[カンブリア宮殿] 湘南の海をそのまま見せる!また行きたくなる感動の水族館

湘南の海をそのまま見せる!また行きたくなる感動の水族館

しらす問屋とびっちょ

江ノ島名物といえば蒸し上げたしらすをご飯に山盛りにした「釜揚げしらす丼」。

採れたて新鮮なしらすを味わえます。

江ノ島観光の醍醐味です。

新江ノ島水族館

「しらす丼」と共にもうひとつ江ノ島観光に欠かせないのが砂浜沿いに建築された長方形の建物「新江ノ島水族館」。通称「えのすい」です。

日曜の朝になると大行列の人気の水族館です。
年間の入場者数は約172万人。

入場料は大人2,100円、小中学生が1,000円。

リピーターが多いのも新江ノ島水族館の特徴です。

館内に入ると目の前に現れるのは水面が大人の腰くらいしかない水槽です。

低い水面を覗きこむように魚を見ていると、突然大きな波が!

この水槽は江ノ島の南側に広がる岩場を再現したものでした。

その岩場から、まるで海に入っていくかのような体験ができるのが新江ノ島水族館です。

館内を進むと待ち構えるのが高さ6メートル、横幅7メートルの巨大なアクリルガラスの水槽「相模湾大水槽」です。

この水槽は江ノ島周辺の海中を再現。
90種類、約2万匹の魚が泳ぐ姿は海の底にいる気分です。

泳いでいるのは真アジ、ウツボ、コショウダイなど、中でも来場者の目を釘付けにする魚がいます。

うねるように変化する巨大な塊、真イワシの群泳です。
その数は約8,000匹。

新江ノ島水族館が日本の水族館で初めてイワシの群泳を展示しました。

イワシは身を守るための防衛本能で群れを作りますが、危険を感じると一斉に動きを変えます。

水族館入場者ランキング(2014年度)

順位 順位 水族館 入場者数 水槽の総水量
1位 沖縄美ら海水族館 323万人 1万0,000トン
2位 海遊館 230万人 1万1,000トン
3位 名古屋港水族館 196万人 2万7,000トン
4位 新江ノ島水族館 172万人 3,000トン

