[ガイアの夜明け] 「鮮度」が命!驚きの技術!(2)

「鮮度」が命!驚きの技術!

株式会社エバートロン

東京・港区。江口洋介さんが訪ねたエバートロン。

1968年創業、社員数11人の小さな会社です。

社長の田中久雄さん(62歳)。

Dr.Fry(ドクターフライ)

この会社が長年、研究してきたのは電波で水や油の性質を変化させるという技術です。

その方法とは、

油の中で電波信号を毎秒5万回流している。AMラジオの電波と同じ周波数なので触っても安全。電波を油の中に通して革命的な揚げ物を作る。

食材や油の中には水の分子が存在しています。通常、熱した油に食材を入れると中の水分が瞬間的に膨張して破裂、その隙間から油が浸透してしまうため油っぽい仕上がりの揚げ物になってしまいます。

一方、ドクターフライを使って電波の振動を加えると水の分子が細かくなってつながり合い大きな破裂を起こさなくなります。そのため水分を保ったままカリッと揚げることができるのです。

また他の食品を一緒に揚げても臭いや味が移りません。

機械がおいしくしてくれるので基本的には誰でも簡単においしく揚げ物ができる。

消防局が行った実験の映像では、付けっ放しのやかんの湯が熱した天ぷら油に吹きこぼれると激しい爆発が起こります。

ところがドクターフライを揚げ物の調理器具に設置すると、大量に水を注いでも激しい爆発が起こりません。安全に揚げ物が作れます。

ドクターフライを商品化して2年、その効果が徐々に口コミで広がり飲食チェーンから高級レストラン、ホテルまで約1,200店舗で使われるようになりました。

The Keeper(ザ・キーパー)

実は田中社長、この技術を使った新たな商品の開発に動きしだしていました。

それが「ザ・キーパー」という業務用の冷蔵庫。

これが油の中に入った感じがドクターフライ。空気中に入れたら鮮度維持庫。

冷蔵庫に入れた金属製のカゴの中で電波をあてます。これでドクターフライと同じように食品中の水分を外に逃げないようにして鮮度を保ちます。

3週間保存していたマンゴー。普通の冷蔵庫に入れていたものは傷んでいるのに対し、ザ・キーパーで保存したものはほとんど変色していません。

肉、魚、野菜をどうやって鮮度維持するかが一番僕の大きなテーマ。

株式会社堺周商店

3月上旬、東京・築地市場。新しい技術を試す絶好の機会が訪れました。

向かったのは水産仲卸の堺周商店。

築地でもトップクラスの取扱量を誇る老舗です。

待っていたのは5代目で常務の酒井惇さん(35歳)。ある問題に頭を抱えていました。

サンフランシスコに輸出のビジネスを拡大中なんです。「まさに築地鮮度だよね」というのを100%お客様が満足しているかというと決してそうではなくて、少し鮮度の劣化が生じていると。

堺周商店では2016年からサンフランシスコの寿司店などに魚を輸出。1匹ずつ厳選して特に状態の良い魚だけを空輸しているといいます。

ところが到着するまでの間に見過ごせない劣化が生じていました。内臓が溶け、身が変色するなど一部が返品扱いになるといいます。

築地の名前をかけて向こうに出ていっているので、10匹中10匹良くないと満足できない。

何日間鮮度が持てば?

