エネコホールディングス株式会社
雪景色の山梨県富士吉田市。
日本で初めてのエコ燃料で一般道を走るバスがあります。
その燃料は水50%と軽油50%というもの。
つまり水で軽油を薄めた燃料です。
乗っていて、今のところ問題ない。
そんなことは本当に可能なんでしょうか?
辿り着いたのはエネコホールディングス株式会社という会社。
エマルジョン燃料
開発責任者の山本泰弘副社長。
ここで軽油に水を混ぜて燃料を増やす、文字通り燃料を「水増し」したエコ燃料を製造しています。
こちらが水と精油を混ぜる精製装置。
その作り方は、タンクに軽油を10リットル入れます。
続いて、水を10リットル投入。
すると比重の軽い軽油は上に、比重が重い水は下に溜まり、境目がくっきり分かります。
混ざりにくい代名詞、「水と油」の状態です。
ポイントは独自に開発した薬剤。
界面活性剤で、水と油をつける接着剤。
薬剤を入れ、かき混ぜると水50%と軽油50%が混ざり合います。
これが水で薄めた軽油でエマルジョン燃料と呼ばれています。
検査所で分析したところ、水分はほとんど検出されず、JIS規格(日本工業規格)が定めた軽油100%とほぼ同じ結果になりました。
燃焼効率
そもそも、なぜ水を混ぜても燃焼効率が落ちないのでしょうか?
油の中に入りこんだ水は、高熱を加えると沸騰して爆発を起こし、油が細かい粒になります。
細かい粒になることで油は熱を受ける面積が増えてより燃焼がしやすくなります。
さらに…
50%のCO2(二酸化炭素)削減になる。SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)も半分以上削減できる。
井手造園
この次世代エコ燃料を試験的に使う企業があります。
今の季節の仕事のメインは除雪作業。
悩みの種は燃料代です。
そこで使い始めたのがエマルジョン燃料。
井手造園の小林聡専務は…
従来の100%の軽油と比べて、パワーも燃費も同等でいい軽油。
エネコホールディングス株式会社で作った燃料を使い始めて1ヶ月、約76万円かかる燃料費は約48万円で済み、4割近いコストの削減ができました。
半分が水でできた軽油は燃料費が削減でき、環境にも優しいという、まさに一石二鳥のエコ燃料です。
ただ問題もあります。
問題点
この燃料は現在、山梨県だけしか製造・販売ができません。
軽油に混ぜ物をした場合、その分は税金がかかっていないため不正軽油になる。
軽油は1リットルあたり約32円の地方税が掛けられています。
しかし50%を水で作ったエマルジョン燃料には半分の税金しか掛けられないので公道を走ることは認められませんでした。
エネコホールディングス株式会社は残りの半分、つまり水の部分を納税することで山梨県からようやく許可が下りたのです。
税金を減らし、日本や世界で使っていただく、そこが僕たちの一番の目標。
世界の注目
普及に税金の壁が立ちはだかろうとしている中、山梨県のこの中小企業がいま世界の注目を集めています。
2月8日、山本泰弘副社長が出迎えたのはタイからやって来た2人です。
タイ王国空軍のウイライラック大佐とタイの商社、B.INTERRADEのテチャワロ社長です。
次世代のエコ燃料の装置を食い入る様に見て回ります。
タイでは原油の需要が年々増加し、輸入依存度は70%を超えています。
エネルギー資源が乏しい国にとって喉から手が出るほど欲しい技術なのです。
とても素晴らしい技術なので、私の国でも役に立つと思う。
エネコホールディングス株式会社の技術を求めているのはタイだけではありません。
3月末までにシンガポールやガーナなど合わせて16ヶ国と契約を結ぶ部予定となっています。
全世界でこの技術はエネコだけ。これからも世界に発信していく。
技術の研究
エネコホールディングス株式会社では水の割合をさらに上げる研究が続けられています。
エマルジョンをさらにエマルジョン。まずやったことない。
どういうことかというと、水50%と軽油50%を混ぜたエマルジョン燃料に、水をさらに50%づつ混ぜていきます。
合計でエマルジョンを3回繰り返すといいます。
これで完成。
1回目の水の割合は50%、2回目で75%、3回目でなんと87.5%になります。
これは本当に軽油と呼べるのでしょうか?
この日、山本泰弘副社長が訪れたのは一般財団法人新日本検定協会のSK横浜分析センター。
エマルジョン燃料の分析を依頼していました。
結果が出ました。ほぼ同等ですね。完璧です。
3回、エマルジョンを繰り返しても従来の軽油とほぼおなじ燃焼効率を実現したのです。
検査した一般財団法人新日本検定協会の大木信行さんは…
びっくりです。普通の軽油と変わらない。
これで満足していないという山本泰弘副社長。
今後、更なるエコ燃料の開発に力を入れていきます。
繰り返し3回で加水率87.5%。確実にできるよう技術を確立する。さらに3回を10回できるまで実験を繰り返し、この技術を確立したい。