新江ノ島水族館は4位ですが、水槽の総水量は上位の3つと比べると大幅に少ないです。

圧倒的に小さな水族館ですが多くのお客様を集めています。

沖縄美ら海水族館

入場者が最も多い水族館は323万人の沖縄美ら海水族館。

超巨大水槽に体長9メートル近いジンベイザメが悠然と泳ぎます。
壮大なスケールを売りにしています。

新江ノ島水族館

新江ノ島水族館は食卓の魚、イワシで勝負をしています。

イワシを主役にした小さな水族館のトップが株式会社江ノ島マリンコーポレーションの堀一久社長です。

規模も決して大きくない、シャチやジンベイザメもいない。なぜなら相模湾に生息していないから、相模湾に生息するものをしっかりと伝える。

相模湾

堀一久社長がこだわる相模湾は浅瀬や岩場、深さ1,000mの深海まで変化に富んだ地形を持ちます。

さらに近くを通る暖流と寒流の影響もあり、世界有数の魚の宝庫となっています。

その数は1,500種類、日本近海にいる魚の36%にもなります。

身近な相模湾の生態を見せてお客様を呼ぶ。
それが新江ノ島水族館の戦略です。

そのこだわりは大水槽以外にも徹底されています。

黄色やオレンジの色鮮やかなサンゴが広がる水槽。
南国の海を想像しますが、逗子沖の海を再現した水槽です。

身近な海でも知らないことは多くあります。

小さな窓から覗く水槽では江ノ島名物のシラスが泳ぐ姿が見ることができます。
世界で初めて展示に成功したといいます。

大きな水槽では海藻が展示されていました。
再現されていたのは相模湾の岩礁。魚だけでなく海藻まで主役にしてしまいます。

お客様の心を捉えるのはリアルな海藻の揺らぎ方。
水流を人工的に起こし波間で揺れる姿は美しい。

身近な海の意外な生態を見せてお客様を魅了する。
この戦略が多くのリピーターを生み出していました。

北島円さん

リアルな展示を実現するのは飼育員の仕事です。

入社5年目の北島円さんが向かったのは江ノ島からほど近い沖合です。

年に数回、海に潜り近場の海を自分の目で確かめます。
常に相模湾の姿を熟知するためだといいます。

今の海底はどんな姿なのか、岩はどんなかたちか、魚たちはどんな風に生息しているのか。
このダイビングによる徹底調査が水槽のリアリティを支えています。

魅力的な海というと南の海を想像する人が多い。身近な海にもいろいろな生き物がいる。すごい面白い所というのを知ってほしい。

こうした努力の結晶が相模湾大水槽です。

魚たちの周囲を巨大な岩が取り囲んでいます。

本物の岩のように見えますが、特殊なセメントで出来ています。
細部まで作り込まれ、岩棚で暮らす魚たちの寝床まで再現しています。

忠実に海の世界を作り込むからこそ、魚たちの生き生きとした生態が広がります。

珍しいものではなく、身近なものをより深く伝えることが感動につながっていました。

クラゲ

他にも身近な生き物の新たな魅力を伝える展示があります。

癒やしがテーマのホールにいるのはクラゲです。

約50種類のクラゲの展示は世界でもトップクラスです。
その半数は相模湾に生息しています。

新江ノ島水族館は60年以上も前に日本で初めてクラゲの常設展示を行いました。

海の嫌われ者だったクラゲを癒やしの存在として人気者にしました。

この世界観を可能にしているのは60年の歴史の中で積み上げてきたクラゲの繁殖技術です。

その心臓部がクラゲ生産室です。

室内はクラゲが入った水槽やビーカーがずらりと並びます。
展示しているクラゲはここで大きくしています。

ビーカーの中にはクラゲの赤ちゃん。
見た目は可愛いですが、飼育には手間がかかります。

1日1回の水換えは全て手作業で行います。
1匹1匹、スポイトで吸い出して、キレイな水槽に移し替えます。

飼育員の足立文さんは

手間をかけたらかけただけ、ちゃんと育つ。本当に大事な作業。

足立文さん

新江ノ島水族館きってのクラゲ博士、クラゲ一筋26年の足立文さん。

クラゲを常に絶やさず展示をするため、毎日水換え作業を続けています。

寿命があるので、展示しているクラゲが弱ってきたら、すぐに次のクラゲを入れないといけない。そのためには育てておかないといけない。好きな時に海に行ってクラゲが捕れるなら苦労しなくていい。

足立文さんが手間を惜しまないのはクラゲの魅力を多くの人に知って欲しいからです。

いつも「地に足をつけてちゃんと生きなさい」と言われて、それが重荷になる場合もあると思う。そんな時にクラゲを見ると「これでいい」と思えてクラゲからホッとできるエネルギーをもらえる。

毎月9日は「クラゲの日」。

江ノ島の海でクラゲを採集します。

江ノ島に着きました、ここで採集します。

平日でも20名ほどの参加者がいるといいます。

網ですくうと顕微鏡で確認できるくらいの小さなクラゲが捕れます。

こんな体験が新江ノ島水族館のファンを増やしていきます。

堀一久社長は

何事でもこだわり抜く。これがやっぱり一番大事。お客様から「この水族館面白い」「こんなところにもこだわっている」「素敵だね、じゃあまた来よう」という繰り返しになっていく。「また来たくなる水族館」がキーワード。

堀一久社長

水族館に行く理由。

1つには癒やし、日本人は海に囲まれた国で非常に海に親しみを持っている。海をさらに深く知りたいという探究心。自然と時間が経ってしまう。癒しにつながる。普段と違う空間で体験することを皆さんが求めている。

大水槽では魚同士が食べ合う?

真イワシは外敵から身を守るためにかたまる。一生懸命群れで泳ぐが、入ってきた他の魚にパクっと食べられちゃう。その瞬間を営業時間内にたまたま見る人もいる。自然の世界をそのまま表現するという意味では、それも1つの見せ方になる。

大量のいわしの管理は難しい?

それぞれの水槽によって観理する特徴がある。水の温度や流れを試行錯誤しながら作っていく。魚が90種類もいると適切な温度が微妙に違う。どの魚を優先するかで影響を受ける魚がいる。最初、真イワシと一緒にシノノメサカタザメという珍しいサメを入れた。このサメに合わせるには若干、水温を上げなければいけない。真イワシにとっては悪い。最後はやっぱり真イワシがメーンの水槽にするなら真イワシをとって最もいい環境の水槽にしようと真イワシ再優先の温度管理にした。

海藻の水槽は勇気ある挑戦では?