築地でパッキングしてから大体丸2日間。

特に鮮度の劣化が早く問題の多い魚を会社に持ち帰って実験してみることにします。

6日後、築地から酒井さんたちがやって来ました。

田中さんは預かった魚を2つに分け、ザ・キーパーと一般的な業務用冷蔵庫で保存。鮮度にどのくらい違いが出ているのかプロの目で比較してもらいます。

全然、臭いがそもそも違う。

しっかりしている。ザ・キーパーが腹もちは絶対にいいな。

全然違う。原の緩み具合もザ・キーパーの方が臭いはもちろん、全く緩んでいない。

魚を捌いてみるとさらにその差が明らかに。

冷蔵庫で保存した甘鯛はワタや肝が溶けて身が汚れてしまっています。一方、ザ・キーパーでは身がきれいなままです。

びっくりするほど違いがあったので。まさかこれほどまでとは・・・。

しかし課題もあります。業務用の特別な電源が必要な上、重いため飛行機での輸送には向いていません。

そこで商品開発担当の林正史さん、

本当はこの機械を飛行機に積んでもらうと一番うれしいんですけど、小型化がどこまでできるか。

小型化

1ヶ月後の4月上旬。築地市場。

箱を抱えて堺周商店に向かう田中社長と林さんの姿がありました。

そこには苦労のあとが。

これが小型化したトランス(電波装置)。この大きさにできました。

この大きさになりましたか。

こちらはドクターフライを改良した電波装置。機能を最小限に絞り込むことで5分の1のサイズに。

また電極板はアルミホイルを使うことでコストダウンと軽量化を同時に実現しました。

持っていいですか?

いいですね。1キロもないくらい。

この装置を使って円滑に輸送できるかテストすることになりましたが、

アメリカに送って、このパーツをどうやって戻すか。

これ基本、回収前提ですか?

トランス(電波装置)の部分は。

そうですか。

回収できなくはないですけど、できない所は必ず発生するとは思います。

堺周商店ではサンフランシスコでの配送を地元業者に委託しています。そのため届け先によっては装置を紛失してしまう可能性が高いといいます。

小さくすればするほど箱と一緒に捨ててしまう。

三重大学

5月中旬、三重県津市。

この日、田中社長と林さんが向かった先は三重大学です。

三重大学にはザ・キーパーの開発に当初から協力してもらっていました。

海外に輸送する際、どんな方法を取るべきかアドバイスを求めにやって来たのです。

この機械を送って回収してもらえると思ったんです。ところが回収はできないと。そこでちょっと悩んでいる。

すると鮮度の専門家、亀岡孝治教授が目からウロコのアイデアを、

ドクターフライの電源を切っていても油が電源を入れている時と同じような効果が持続しているというのが確認されている。

その効果が使えるとありがたい。

実は以前、ドクターフライの商品テストを行った際に30分以上続けて使用すると電源を切った後も、しばらくその効果が持続することが分かりました。

もし、ザ・キーパーに同じ持続効果があれば築地で一定時間、魚を入れるだけでいいことになります。それをこれまでと同じように空輸するだけで新鮮な状態を保ったまま届けられる可能性があるのです。

画期的だと思う、世界的にも。なかなかこんな研究は聞いたことがないから。

もしもこれが成功すれば本当に物流が変わると思う。

輸送テスト

10月12日、築地市場。

この日、初めてザ・キーパーを使ってアメリカへの輸送テストを行うことになりました。

今回試すのは鮮度が落ちやすい小鯛とアジの2種類。

輸送業者に受け渡す時間が決まっているためザ・キーパーに入れておけるのは1時間しかありません。

予行演習のないテストだから、やってみないと分からない。

1時間後、ザ・キーパーに入れていた小鯛とアジを取り出します。これまでと同様、他の魚と同じ箱に入れて梱包。アメリカへと送り出します。

次に箱を開けるのは48時間後です。

ザ・キーパーの効果

2日後、アメリカ・サンフランシスコ。

世界初の魚の鮮度を保つ実験、果たして・・・。

魚の届け先はサンフランシスコ郊外にある「すし蘭」。ミシュランガイドで星が付いた店です。

うまい魚が自慢でいつも賑わっています。

現地で手に入りにくい魚は築地から取り寄せるほどのこだわり。

築地を出て48時間。ザ・キーパーを使った効果は出ているのでしょうか、チェックをしてもらいます。

まずは小鯛。

プリプリですね。

違います?

いつも腹がやわらかいけど、腹の中がしっかりしている。

ワタを取り出してみると、

きれいですね。すごいですね。

肝心の味は?

もともと身がやわらかい小鯛だけど、しっかりしている。一番いい状態で来ているんじゃないかなという感じがする。

続いては青魚のアジ。

このままいけます。

水分と味のバランスで塩加減したりするけど、銀座の寿司屋もアジに塩はしないというけど、これはこのままでいける。今日は特においしく感じます。

新たな技術を使った魚の鮮度の維持。今後に向けて手応えを掴むことができました。

この技術を使えばもっと遠くまでいい魚を運べる自信がついたし、アメリカの内陸部まで攻め込むことも可能だなと。

世界に日本のおいしい食品を価値を落とすことなく提供できる。

食品ロスも問題視されているが、そこでも貢献ができると思う。