね。
香港近海で獲れる天然のクルマエビ、1キロ約6,000円。主に高級レストランが買い付けます。
鈴木さん、このエビよりも高い1キロ7,000円の売値を考えていましたが、
競争は激しい。
価格に見合う価値を認めてもらえるか?
シーフードレストラン「全記」
高級レストランを回ります。
やって来たのはシーフードレストラン「全記」。
ミシュランガイドにも載っている香港屈指の名店です。
店の前には水槽がずらり。とれたての高級魚ばかりです。
あの天然クルマエビも人気食材のひとつ。
自慢のメニューは「天然クルマエビのしょうゆ焼き」。2尾で約2,000円です。「天然クルマエビのガーリック蒸し」も人気とか。
この店では料理に1日50キロ近いエビが使われるといいます。
その味を確かめた鈴木さんは、
食べごたえはあるけど甘さがない。
早速、店のオーナー、ゴ・ワイロンさんに売り込みます。
クルマエビ。ライブです。
鈴木さん、日本から生きたエビを持ち込んでいました。
どのくらいでこの大きさに育つんですか?
6ヶ月、半年くらいです。
半年でこんなに大きくなるんですか?
すると店と同じ料理を作ってもらえることに。
10分後、鈴木さんのクルマエビを使ったガーリック蒸しが出来上がりました。
オーナーの反応は、
すごくいいエビです。肉質が最高ですね。1キロ6,000円くらいなら買ってもいいですよ。
売りたい値段より10%から15%安い。
他のレストランでも値段が折り合わず商談は不成立。
なんとしても香港でクルマエビを売りたい、鈴木さんに打つ手はあるのか?
新華日本食品
活路を見出だせずにいた鈴木さん。最後の大勝負に打って出ました。
やって来たのは半年前にオープンした寿司レストラン「DAIMANZOKU」。
元気良く鈴木さんを迎え入れた女性、只者ではありません。
香港で大手食品輸入商社を営む新華日本食品のメイ・チョイ社長。やり手の女性社長です。
日本から食材を輸入し、日本食レストランを中心に10店舗以上の飲食店を経営しているメイさん。
日本の農林水産省から表彰を受けたこともある香港食品業界の大物です。
メイさんは日本中を回ってありとあらゆるものを知っている。メイさんに認めてもらえなかったら香港ではまず売れない。
実は鈴木さん、メイさんと会うのはこの日が初めてではありませんでした。
5年前、彼が養殖を始めた頃、ファームに行ったのを覚えているわ。彼のカキはひどかったのよ。小さいし、身の痩せてるし、見た目もダメ。本当に時間の無駄だったわ。
1年目から3年目くらいまでは買ってもくれなかった。今年もダメだって。去年からやっと買ってもらえるようになって。
メイさんは香港市場を切り開く最後の突破口。
鈴木さん、エビの味が一番分かる刺し身で勝負をかけることにしました。
これが新しい食材?
はい、私のファームで育てた生きたクルマエビです。
日本のクルマエビはまだ扱ったことはないわね。
果たしてメイさんはどんな評価を下すのか?
メイさんの厳しさを知る鈴木さん。
甘い。とても甘いわ。おいしい。
この寿司レストランで試しに扱ってみてもいいわよ。
ありがとうございます。
まさかの即決。
鈴木さんのクルマエビに価値があると認めてくれました。
メイさんの会社と組めば流通コストも下がり、より安くエビを提供できる可能性も。
鈴木さん、大きな一歩を踏み出しました。
香港には中国をはじめ、いろいろな人たちが観光に来ているので、その人たちが僕らのエビを食べて「おいしいな」と広がっていけば販路は広がる。
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