勇気を持って挑戦することが成果につながるという考え方もあるが、裏付けとなる根拠がないといたずらにチャレンジもできない。相模湾のきれいな海水で育んだ海藻が実際に潜れば、それだけ繁茂している。皆さんの興味の範囲外かもしれないが繁茂した海藻が相模湾にあるということを1つの柱として仕立てるべき。

江ノ島水族館

昭和天皇が9回も訪れた江ノ島水族館。

日本発の近代水族館として江ノ島水族館が開業をしたのは敗戦から9年後の1954年です。

創設者は意外な人物でした。

映画会社「日活株式会社」の社長、堀久作氏です。

湘南をドライブ中に美しい景色に惹かれた堀久作氏は、ここに水族館を作ることを決断します。

当時珍しかった水族館は人気を博し、1962年度には240万人もの人が訪れました。

しかし老朽化と各地に水族館が出来たことによって入場者は1998年には30万人まで落ち込みました。

そこで2004年、全面リニューアルしたのが「新江ノ島水族館」です。

豊かな相模湾を再現する方針を打ち出し、入場者は見事にV字回復をしました。

真夜中の船上で大奮闘

午前0時、トラックに荷物を積み込み飼育員の伊藤寿茂さんと北嶋円さんが出掛けます。

向かったのは相模湾に面する神奈川県小田原市の米神漁港。

午前1時に出稿する地元の漁船に乗せてもらいます。

定置網漁に同行して、網に掛かった魚から水族館に入れたい魚や足りない魚を分けてもらいます。

漁師さんのご好意で乗せてもらっている。邪魔にならないように捕る。

新江ノ島水族館では飼育員が自分たちで相模湾の魚を集めています。

現場の海に到着して漁が始まります。

2隻の漁船が水深70mからゆっくち定置網を巻き上げていきます。

網の中には珍客も混じっていました。

マンボウが入っています。すごくでかい。

白い巨体の正体はマンボウ。体長2mはあろうかという巨大なマンボウ。
相模湾には、こんな魚もいます。

定置網を見つめる伊藤寿茂さんと北嶋円さんの目が緊張してきます。

暗い水面から必死で欲しい魚を探し、素早く網を入れて猛ダッシュで水槽に入れます。

これを次々に繰り返していきます。

定置網はどんどん水面に上がってきます。
上がりきってしまうと魚は弱ってしまいます。

魚が水中にいるうちに1匹でも多く捕ろうと必死です。

2人は漁師さんから海の情報も仕入れます。

相模湾を知り尽くした漁師と付き合うことは飼育員の仕事に大いに役立つといいます。

漁師さんとお近づきになると珍しい魚を入手しやすい。珍しい情報も教えてもらえる。

この日捕った魚は相模湾大水槽に入れるそうです。

飼育員のこんな努力が新江ノ島水族館の水槽を輝かせています。

堀一久社長

日活株式会社の社長が作った水族館?

そうですね。私の祖父の堀久作が。咲和20年代にたまたま湘南海岸をドライブしていて、映画に加えて違った娯楽を自然環境を使ってできないか。この素晴らしい海にあるものを水族館にしたら面白いという発想がひらめき、2年後に江ノ島水族館がオープンした。

自費で作った?

日活の資本を入れるより自分の発想だったので、面白いチャレンジができるかもとプライベートカンパニーをつくって今に至る。

新江ノ島水族館の理念は?

次に来た時「何があるだろう」と「また来たくなる水族館」が我々のキーワード。来たくなるためにどんなサービスを提供するか、どういう商品を展開しようか、どういう空間をつくろうか、毎日、365日間考えている。どうお客様に伝えていくかも大きなポイントだと思う。

珍しい魚を展示する感じではない?

相模湾にいる1,500種の魚のうち大水槽で90種しかいない。広がりをこれから十分見せられる。お客様も期待を持って、次に来た時に何か大水槽に違いがあるのか、そういう変化を伝えられればリピートしてもらえる要素になる。

画期的なものがあって成功した訳ではない?

「画期的なもの」もコンテンツとして重要。そこに依存するとベースがなくなってしまう。それが最大のリスクになる。そこにリスクを投下するより日々の地道な時間と労力が重要。積み重ねると確実にノウハウの蓄積になる。リスクにはならない。安全資産になる。

新江ノ島水族館の飼育員

新江ノ島水族館でクラゲ一筋の飼育員、足立文さん。

この日もくもくとクラゲの世話をしています。

しかし新江ノ島水族館の飼育員にはもうひとつ重要な仕事があります。

時間を気にしながら足立文さん部屋を出てウェットスーツに着替えます。
そして相模湾大水槽の前に出ていきます。

相模湾大水槽をご覧になって海の中にいる気分を感じてもらえましたか。

大勢のお客様の前で堂々たる喋りを発揮します。

重要な仕事とはショーに出ることです。

ウェットスーツに着替えた訳は大水槽で潜水をするためです。

これは「うおゴコロ」というショーです。

足立文さんが差し出した手の動きに合わせて、魚がついて泳いできます。

巨大なエイには頬ずり。

ペットのように扱いますがエサは与えていません。

実は魚も犬や猫のように懐くのです。

海の中をリアルに再現するだけでなく、飼育員自らが知られざる海の生物の生態を紹介しています。

ウツボを抱き上げて皆さんに紹介しました。ちょっと怖いイメージのウツボですが、何もしなければ急に襲うことはありません。

魚の魅力を知り尽くしたプロの言葉ですから、お客様に届きます。
新江ノ島水族館では飼育員も魅力の1つです。

できれば裏でゴソゴソやっていたいが水族館は生き物の楽しさを伝える所。ショーはお客様を目の前にしてするもの。ここは頑張ろうと

足立文さんが堂々と人前に立てるようになったのには、きっかけがありました。

午後6時、閉館後の大水槽の前に集まってきたのは飼育員たちです。

始まったのは「飼育員向け表現トレーニング」。

身体の動かし方や表情の作り方など基礎を勉強します。

このトレーニングが足立文さんを変えました。

毎週1回、舞台で活躍するプロを講師として招いています。

トレーニングで飼育員はお客様に伝える大切さを学びます。

私が伝えたいのは「違う世界の生き物をよく見たらすごく面白い」ということ。いかに楽しいかを楽しそうに話せばより伝わる。

堀一久社長

劇場の舞台公演と同じ発想。相当稽古しないと出られない。演出家のOKもいる。考え方はそれと全く同じ。その上でショーのオーディションをやる。合格しないとショーに出られない。

飼育員にはアート感覚も必要か?

サイエンスとアートという切り口でいうと、飼育員はサイエンスの知識を徹底的に持ってもらう。それを水族館としてお客様にどう伝えられるかがアート寄りになってくる。アートには別の担当がいて飼育員のサイエンスを引き出す。ただ引き出すだけではお客様に伝わらない。お客様に伝える要素に変換して最終的に展示として成立させる。連携プレーをやっていくうちに飼育員もサイエンスだけではダメと分かる。どんどん自分たちも興味を持ってきてアート方向のアイデアを出すようになる。

イルカショースタジアム

カラフルな格好の子供たち。

お目当てはイルカショースタジアムです。

ステージには子供たちと同じ格好の女性ダンサーが登場しています。

イルカと息ぴったりのショーが始まります。

ダンサーと同じくカラフルな格好をする5歳の渡部幸菜ちゃんと3歳の宮崎咲心莉ちゃんは毎週通っているといいます。

イルカさんはミレニーとビーナとセーラーが好きです。

新江ノ島水族館はイルカの繁殖を5世代続けて成功しました。
世界初の記録です。

繁殖を可能にしたのは飼育員とイルカの信頼関係に基づいた健康管理です。

飼育員が合図をするとイルカが自分から体重計に乗ります。

また別の合図ではステージに横たわり、尿を採取できます。

尿が採取できれば内臓の状態を確認できます。

獣医の西谷知佳さんは

できるイルカは毎朝、尿をためておいてくれる。きっと覚えてくれている。毎朝尿を取られることを。

命をつなぐイルカの繁殖。
それも水族館の担う大事な役割の1つです。

編集後記

「来週の放送は、エノスイですね」。湘南に住む友人がうれしそうに言った。本当に地元に愛されてるんだなと思った。生命は海で誕生し、番組名の由来である「カンブリア紀の動物多様性の急拡大」も、もちろん海で起こった。新江ノ島水族館は、単に珍しい海洋生物を紹介するのではなく、「相模湾の生態系」の再現に挑む。それは地域資源の再発見と環境保全の、わかりやすい啓蒙となっていて、同時に、成熟社会において極めて大切なことを示唆する。わたしたちは、自ら保持し、共存する資源について、すべて知っているわけではないのだ。

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